第8話  祝福された俺

「簡単て……?」


 俺は、首を傾げて言った。

 オルランドさんは、ニッコリ笑っている。


「中央神殿から、来たと言いましたね?出戻るのは嫌でしょう……」


「そりゃ……」


「では、旧神殿の方へいらしてください」


 オルランドさんは、ゴミの入ったカゴを通りかかった下っ端の神官に預けると、


「ここが、元古王国のドーリアの王都、アスタナシヤであったことを知っていますか?」


 俺は首を振った。

 二年前まで、山に籠りきりの俺に古王国と言われてもなぁ……

 オルランドさんは、俺の考えていることが分かるように、笑っていた。


「中央神殿は、アスタナシヤを併合したヴィスティンの王城跡地に出来た神殿です。ドーリアを襲ったヴィスティンには、形ばかりの神殿しかありませんでした」


 オルランドさんは、中央神殿とは逆の方向に歩き始めた。


 そして着いたところは、小さな街レベルの小振りの神殿。

 これが大国と言われてたヴィスティン王国時代の神殿だって!?

 この国で、神殿の力が如何に大きくなかったか、分かる気がする。


 そんな所だから、常駐している神官や、巫女の数も少なかった。

 皆が皆、オルランドさんを見て頭を下げた。

 そういえばオルランドさんは、深紅の腰紐の人だ。

 位の高い神官さんなのだろうな……


「荷を預けて、身を清めていらっしゃい」


「えええっっっと……!?」


「約束します。悪いようにはしませんから」


 オルランドさんに言われて、俺は中位の神官に案内されて、浴室に行った。

 朝風呂なんて、凄く贅沢だ。

 中央神殿にいた2年でも、したことは無かったな。


 風呂から出ると、神官服が用意されていた。

 腰紐が白い。

 この流れは、二年前と同じだな……と思った。


「あなたは、幸せですね。オルランド神官に拾われるなど」


 案内の神官に言われてしまった。

 良い人そうだけど、何のために俺をここへ連れて来たのか分からない。

 案内人の神官が、俺を礼拝所に連れていった。

 そこに、跪くように言われた。

 顔を上げると、神官服の正装をしたオルランドさんがいた。


「あなたとあなたの名前に、【祝福】を授けましょう。」


 オルランドさんは美しい顔で、真面目に言った。

 俺は意味が分からない。


『ラインハルト・リッヒ、あなたに光の神の加護と栄光が授かりますように・・・』


 あと何か他にも言ってたようだけど、二年で習った古代レトア語で理解出来たのはここまでだ。

 オルランドさんの言葉は、俺の身体に力が巡り回った。

 不思議な感覚だった。


 長い古代レトア語での祈り(!?)が終わると、オルランドさんは汗だくになっていた。

 俺を案内した神官が、オルランドさんの額の汗をぬぐっていた。


「神の前で、あなたがラインハルト・リッヒだと宣言をし、神はそれを了承しました。もう、ラインハルト・リッヒはあなたの名前ですよ。」


「えええっっっと……!!」


 俺は、状況に頭が追い付かなかった。

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