第13話  拉致られた俺

 まず、同室のニールに金を借りた。

 俺は、奨学生というもので、神殿が教育の金を出してくれていたのだ。

 小遣い程度の金はもらえたが、長距離を移動するような馬車の金なんか持っていなかった。

 幸い、ニールは金持ちのボンボンで、気前よく貸してくれた。


「銀の森に里帰りか!?」


「お、おう……」


 そう言う事にしておこう。


 それから俺は、夕ご飯を食べると自由時間になる。

 が、この時間に俺はオリエ姉さんと魔法学の勉強に充てられていた。

 それを今日は、体調がすぐれないと断り、ニールに看病をしてもらうと言って追い返したんだ。


 後はこっちのもの!!

 サントスの神殿はやたらに広い、人も多い。

 少ない荷物をもっと、少なくして俺は普通の参拝者の出入りする所から脱出してやったぜ。


 俺はディナーレ行きの馬車に乗り込んだ。

 山から下りて行きついた先が、そこだった俺は他を知らないんだよな。


 石畳の道が、土の道に変わって、また石畳の道に変わって……3日ほどで首都のディナーレに着いたよ。


 おれは、再びオルランドさんを頼る気でいた。

 彼しか、信じられる人もいなかった。


 ……というわけで、出戻りのように中央神殿に向かった俺。


 中央神殿__


 こうしてみると、サントスよりも、ずっと規模が小さいんだな。


 俺が中に入って行くと何か物々しい雰囲気だった。


「まだ、遠くに行っておられないはずだ!!早くお探ししろ!!」


「こんな大事な日に、姿をくらませるなど……」


「守役の人が先に帰ったのが、気に入らなかったのでしょうか!?」


 貴人が来て、姿をくらましたッてか!?

 神官だけではなく巫女たちも、バタバタしていた。

 基本ここの巫女は、凄く淑やかだ。


 俺は手頃な神官に声をかけて、


「リーンだけど、オルランドさんに会いたいんだ。」


 と言った。

 そしたら、その神官は急に涙目になって、


「ティラン様~~長~~勘弁して下さいよ。直ぐにご案内しますよ」


 ティラン!?俺、リーンだって言ったよな!?

 誰と間違えてるんだ!?


 まっ!!良いか、オルランドさんと会えるなら。

 俺は、神官の後を歩いて三階の角の廊下を曲がった時に、何者かに口を塞がれて、引きずり倒されたんだ。

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