第10話  魔法学の劣等生の俺

 サントスとは、大陸の西岸三古王国に一つで、今は城壁に囲まれた都市国家になったアルテアの、城壁の外にある町である。

 昔は鄙びた田舎町だった。


 新暦三百年にヴィスティン王国が、古王国の一つだったドーリアを滅亡させた。

 戦いは周りの国にも飛び火した。

 10年後にサントスの街に、一人のロイル家出身の賢人が現れた。

 彼は、多くの人を救い匿った。


 人々は、彼の希望をした神殿を作った。

 彼はそこの神官となる。


 それとともに、サントスの街も城壁の中に負けないくらいのにぎやかな街となっていったのである。


 ……という事を、俺はサントスについて早々に、同室になったニールという同じ年の治療師見習いの男に聞いた。


 ニールも俺のことを東方から来た、留学生だと思ったらしい。

 真っ先に先生に呼ばれて、訛りの試験で不可を食らった。

 何が悪いのだか知らんが、俺の喋り方のアクセントがおかしいんだと。

 同室のニールと、沢山話して直す様に言われた。


 魔法学は、古代レトア語が主体だ。

 俺にはさっぱり、わからねぇ!!

 嘆いてたら、美人のおねいちゃん先生が特別に個人レッスンしてくれることになった。

 これも、オルランドさんの推薦状のおかげだと後々知った。


 ユリエ・ロイル。

 魔法使いの一人だという。


「私は銀の森から、勉強のためにサントスに来てるのよ。人助けのためにね。あなたのお役に立つなら、どんな犠牲も惜しまないわ」


 なかなか、使命感のある人だ。

 クルクル表情が変わる顔が愛らしい。

 俺より10歳は上なんだそうだけど……

 金髪に銀髪の混じった不思議な髪の色、瞳も曇天のようで、俺も灰色の瞳をしてるんだけど、彼女はもっと濃い灰色だった。

 何処の血が混じってるのかと思ったら、由緒正しい魔法使いの家系だそうだ。


「俺、ケツを掘られたくないから頑張るよ!!」


 初めて会った女性にそう挨拶してしまって、ニールに思い切り馬鹿にされた。

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