第27話  ヴァングロフを盗られた~~

 学び舎の勉教は、俺にとっては退屈だった。

 古代レトア語はマスター出来てたし、ここは、魔法学の初心者コースだから、実技訓練で、魔法を鍛錬して来た俺には、呪文の成り立ちなんて、眠いんだわ。

 俺の隣の席の子は、茶髪を三つ編みにしていた女の子だ。

 それが可愛いんだ。

 俺が、喋りかけると顔を赤らめて、


「ロレッタ・フレイドルです。ラインハルトさんは、ロイル家の親戚さんですか?」


 と聞いて来た。


「ああ、この銀髪?俺は、リリエンハイムの生まれなんだ。」

「そうなんですか……私はデュール谷の出身です」


「そっかぁ!!」


 なんて、会話が続いた。

 出身地が分かってるだけで、会話が成り立つなんて良いなぁ。

 ロペスの名前を名乗らないのが、せめてもの俺の親への抵抗だった。


「ラインハルトさん、なんと呼べば良いですか?ラインハルトでは長いですよね?」


「あぁ……リ……」


 と言いそうになって、俺は言葉に詰まった。

 気が付いたけど、リーンて、オルランドさん以外は呼ばないんだ。

 仕方なく、俺は親しんだラーイの方をロレッタに教えた。


「ラーイって呼んでくれよ」


「私はロリィです」


 俺たちの間に入って来た者がいた。

 リンゼイ・ナクムだ。


「早速、ナンパか!?まぁ、良いや。ラインハルト・リッヒ、ちょっと顔を貸せよ。」


「なんだよ……」


 何だか、こいつの意地悪そうな目が気に食わない。


「ロレッタちゃん。ちょっと、借りるぜ」


 リンゼイは、ロレッタに片目を閉じて、俺の腕を掴んで教室の外に連れ出して行ったんだ。


 今日の授業は終わっていた。

 外には、銀の森の由来のリドムの銀色の葉がキラキラ輝いていた。


 リンゼイ・ナクムは、自分の持ってる精霊よりも上位の精霊を持っている奴から精霊を取り上げる常習犯だそうだ。


 魔法の腕が逸品だから、退学には出来ないらしい。


「上位の火の精霊を持ってるな」


「お前には関係ないだろ!大体、お前は火の使い手なのか?」


「ふっ……俺は魔法剣を作る男になるんだぜ。」


「ヴァンクロフは渡さないぜ!!」


 リンゼイはほくそ笑んだ。


「馬鹿な奴。俺が何もしなくても自分から、名前を言うなんて流石に、ろくに教育も受けてない、はぐれ魔法使いだな」


「何だよ!!俺が何か言ったかよ」


「自覚が無いんだな。精霊は、身体を持たないんだぜ。ヴァンクロフ、俺はリンゼイ・ナクラムだ。契約したい。こちらへ来い」


 火の織物問屋は、俺の頭上からリンゼイの方に行ってしまったのだ。


「オイ!!ヴァクロフ!!」


 <悪いな~~ラインハルト、名前を盗られると魔力の大きい方にひっぱられるんのだ>  


 俺のバカァァァァ!!

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