第183話 アウトドアソースとローストドラゴン


 アウトドアソース――元の世界で新しく販売されたばかりのアウトドア用の調味料である。


 最近では様々なメーカーがアウトドアスパイスという肉や魚や野菜のすべてにあう万能調味料を販売している。そしてアウトドアスパイスの次に現れたのがアウトドア用のソースである。


 アウトドアスパイスも万能でとてもおいしいのだが、すべてが同じ味になってしまうという欠点がある。そこで現れたのが様々な味を楽しめるアウトドアソースだ。ソースと言っても、普段使用している黒いソースだけでなく、バーベキューソースの味やガーリックとオニオンなどの様々な味があるようだ。


 今回バーベキューに合いそうな味ということで、バーベキューとガーリックオニオン味のアウトドアソースの2種類を準備してみた。


「ほう、こいつはうまい! もちろん肉もうまいが、このタレも初めて食べる味だ!」


「すごい! 塩だけでもおいしいけれど、こっちのタレの味もうまい!」


「かあ~こいつは酒が進む味だぜ!」


 グレゴさん、ファル、ライザックさんも様々な味で焼いたドラゴンの肉を楽しんでいる。


 軽い塩コショウを掛けてもうまいが、アースドラゴンの肉は濃い味の焼肉のタレやアウトドアソースに全然負けていない。


「素晴らしい味ですわ! こんな味付けは初めてです!」


「いつもの焼き肉のタレとアウトドアスパイスもおいしいけれど、こっちもおいしい!」


「気に入ってもらえてよかったです。こっちのタレもいつもの焼き肉のタレと一緒にお土産に持っていってくださいね」


 アースドラゴンの肉を提供してくれたベルナさんとフェリーさんも新しいアウトドアソースの味を気に入ってくれたようでなによりだ。こっちもアウトドアスパイスと同様に焼いた肉や魚や野菜なんかとはよく合うからな。


「本当ですか! ありがとうございます!」


「テツヤ、ありがとう!」


 今回はレベル5になってアウトドアショップの能力で新しい商品がたくさん購入できるようになった。このアースドラゴンの肉塊とは釣り合わないかもしれないが、できる限りいろいろと持っていってもらおう。


「他にも別の肉や料理も用意したので、試してみてくださいね」


 そしてアースドラゴンの肉の他にも王都のギルドマスターのルハイルさんからもらったレッドバジリスクの肉もある。こちらの肉もアースドラゴンの肉ほどまではいかないが、立派な高級食材となっている。


 そしてこっちの肉はドラゴンの肉とは異なっており、肉の旨みがしっかりと伝わる繊細な味だ。いくらアースドラゴンの肉がめちゃくちゃうまいとはいえ、脂身の多い肉だけをずっと食べていると飽きが来るからな。


 ちゃんと間に野菜なども挟んで焼いていくとしよう。




「……よし、こっちも完成だ」


 みんなでバーベキューを楽しみながら、もうひとつ別の料理を並行して作っていたが、そちらの方も完成した。火にかけていたダッチオーブンをテーブルの中央へ置き、重い蓋を開ける。


「おお、肉の塊が鍋の真ん中に置いてあってめちゃくちゃ豪勢じゃねえか!」


「うわあ~とってもおいしそうね!」


「フィア覚えてる、ローストって料理だよね!」


 ライザックさんとニコレが興味深そうにダッチオーブンの中を見る。フィアちゃんの言う通り、この料理は以前にワイバーンの肉を貰った時に作った料理だ。今回はドラゴンだからローストドラゴンとなる。


「テツヤお兄ちゃん、まだお肉が赤いよ!」


「テ、テツヤさん。生焼けのお肉を食べるとお腹を壊してしまいますよ……」


 以前にアウトドアショップの庭でバーベキューをした時にいなかったアルベラちゃんとパトリスさんたちがカットして赤い身が見えたローストドラゴンを見て不安そうな声を上げる。


「これは俺の故郷の料理で、ローストっていう調理法なんだ。じっくりと火が通っているから、このまま食べても大丈夫なんだよ」


 このローストドラゴンは肉の表面をしっかりと焼いた後にダッチオーブンで炭を蓋の上に置いて全方向から長時間蒸し焼きにしているので、中までしっかりと火が通っているのである。


 ソースは最初にドラゴンの塊肉を焼いた時に出た肉汁とワイン、野菜、調味料などを混ぜ合わせて作ったグレービーソース、アウトドアソースのガーリックオニオン、醤油を用意した。醤油の方はわさびと一緒に和風のわさび醤油が合うんだよね。


 ローストにする場合は脂身が少ない部位の方がおいしいので、いただいたアースドラゴンの肉の赤身が多い部分を使ってみた。


「うおおおお、こいつはうめえ!」


「あの時のワイバーンの肉もおいしかったが、この肉の方がもっとおいしいな!」


「こちらの調理方法は王都でも見かけませんでしたわ! 本当においしいです!」


 ロイヤ、リリア、ベルナさんが驚きの声を上げる。


 普通に焼いた肉もうまいのだが、ローストしたドラゴンの肉はしっとりとしていて柔らかく、噛めば噛むほどジューシーなドラゴンの肉の旨みが口中に溢れてくる。牛や豚や鳥とも違う濃厚な肉の旨さだ。


 出来上がったばかりの温かいローストドラゴンの肉は本当にうまい。このドラゴンの肉汁を使ったグレービーともよく合っている。


 他にも前までは一種類しかなかった燻製用のチップの種類が増えていたので、アースドラゴンとレッドバジリスクの燻製肉も作っている。チップが変わるだけで風味が全然異なるから面白いんだよね。


 これらの燻製肉だいぶ多めに作っているから、多い分はいつも通りベルナさんとフェリーさんのお土産用に渡す予定だ。

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