第7話 俺の名前
「ラインハルト・リッヒと言います」
俺は神官さんの丁寧な物言いにならって、丁寧な言葉で言った。
すると神官さん、もうオルランドさんと書くけど、顔つきが変わった。
俺の顔をジッと見て、言ったんだ。
「あなたは、リッヒ家の人ですか?」
「ええっと……神殿で付けられた名前です。俺は、三つくらいの時に山に置き去りにされた捨て子だから。」
それを聞いて、さらに驚いていたオルランドさん。
「東方の銀の森ゆかりの銀色の一族の血縁者でも、おかしくありませんよ。その外見なら」
「そう思われたのかな~中央神殿での待遇がメチャ良かったよ」
「だからと言って、エル・ロイル家の分家筋の名を名乗らせるなんて。
誰ですか!?あなたに名を与えた神官は?」
オルランドさんは明らかに怒っていた。
「何か告げ口するようで嫌ですけど。ラーイという呼び名しか覚えていなかった俺に、ラインハルトの名を付けてくれた人ですよ」
「ラインハルトは良いでしょう、でもリッヒ家は聖なる光の神、イリアス・エル・ロイルの直系の子孫と言われている、エル・ロイル家の末端とはいえ、分家筋の家柄です。しかも、三代前に当主が亡くなって跡取りがいなくなった……そんな系譜の家名を与えるなど、神に仕える者として、許せませんね」
オルランドさんの美しい顔が歪んで行った。
「あなたをリッヒ家の子息に仕立て上げて、お金でも受け取ったのでしょう……」
「え~~!!ケツを掘らせるために~!?」
「でしょうね……」
俺は、自問自答してしまった。
(「嘘~!俺、売られたの~?リッヒってそんなに名家なの?」)
「神官さん、俺……名前どうしたら……」
「そうですね、火の魔法使いになって、ロイル姓になることも可能ですけど、学び舎に入るのも遅いくらいですからねぇ……」
「火の精霊だって、本当の名前じゃないって契約してくれないんだよ!」
「それなら大丈夫ですよ」
オルランドさんは、この上なく優しそうに笑って言った。
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