誘拐 2 sideフレイヤ/敵
『真の強者とは、ただ力が強いものではなく自分の身、家族、大切なものを守ることのできるもののことである』
これは二千年来伝わり、アルビナス侯爵領では誰しも最初に聞く言葉。特に、騎士の家は小さな時からこの言葉をもとに騎士を育てる。そのおかげか、アルビナス侯爵領では正義感が強いものが多い。故に、他の領に比べて犯罪に手を染めるものは極端に少ない。
だが、これは両刃の剣
『昔、まだアルビナス領が辺境伯だったころ、暴虐無知な領主様がいました。気に入らないものは殺し、領の金を横領し、更には不作であったのにも関わらず民に重税を課し、自分だけ裕福に暮らしている。「これをゆるす訳にはいかない」そこで彼女は立ち上がりました。名はローラ、当時の魔女です。彼女のもとに民衆は集まり、戦いました。
自分、家族、大切な人を守るために。
こちらには魔女がいるとはいっても、相手は歴戦の騎士達。戦いは三日三晩続きましたが、ローラが発動した災害級の魔法により、相手は敗れそして、遂に領主を討ち果たしました。領民は歓喜しました。ですが、国はこれを許しませんでした。そこでローラは国家反逆を企て、領民を魔法で洗脳したとして勇者達に討伐されてしまいました。以降、ローラはこの国で悪女と呼ばれるようになったのです。』
他にも幾つか同じような話がある。そこで、アルビナス家ではこれらを教訓に次の侯爵を育てている。今現在、跡継ぎは自分だけだし養子を取る気もないようなので、その対象は私だ。
(ゲームのフレイヤには、意味がなかったようだが・・・)
それ故に許せない、この光景が。
恐らく設定にあった、兄がアリステリア王国に殺されたというのは、今のことだろう。
相手の目的は分からない。
『だが、この状況を許してはならない』
ある意味洗脳ともいえる正義感がそう告げる。それに、ここでルビウスが死ねばベリアル皇国との溝は修復できないものとなり、お母様が死んでしまう。助けねばならない。
武術はできる、魔法なら絶対に負けない。
必要なのは、勇気と覚悟だ。
「貫け」
《三又の槍》
***
「ぐ、ぐわあぁぁァァァァアっ!!」
「大丈夫ですかっ!?ルビウス殿下!」
手に持ってた奴を落として落としてしまったが、そんな事関係ない。
何が起こっていやがる!
ガキ四人の誘拐、そんなの今まで飽きるほどやった。失敗する筈がなかった。
だがどうだ?この現状は、
最初の一発は左腕に刺さり使い物にならなくなった!その間も次々に槍が飛んでくる。
「切り裂けっ!」
《ウィンドカッター》
「燃えつきろっ!」
《ファイアボール》
次々に詠唱していくが、何故か当たった瞬間に霧散してアイツは無傷っ!
「おいっ!何で当たらないんだ」
「えっ?・・・さっき魔力を見とか言ってたくせに気付かないの?」
「ぁあ“っ!?」
よく見てみると・・・
「まさか、結界か?」
普通、結界は円状や限定的に張るものであるはずだ。だがこいつはほとんど体に張り付くように張ってやがる。これは相当な魔力操作技術と訓練が必要だ。しかも、他の奴らにも被害がないように結界で囲ってる。何個、同時発動できるんだよ。
バケモンだ。
「んー、半分正解。結界は結界でも闇の魔力を込めてるの。闇の魔力は魔法を吸収するから」
「ってことはまさかっ!?」
「ご明察。いつでも好きな時に吸収した分、お返しできるよ」
「こんな風にねっ!」
幸い、たいした魔法は打ってなかったから凌げたが、魔法が効かないとなるとマズい。
この手は使いたくなかったが、しょうがない。ここで負ける訳にはいかない!!
「いくぜぇっ!?」
「ウオォォォォォォォン!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます