誘拐 3
鳴き声と共に全身が変化していく。口元に牙が伸び、指には獣のツメ、全身は銀色の毛で覆われていく。これは、
「まさか、魔獣化!?」
「なぜお前がソレを、その研究は禁止されたはず。ましてや使える人間なんて」
「ああ、そうだよ!だが、あの方は完成させた。オレが記念すべき一人目だぜえ!!」
魔獣化とは、魔物の一部を取り込んでその魔力を全身に巡らせることで、その魔物の特徴を体に発現させることが出来るもののことだ。今回の場合はおそらく銀狼〈シルバーウルフ〉だ。
どの魔物を取り入れるかによって強さは変わるが、間違いなく先程までとは比べものにならないぐらい強くなっているだろう。
だが、しっかりとリスクもある。一度魔獣化した人間はもとには戻れず、魔物の力は生命力を吸うため、一週間後には息絶えてしまうのだ。そのリスクから、研究が全盛期だった頃の王はその研究を禁止し、他国にそ情報が渡るのを恐れた国によってその研究者達は処刑されてしまった。そんな経緯もあって今では、一部の王侯貴族にしか伝えられていない禁術となった。はずだった・・・
この際、誰がこれを持ち出してきたのかは後で良い。問題はどうやって倒すかだ。見たところ額に魔力が集中しているからそこを貫けば勝てると思うが、殺してしまっては情報を聞き出せないし、何より外聞が悪い。このままでは正当防衛とはいえ、人を殺した侯爵令嬢となってしまう。そうなれば一生後ろ指を指されながら生きることになっしまう。ただえさえ、魔女なのに・・・
そんなのは嫌だ!!
ってことで
「アリス!殺さずに倒す方法ってある!?」
『んー、そんなのできたらアイツ等も苦労してな・・・っあ!もしかしたら取り込んだ魔物の魔力以上の魔力を直接入れたら、戻るかもしれないのっ!』
「直接か・・・」
正直キツい。直接ということは触れてないとダメだし、自分の魔力を他人に渡すのは時間がかかる。その間アイツの動きを上めておけるだろうか。
でもやるしかない!これが一番被害が少ないし。
「影よ、彼の者を縫い止めよ」
《影の拘束〈ダークバインド〉》
「んっ?何かしたか?」
「くっ!」
流石にそんなに甘くはなかった。取り敢えず詠唱の時間を稼がなければ。
「じゃあ、こっちからいくぜえ!?」
「おらぁ!!」
まずい!私達を囲っていた結界にひびが入ってきたっ、殿下達も今は怯えて動けないようだけど、いつ勝手に動きだすか分からない。
何か動きを止める方法は・・・
「あっ!確か銀狼シルバーウルフは」
「骨の髄まで凍えて眠れ!」
《吹雪〈ブリザード〉》
「へっ!こんなのがなんだっ、て、・・・Zzz
氷が弱点で氷点下になると、冬眠する!本当は冷やし続けてもいいが、その前に私達が凍え死んでしまう。でも時間は稼げた。
「来たれ!〈精霊王アリス〉・今審判の時」「犯した罪を清算せよ・逃げることは許されぬ・抗う術を持たぬ者よ嘆き、恐怖し、絶望しろ!」
「彼の者を拘束する鎖には・絶対零度の冷たさを!!」
《氷下の鎖〈フローズンチェイン〉》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます