第204話 トランプ
「……さて、何を持っていくか迷うところだ。とりあえずこれとこれは新しく購入して、こっちはさすがにいらないかな~」
「さっきからテツヤはいったい何をうんうん唸っているんだい?」
「買い物から戻ってきてからずっとあの調子だぞ。何やら明日持っていく道具を選んでいるらしいな」
ランジェさんの問いにリリアが答えてくれる。午後に市場で買い物を終えて店へ戻ってきたあと、いよいよ明日王都へと出発するための準備をしているところだ。
一応事前にアウトドアショップの能力で、いろいろと準備をしていたけれど、最終的なチェックをしていると、また新たにあった方がいい物が出てきてしまうんだよね。
かなり大きいとはいえ、フェリーさんの収納魔法は無限に収納できるという訳じゃないから、ある程度容量を考えなければならない。アウトドアショップの能力があれば、向こうでも新たに商品を購入することができるから、本当に必要な物だけ購入しないとな。
それにしても、準備のためにキャンプギアを選んでいる時間ってどうしてこんなに楽しいんだろうな? もしかしたら、この時間が一番楽しいまであるぞ。
「ふ~ん。面白そうだけれど、実際に明日行く時の楽しみにしておこうかな」
どうやら俺がキャンプギア選びに熱中しているのを察してくれたらしい。
ランジェさんは昨日のバーベキューで頑張り過ぎたおかげでダウンしていたらしいけれど、夕方になって復活して店まで来てくれた。正直なところ、みんなとの買い物は楽しいというよりも、他の人達の視線が凄くてそれどころじゃなかったんだよなあ……
まあ、ランジェさんなら、そんな視線は気にならないかな。そもそも、ランジェさんも格好いいエルフだから、余計に人の視線を集めてしまったかもしれない。
「それで、みんなは
「はい! このトランプという遊具は本当に面白いですね! それにたったひとつでこれだけの種類の遊びができるのは本当に素晴らしいですわ!」
「大富豪ってゲームが面白い!」
そう、アウトドアショップの能力のレベルが5に上がったことによって、トランプやその他の遊具を購入することができるようになっていた。最近のアウトドアショップだと、キャンプギアだけでなく、旅行用の遊具なんかも販売しているからな。
他にも様々な遊具なんかが出ているので、それも今回の王都までの旅行で持っていくつもりだ。ちゃんと図鑑なんかと同じで、こちらの世界の人でも読める文字で数字が書かれていたのは助かる。
ランジェさんや店の従業員にはすでに見せてみんなで遊んでいたけれど、ベルナさんとフェリーさんがトランプを見るのは初めてだ。俺が明日持っていくキャンプギアなんかの確認をしている間、リリア達で遊んでもらっていた。
「僕も次から入るよ。他にも七並べとかも面白いよねえ」
「ああ。あのゲームは意外と運だけではなくて、頭も使うからな。あとはダウトというゲームもなかなか面白かったぞ」
「そちらはまだ知らないゲームですわね。ぜひ教えてください!」
「面白そう、教えて!」
ベルナさんもフェリーさんもトランプへ夢中になっている。この世界だと娯楽が少なくて、トランプみたいなカードゲームもほとんどないらしい。
そんな中で元の世界のトランプや他のゲームなんかは間違いなく面白いだろうな。トランプはこれひとつで何十種類ものゲームができるから、よく考えるとすごい発明だ。
雨の日などは普通の日よりも危険で、依頼に行けない日もあるだろうから、冒険者にも楽しめることは間違いないだろう。しかし、このトランプというものは賭博にも使えてしまうから、販売してこの世界に広めて良いのかは少し考えものだ。
今のところこの街にはカジノのような施設は存在しないようだが、トランプを販売したことによってそんなのが出たらちょっと嫌だよなあ。まずは賭け事に使えなそうな遊具から販売した方がいいかもしれない。
「ダウト!」
「くっ、正解だ。くそっ、また嘘がバレてしまったか……」
「リリアは正直で分かりやすいですからね。それにしても、フェリーとランジェさんは嘘が全然見破れないですわ……」
「こういうのは得意!」
「僕もこういうゲームは結構得意だからね! 負けないよ~!」
「………………」
どうやらリリアはダウトみたいなゲームが苦手みたいだな。反対にポーカーフェイスが得意……というよりか、表情の動きが少ないフェリーさんと常に嘘をしれっとつくことが得意なランジェさんはこのゲームに強そうだ。
それにしても、みんなで楽しそうにトランプをしているところを見ると、俺も混ざりたくなってしまうな。
うん、明日の準備はこれくらいでいいだろう。あとは臨機応変に行くとしよう。この年になって大勢でトランプをするのは久しぶりだけれど、童心に帰って楽しむとしよう。
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