第200話 バーベキュー再び
「2人とも休みの日なのに本当に悪いね」
「とんでもないです、テツヤさん。こちらこそ、いつもおいしい料理をご馳走になってしまってすみません」
「普段はお世話になってばかりだからな。こういう手伝いならいくらでも言ってくれ」
店を一時的に閉めた翌日、今日は朝からアンジュとドルファと一緒に市場へ買い物にやってきていた。すでにみんなの手には市場で購入したたくさんの食材がある。
「それにしても、2人がお店を手伝ってくれるようになってから、もうだいぶ経ったな。あの店を開いてすぐの頃、毎日が本当に忙しかったのは懐かしいぞ」
当然リリアも一緒に護衛として買い出しへ付き合ってくれている。
「そうだね、屋台で方位磁石を売っていたころがだいぶ懐かしいなあ。それにあの店を構えた時は本当に忙しかったからね。2人が店に来てくれて本当に助かったよ」
あの頃は商品もまだ少なく、お客さんも少なかったとはいえ、俺とフィアちゃんとリリアの3人しかいなかったから本当に忙しかったな。アウトドアショップが駆け出し冒険者たちへ受け入れられるようになって、ドルファを雇ってからアンジュも雇えることができて本当に助かった。
「俺たちの方こそ、この店に雇ってもらえて運が良かったぜ。アンジュも雇ってもらえて、テツヤさんには本当に感謝している」
「ええ。それにテツヤさんやリリアさんたちにはあの時にご迷惑をお掛けしてしまってすみません。私も本当に感謝しています」
「アンジュのストーカーの時は本当に助かった。俺がもう少ししっかりしていれば、みんなにも迷惑を掛けることはなかったのにな……」
「お互いにそう思えるなら良かったよ。これからもよろしくな」
美形の2人が店に来てくれたおかげで、2人目当てのお客さんも大勢くるようになった。
ドルファも訓練(?)の甲斐あってアンジュが男性に接客していても自分を抑えることができるようになった。最初の頃は接客された男性を思いっきり睨みつけていたからな……
……そういえば、例のストーカーはどうなったんだろうな? この世界だと罪人はリアルに鉱山で強制労働とかもありえそうな気もする。まあ、完全に自業自得だから、知ったとこではないけれど。
「よし、食材はこんなもので大丈夫かな。それじゃあ、街の外に行こう」
3人と一緒に市場を回って野菜や肉や魚などの食材を買い込む。この食材は明後日から王都へ行く際に持っていく食材、というわけではなく、今日はこれからアレフレアの街の外の河原でバーベキューだ。
「テツヤ、もうお腹がペコペコだよ!」
「テツヤお兄ちゃん、いろいろと準備しておいたよ!」
「お待たせ。もう火も起こしてあるんだね。それじゃあ、すぐにできるものから焼き始めちゃおうか」
前回みんなでバーベキューをした場所と同じ場所へ行くと、すでにそこにはテーブルやイスを収納魔法で運んで、設置をしてくれてたランジェさんたちがいる。
時刻はまだ昼前で、他のみんなの集合時間はまだもう少しあるけれど、先に簡単なものから焼いて食べ始めてもいいだろう。こういうのはバーベキューを準備する側の特権というものだ。
「レーアさんも来てくれてありがとうございます」
「こちらこそ呼んでいただいてありがとうございます」
今日はフィアちゃんの母親のレーアさんも来てくれている。
しかし残念ながら明後日から行く王都には来られないようだ。まあ、普通の人は1~2週間休みを取るのはなかなか難しくて当然か。こちらの世界にも夏休みや冬休みなんかがあればいいんだけれどね。
「今日は集まってくれてありがとう。みんなのおかげで、アウトドアショップを大きな店に移転することができた。今後ともよろしく頼む。それじゃあ、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
コップのぶつかる音がして、それぞれが飲み物を飲み干す。こういう時に長い挨拶は不要だが、俺がこの世界に来て大きな店を持つことができるようになったのはみんなのおかげだから、これだけは伝えておかないといけない。
「ぷはあ~うまい!」
今回もライザックさんやグレゴさんが持ってきてくれた高級なお酒やジュースをランジェさんの魔法で冷やして飲む。やっぱりいつも飲んでいるお酒よりもおいしいんだよね。
「おお、これはうまい!」
「ええ、本当においしいです!」
参加メンバーは前回バーベキューに参加してくれたうちのお店の従業員、ロイヤ達、フェリーさんとベルナさん、冒険者ギルドの2人、宿屋のアルベラちゃん、そしてお隣さんのブライモンさんとマドレットさんだ。
しばらく前から伝えていたこともあって、お店の休日と今日を合わせてくれたらしい。
「本当にテツヤさん達がいなくなると寂しくなるなあ……」
「ええ、本当ですねえ……」
「同じ街にいるわけですし、またお邪魔させてもらいますよ。たまにこういった食事会みたいなものを開いているので、お時間があったらぜひまた来てくださいね」
新しく移転する店舗は今の店と多少離れてしまうが、同じ街に住んでいるわけだし、またすぐに会うことになるだろう。それに2人が漬けた漬物はとてもおいしいから、たまにようかんを持ってお邪魔させてもらうとしよう。
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