第20話  セルグ師と俺

((『男なら、囲われてないで自立しろ!』))


 神官ルーカスの言葉が胸に刺さった。

 俺って、オルランドさんに甘え過ぎていたのだろうか……

 でも、俺の信頼できる人って、オルランドさんしかいねぇし……

 傍から見たら、俺はオルランドさんの愛人だなぁ……

 ケツ掘られたし……

 自立って俺には何も出来る事ないやん!!


 と居間のソファで寝っ転がって考えていたら、玄関のベルが鳴った。

 この日は、ルーカスもディナーレへ帰ってしまった後だったので館にいたのは俺一人だった。


「ライアン・ロペス君だね?」


 白いひげと白い髪を長く伸ばした、背の低い老人だった。


「えっと、その名はちょっと使えなくて……」


「ほぉ……本名が分かったというのに使えぬとは、穏やかではないな」


「親に認めてもらえなかったんです。今更帰って来てもここにお前の居場所はないと言われました。だからリッヒ家の方には申し訳ないですけど、今まで通りラインハルト・リッヒを名乗りたいと思ってます。そちら様は?」


 俺は威厳のあるこの人は、さぞ名のある教授だとすぐに分かったよ。

 身体から発している魔力からして違う。

 ロイル姓の魔法使いなのか!?、サントスの魔法学の教授でもこんなに力のある人はいないぞ。

 じいさんは俺の問いに、ニッコリと笑って答えた。


「なるほど、心の声が駄々洩れじゃな。わしはイアン・セルグじゃ。セルグ師と呼ぶが良い」


「セルグ師、何者!?」


「銀の森の学び舎で、魔法学の教師をしておる」


(((『!?』)))


「サントスでのお前さんの三年間を無駄にせんために、いつでも銀の森の学び舎に入学できるくらいの魔法の使い方を教えるのがワシの仕事じゃ」


「セルグ師もオルランドさんに頼まれたの!?」


「そうだが、これは、光の神殿の予見師の言葉じゃ。今、不在の魔法鍛冶師を復活させる適任者が見つかりそうだとな」


「俺、そんな大層なものにはなれませんよ。」


「なれなくともよい、はぐれ魔法使いでは、宝の持ち腐れじゃからな。

 そなたは、精神面が弱いと聞いておる。まずそこから鍛錬じゃ。

 ああ、そなたは逃げ出すのも常習だそうだな。

 この館の周囲には、結界を張ったぞ。

 魔法使いは体力と知力が必要じゃ。頑張るんじゃな!」


 セルグ師は高らかに笑ったが、俺には嫌な予感しなかった。

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