第206話 大型テント


「へえ~テツヤさんの世界にはこんなに大きなテントがあるのか」


「それにしても大きいね。これなら広々としていて気持ちよく寝られそうだよ」


 大きなテントを広げたところでドルファとランジェさんがこのテントの大きさに驚く。


「ああ。俺の世界は魔物や盗賊なんかはいなくて、比較的安全に夜を過ごすことができるから、居住性を重視したテントなんかが多くあるんだよ」


 アウトドアショップの能力のレベルが上がって購入できるようになった大型テント。女性陣と男性陣に分かれて寝るため2つを購入した。当然テントが大きい分組み立てるのが大変だけれど、その分広々と使うことができるわけだ。


 大人数で寝るテントはドーム型テント、ワンポールテント、ツールーム型テントなどに分かれている。ドーム型テントは普通の2~3人用のテントを大きくした感じだな。


 ワンポールテントはその名の通り一本のポールに三角形のテントとシンプルな構造だが、大人数用のはかなり大きくなっている。ポールが一本なので、設営や撤収がとても楽なのが特徴だ。


 そして今回購入したツールーム型テントはかまぼこを大きくしたような形の大きなテントとなる。設営が少し大変というデメリットもあるが、天井が高くてテント内で立ったまま過ごすこともできる優れものだ。


 ツールームという名の通り、寝るスペースとは別に広い前室があるので、雨が降ったときなんかもタープを張らずに前室で過ごせるようになっている。


「俺も実際に使うのは初めてだけれど、本当に大きいよね。悪いけれど、みんなも少し手伝ってね」


「ああ、任せておいてくれ」


「頑張る」


 リリアやフェリーさんも手伝ってくれるようだ。料理と手分けをするのもいいけれど、今日は時間に余裕もあるし、みんなで先にテントを立ててしまうとしよう。こういうのはみんなで作業をするから楽しいものだ。




「よし、これで完成だ。こっちが女性用で、こっちが男性用のテントだね」


 無事に2つのテントが完成した。これだけ大きいと組み立てるのも一苦労だ。それに小さく収納できるとはいえ、元が大きいからだいぶ場所を取るし、何より結構重いのだ。


 フェリーさんの収納魔法で収納することができなかったら、持ち運びがかなり大変なんだよね。それにこんな大きなテントを使う機会なんて今までなかったから、いろいろと新鮮な気分である。


 テントは材質なんかによって値段も異なるけれど、当然大人数用のテントになればなるほどそのお値段も桁違いに増えるんだよなあ。さすがに独り身でこんなテントは必要ないけれど、やっぱり天井が高いテントって最高だよね。


「とても広いですわね。これだけ広いのに畳むとあれだけ小さくなるなんてとても素晴らしいですわ」


「まるで収納魔法みたい」


「フレームとかがだいぶ小さく畳めるようになっているからね。それに布地も丈夫だけれど、薄い素材でできているからね」


 最近の大型テントは大きくても、比較的小さく収納できつつ軽い物も多いからな。フレームが折り畳めるのもそうだが、やはり軽くて丈夫なポリエステルやナイロンなんかの素材の力が大きいのだろう。


 グレゴさんに試作してもらっているテントはこっちの世界の素材で作ってもらっているのだが、やはり布地が少し分厚いので、アウトドアショップで購入したテントよりも少し大きくなってしまうのは仕方のないことだ。大型テントの発売はもう少し先のことになる気がする。


「ここならみんなで一緒に寝られるね!」


「ああ、この広さなら5人でも快適に眠ることができそうだ」


 フィアちゃんとリリアは設置した大型テントの中に入って大きさを確かめている。フィアちゃんはともかく、女性としては長身のリリアも天井に頭が付くことなくテントの中に入れているので大丈夫そうだ。


 男用のテントは3人だけだし、なおのこと大丈夫そうだ。


 えっ、3人だけなら今までのテントで良かったんじゃないのかって? いや、俺だって一度でいいから大型テントでキャンプしてみたかったんだよ。


 俺もソロキャンではなく友人とキャンプをすることもあるが、みんな自分用のテントを持っているから大人数で一緒のテントに寝る経験はなかったんだよね。


 それにファミリー用の大型テントは高価で縁がなかったから楽しみだ。


「それじゃあ晩ご飯の準備をのんびりとしているから、みんなはゆっくりと過ごしていてね」


「テツヤさん、私も手伝いますよ」


「テツヤお兄ちゃん、フィアも手伝うです!」


「アンジュもフィアちゃんもありがとうね。それじゃあ少しだけ手伝ってもらおうかな」


 このメンバーで料理ができるのは普段から料理をしているアンジュとフィアちゃんだ。リリア、ドルファ、ランジェさんも冒険者の経験があるから、本当に簡単な料理はできるらしい。ベルナさんとフェリーさんは……うん、誰にでも得意不得意はあるものだな。


「そうだ、その間みんなはこれを試してみてよ。もしかしたら、商品として販売する可能性もあるから、あとで感想を教えてくれると嬉しいな」


 アウトドアショップである商品を購入する。予定通り大きさ的にもフェリーさんとランジェさんの収納魔法で問題なく収納できる。


 アウトドアショップの能力のレベルが上がったことによって、新たに購入することができるようになったバドミントン、フライングディスクである。

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