第207話 遊んだあとは


 最近のアウトドアショップではキャンプギアだけでなく、屋外での遊具なんかも豊富に取り揃えられている。バドミントン、フライングディスクなど、外で遊ぶための遊具も豊富だ。


「へえ~初めて見るね。このバドミントンってやつはどうやって遊ぶの?」


「これはシャトルというこっちの白い羽をラケットで打ち合う遊びだよ。こんな感じで一度打つと必ずこの先端が前に来るから、お互いに打ち合って取れなかった方が負けってルールだね。お互いの陣地を決めたり、障害物のネットを置いて勝負するのも面白いよ」


 さすがにバドミントンの正式なルールまでは知らないけれど、勝負じゃなくともお互いにシャトルを打ち合うだけでも楽しいはずである。


 馬車に長い間座っていたこともあって、身体中ガチガチだ。晩ご飯前に軽く身体を動かして運動をしてお腹を空かせておくのもいいだろう。


「こっちのはフライングディスクと言って、こうやって投げると綺麗に飛んでいくんだ。これもお互いに投げ合って遊べる遊具だよ」


 みんなにルールを説明していく。といっても、これらの遊具は基本的にはお互いに投げ合ったり打ち合ったりするだけだからあまり説明もない。


 特にフィアちゃんが興味津々だったし、今日の料理はそこまで凝ったものを作る予定もないから、早めに終わらせてみんなと合流するとしよう。




「……よし、そろそろ晩ご飯にしよう」


 日も暮れてきてお腹も空いてきた。みんなはいろいろと楽しそうに遊んでいるけれど、あんまり遅くなると明日にも差し支えるからな。


「待っていたよ! いやあ、それにしてもこのバドミントンって遊びは面白いね。このラケットの中心にうまく当てないと狙った方向に飛ばないし、スマッシュが決まった時は本当に気持ちいいよ!」


「ああ。うまく決まった時はなんとも言えない爽快感があるぞ。それにこれは反射神経を鍛えるいいトレーニングにもなる」


 ランジェさんとリリアはバドミントンで遊んでいたようだ。少しだけ2人のラリーを見てたけれど、ラリーが速すぎてシャトルがまともに見えなかった。身体能力の高い2人がバドミントンをするとああなるんだな……


 確かにバドミントンは身体を動かすし、反射神経が大事だから、もしかするといいトレーニングになるのかもしれない。


「こっちのフライングディスクもふわふわ飛んで面白かったです!」


「なかなか狙った場所に投げるのは難しいですね。でもそこが面白かったです」


 食材を切るのを手伝ってくれたあと、フィアちゃんとアンジュはフライングディスクで遊んでいた。特にフィアちゃんの方が楽しそうにアンジュの投げたフライングディスクを追って走り回っていた。


 ……もしかしたらキツネの獣人だから、動く獲物を狙うのが楽しいというのもあるかもしれない。


「ああ、どっちも面白かったし、こっちのトランプもやっぱり面白いな」


「ええ、どの遊びもとても面白かったですわ! フェリーももっと身体を動かせばよかったのに」


「……トランプが一番楽しい」


 ドルファ、ベルナさん、フェリーさんもみんなと一緒に交代しながら楽しんでいた。フェリーさんはバドミントンとフライングディスクで少し遊んだら、あとはずっとトランプをしていたな。


 こればかりはアウトドア派とインドア派に分かれるから当然だ。俺もキャンプをする前は、休日は家から一歩も出ない超インドア派だったし、どちらが悪いということもない。それにもしかしたら、ずっとスレプを召喚していたおかげで疲れていたのかもしれない。


「どの遊びも楽しんでもらえてよかったよ。さあ、今日の晩ご飯はピザだよ」


 身体を動かしてお腹が空いた後はおいしいご飯だ。俺もあまり運動はしていないけれど、熱い窯の前でひたすらピザを焼いていたので汗だくでお腹もペコペコである。


 大きなテーブルの上に何種類ものピザが並ぶ。さすがに8人分となると適切な量が分からなかったから、結構多めに焼いておいた。あまったら入れた時のまま保存できる収納魔法で収納してもらうつもりだ。


「ピザか。そういえばあの道具をピザ窯と呼んでいたな」


「そうだね、リリア。このピザを焼くために必要な窯をピザ窯っていうんだよ」


 あれはアウトドアショップの能力のレベルが5に上がったことによって購入できるようになったポータブルピザ窯だ。最近ではピザ窯のキャンプギアまで売っているんだから恐れ入るよ。


 ポータブルピザ窯はその名の通り持ち運べるくらいの大きさのピザ窯だ。熱伝導率が高いステンレスと保温性を持つセラミックが使われており、効率的な熱放射を実現して、たったの20分ほどでピザを焼くのに適した400度~500度まで窯の温度を上げることができるキャンプギアである。

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