第9話  はぐれ魔法使いの俺

「もう、精霊と契約出来ますよ」


 オルランドさんは、俺の肩に手を置いて言ってくれた。


「でも、それでどうなるんだ!?火の魔法が使えたって、どうにもならねぇよ~」


 俺は独り言のように言った。

 オルランドさんは、俺のことをもう一度ジッと見て言った。


「ラインハルト……面倒臭いですね、これからはリーンと呼びます。

 もう一度、あなたの身の上を話してください。包み隠さずにです」


 と言われて、礼拝所を出て、神官さん達の休憩室に通された。


 そして、さっきも話したと思うけどなぁ……

 三歳くらいの時に山で捨てられて、炭焼きじいさんに拾われて、二年前にそこを逃げて来たってことを……


「山では主に何をしていましたか!?」


「炭を作る窯の番が主だった。」


「窯が幼い、あなたに生き抜くために、魔力を授けたのでしょう……

 でなければ、火の魔法使いを神殿が見出せられずにいたなんて・・・奇跡です」


「火の魔法使いって珍しい!?」


「風や大地の力よりは、ずっと少ないですよ。それよりこれからのことですが……」


 俺はピクン!!


「あそこに戻って、ケツを掘られるのだけは嫌!!」


「あれは、中央神殿の不正ですから忘れて下さい。それから、あなたはまだ15歳ですね!?掘るには若すぎます。もう少し育ってくれた方が僕も好みです」


(「今、サラッとオルランドさん、凄いことを言ったような……?」)


 俺は変な顔をしていたのか、オルランドさんに真顔で言われてしまった。


「どうしました?」


「オルランドさんも、ケツを掘られた経験あるの!?」


「掘った事ならありますよ」


「だれと~~!?」


 大声で叫んでしまった。


「某国の世継ぎの王子様と……今は王におなりですかねぇ……」


 しみじみと言うオルランドさんだったが、トンデモ発言に神殿内はパニックになった。


「オルランド様、この神殿だけの秘密にします。その代わりに、神殿の者の禄を上増して下さい。」


 この神殿の責任者が言うと、


「それは有難いことですが、僕に神殿の禄をどうこうする権利はありません。此処でも、風は吹いています。風は噂好きです。あなた達が何もせずとも、やがては人の知ることになるでしょう。僕は、女性よりも男性を好むだけです」


 オルランドさんは、優美に笑って言った。


「それよりリーン、君は火の精霊と契約をしたら、サントスの神殿へ行きなさい。そこで魔法学を学んでくるのです。生きる道が見えてくるはずです」


「いいの!?捨て子の俺なんか!?」


「ゴミと一緒に拾ってしまいましたから……これも何かの縁でしょう。

 それに、銀髪灰色の瞳、火の魔法の持ち主で、銀色の一族(ロイル家)じゃないと見る方がおかしいです」


 オルランドさんは、優しく声をかけてくれた。

 俺はその優しさに涙が出て来て、鼻水もたれてきて、顔がグチャグチャになって言った。


「ありがとう、オルランドさん。俺立派な魔法使いになるよ」


「はぐれ魔法使いにしか、なれませんけどね」


「何それ!?」


「神殿所属の魔法使いは、幼い頃から学び舎ないし、教師について勉学しています。あなたの年では遅いくらいです。でも望むなら、銀の森への推薦状を書きますが?」


 オルランドさんの今の影響下は、サントスの大神殿の方が大きいという。

 俺は、サントスへ魔法学の推薦状を持って、意気揚々と出掛けた。

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