第186話 二日酔い
「いやあ、昨日は楽しかったね! あれだけおいしいものを食べたのも、お酒をあれだけ飲んだのも本当に久しぶりだよ」
「ランジェさんも楽しんでくれたようで良かったよ。それにしてもグレゴさんが持ってきてくれたお酒は本当に効いたなあ……これだけ二日酔いになったのは初めてかもしれないな」
昨日はこのアレフレアの街から少し離れたところで、この店の従業員や俺にかかわりのある人を大勢呼んでみんなでバーベキューをした。ベルナさんとフェリーさんが持ってきてくれたアースドラゴンの肉や王都の冒険者ギルドマスターのルハイルさんからもらったレッドバジリスクの肉は本当においしかったな。
冒険者ギルドのライザックさんとパトリスさんが持ってきてくれた果汁のジュースやエール、それにグレゴさんが持ってきてくれた特別なお酒もとてもおいしかったのだが、こちらの世界に来てからあれほど酒精の強いお酒を飲むのは本当に久しぶりだったから結構な二日酔いになってしまった。
それにあんなに大勢でいろんな話をしながら食べたり飲んだりするのは初めてだったから、ついついお酒を飲み過ぎてしまったんだよね。みんな楽しんでくれたようだし、また人を集めて同じようにバーベキューをしたいところだが、今度は飲み過ぎないように気を付けないといけないな。
「それにしてもリリアたちはタフだよねえ。昨日あれだけ楽しんで食べたり飲んだりしていたのに、今日は朝からベルナさんとフェリーさんと一緒に出掛けているんだもんね」
「本当にみんな元気だよなあ……」
ベルナさんとフェリーさんはいつものように明日から王都の方へ戻る予定らしく、今日は元パーティメンバーのリリアと一緒に街へ遊びに出掛けている。
昨日あれだけみんなで楽しく騒いだのに元気だよなあ……ベルナさんに至っては俺と同じくらいお酒を飲んでいたにもかかわらず、朝お店にリリアを迎えに来た時にはピンピンしていた。改めて冒険者は身体が資本なんだと思ったよ……
俺とランジェさんも一緒に行かないか誘われたけれど、二日酔いで完全にダウン状態だった。ランジェさんはまだ大丈夫そうだったから、たぶん俺に気を遣って残ってくれたのかもしれない。
「ベルナさんとフェリーさんやルハイルさんへのお土産は昨日作ったし、明日から販売する商品の準備も終わっているから、今日はのんびりとできそうかな」
2人に持って行ってもらう燻製肉やローストドラゴンは昨日バーベキューをしながら作っておいたから大丈夫だ。昨日の片付けもすでに昨日中に終わっている。ダッチオーブンやコンロなんかは使い終わったらすぐに処理をしておかなければならない。
特に鋳鉄製の物は使い終わったらすぐに処理をしないとすぐに錆びるんだよ……百均で売っている300円くらいの小さな鋳鉄製フライパンを数日放っておいただけで錆びだらけにしてしまったのはいい教訓だった。まさかあそこまですぐに錆びるなんて思ってもいなかったぞ……
今週はランジェさんがお店にいてくれるから、また新たな商品を発売する予定だ。先々週から発売を始めたレトルトカレーとようかんはすでにかなりの人気商品となっている。その準備も頑張って2日前に終わらせているから、今日はゆっくりとできそうだ。
「さすがに明日販売する予定の商品は食品じゃないからそこまでお客さんが殺到するわけじゃないと思うよ。でもあれはなかなか便利だよね。ところでテツヤ、リリアとの仲なんだけれどちょっとは進んだの?」
「うっ……」
そうか、たぶんランジェさんはこのことを聞きたいから残ってくれたのかな。ちょうど良かった、俺もちょっとランジェさんに相談したいこともあったんだ。
「それが全然なんだよ……」
「まったく、何をしているんだよテツヤ。リリアは元Bランク冒険者で綺麗なんだからモテるんだし、モタモタしていたら誰かに取られちゃうよ?」
確かにリリアは優しいし、とても綺麗だから男性客にモテるんだろうなあ……たとえ怪我があってもそんなのリリアの魅力とは関係ないしね。
「いや、俺だって何もしていないわけじゃないよ。週にある2日の休みのどちらかは積極的にリリアと出かけるようにしているし、店が終わった後の食材の買い物も一緒に行っているし……」
「……それって単に護衛としてついてきているだけじゃない?」
「うぐっ……」
完全に図星である。何度か休みの日にリリアを誘って買い物に行ったり演劇を見に行ったりしたのだが、リリアの方は完全に護衛としてついてきているつもりだと思うんだよね……
「まあリリアの方も恋愛方面にはうとそうだからしょうがないけれど、ここはテツヤの方が自分から押していかないと! どこかに出掛ける時はちゃんとデートだって伝えないと駄目だよ」
「そ、そうだね」
確かにそう言わないとリリアに伝わらないというのは分かっているんだけれど、いざデートと口に出そうとすると、意識してものすごく恥ずかしくなるんだよね……これだから年齢イコール彼女いない歴の男は駄目なんだよなあ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます