洗礼

 そこから私は必死に鍛錬した。日昼はマナーと座学と護身術という名の訓練、夜は魔法の制御訓練という名の魔物狩り、特に護身術は途中から騎士団長であるお父様が担当し出したことによって、その光景は地獄と化した。




そして、そんな目まぐるしい毎日を過ごしていた私は洗礼を受ける年齢となる。




***




「わぁ~」


私は今、世界樹〈ユグドラシル〉の前に家族と来ている。




 そもそも世界樹というのは、この世界ができた頃からあるらしく、まだまだ謎が多い樹なのだが、三柱の神様はこの樹の頂上に住まわれていると言われている。といっても、世界樹は頂上などとても見ることなど出来ないほど高いので、あくまで言い伝えだ。




 そして世界樹はアリステリア王国とベリアル皇国の国境にそびえ立っており、そのふもと空洞に教会がある。そこで、両国の身分が高いものから順番に洗礼を受けていく、という感じだ。因みに、この世界の全員がネフロ教という、簡単に言えば「三柱の神様を信仰しましょう」という宗教に入っている。




「フレイヤ、着きましたよ」




 着いたところには、精霊がたくさんいた。




「アリス!」


 私は小さな声で呼ぶ




『何なのっ?』




「いや、何でこんなにいっぱい精霊がいるの?」


 いつもは、たまに居るぐらいだったのに・・・・




『精霊は基本、世界樹の周辺に住んでるのっ!』




「へぇ~」




「フレイヤ?次は貴女の番だから早くいらっしゃい」




「あっ!ごめんなさい」




***




「うわぁ~」


 本日二度目の感嘆の声だ。




 空洞の中というからもっと暗いと思っていたが、火のついたロウソクが中を漂っており、その火と僅かに入る日が、色とりどりのステンドグラスを照らすことによって、中の装飾がとても輝いていてとても幻想的だ。


 そして一番奥には泉があり、その中に三柱の神様が彫られた石像があった。




「さぁ、こちらです」


 と、司祭様が誘導する。


「洗礼の受け方は、この泉に入っていただき、魔力を流していただくだけです」


「では早速どうぞ」




「分かりました」


 言われた通り魔力を流してみる。すると、泉が光り出した。




「ありがとうございます、フレイヤ様の神名は、〈アンジェリカ〉でございます。この名を大切にしてください。称号は、・・・えっ?ま、〈魔女〉です!」




 『わあっ!』




 洗礼を見守っていた親父様達から声が挙がった。


 


 ざわざわ




「アルビナス侯爵家のご息女が魔女とは・・・・」


「今日三人目だぞっ!」


「では今代に聖女も・・・・」




「静粛にっ!フレイヤ様、後でお呼びだしさせて頂くかもしれませんが、その時にまた会いましょう」




「フレイヤ様に神の御加護が有らんことを」

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