第170話 商品の選択


「さて、商品がたくさん購入できるようになったのはいいけれど、どの商品を店で販売するのかはとても迷うな」


 アウトドアショップのレベルが5になった次の日。店の2階でリリアとランジェさんと一緒にどの商品を新しく店頭に並べるかを相談している。


「どれも魅力的な商品が多いからな。少なくとも食品系のレトルトというやつや、お餅という甘い菓子は売れると思うぞ」


「確かに甘いお菓子も売れると思うけれど、冒険者がよく使うテントや寝袋なんかも街で売っている物よりも品質が良くて売れるだろうね。他にも重ねて収納できるクッカーや調理道具なんかも需要があっていいよ思うよ」


 リリアやランジェさんが意見をくれる。商品が多すぎるから、それをみんなで考えて絞らなければならない。


「とりあえず、商品を置く売り場所の問題もあるから、その辺りも考えていかないとね。少しずつ販売する商品は増やしていくつもりだけれど、売り場が足りないから、もっと大きなお店を借りることも考えないといけないかもな」


 現在のお店は元いた世界のコンビニくらいの大きさしかない。お店をオープンした当初は商品数が少なく、ガラガラに空いていた棚も商品を増やすにつれていっぱいになってきた。


 本当に10商品くらいしか置いていなかったころが懐かしいよ。あの時に比べたら、商品もかかわっている人も大勢増えたものだな。


「そうだな。今もだいぶ商品が増えてきて、それぞれの商品を置く数が減ってきたから、すぐに倉庫へ補充に行かないと駄目だものな」


「それにお店に来てくれるお客さんもだいぶ増えてきたから、通路も結構狭く感じるよね。だいぶ忙しくなってきたから、最近は女の子と話せる時間もほとんどないよ」


「「………………」」


 まあ、ランジェさんが女の子と話せる時間が減ったことについては置いておいて、確かにリリアとランジェさんの言うことも最もだから、そろそろお店をもう少し大きな場所に移転するものありかもしれない。


 幸い最近では多くのお客さんがこのお店を利用してくれて、他の街に商品を卸せることになり、地図や図鑑などの収益があって、お金にはだいぶ余裕がある。


 とはいえ、リリアのために完全回復薬を手に入れたいという目的もあるから、あまりお金を使いたくないというのも本音だな。いや、お店を大きくして、いろいろなものを販売した方が、最終的にはそちらの方が早く手に入るのかもしれない。


「お店を移転することについては時間のある時に少しずつ調べてみるとするよ。少なくとも今のところは地図や図鑑みたいにとんでもない商品はなさそうか。理想を言えば商品をひとつずつ購入して検分したいところだけれど、置き場所がないからな」


 今のところは地図や図鑑のように、異世界に来たおかげでとても便利になる商品はなさそうだけれど、こればっかりは実際に試してみないと分からない商品も多そうだ。


 とはいえ、とんでもなく大きな商品もあることだし、それぞれを購入して確認するのは難しい気もする。というか、最近のアウトドアショップはこんなものまで売っているんだなと思う商品がいくつもあった。


「それと方位磁石や浄水器みたいに、直接駆け出し冒険者達の生存率を上げるようなものもなさそうかな。それなら、他の店と競合せずに、冒険者の生活に役立ちそうな商品を優先して販売していくとするかな」


 ざっと確認をしてみたところ、方位磁石や浄水器みたいに生存率を大幅に上げられるような商品はないみたいだ。


 ポイズンリムーバーという、毒虫や蛇などに噛まれた際に毒針や毒液を吸い取る非常用の道具が使えそうかなとも思ったのだが、このアレフレア町周辺では毒を持つような魔物はいないらしい。


 それにこの世界では毒消しポーションなんかが存在するので、これはたぶん売れないだろうな。


「ああ、それでいいと思うぞ。少なくともあのアウトドアスパイスというやつはようやく販売できそうだな」


「うん、僕もあれは絶対におすすめできるよ! 肉や野菜や魚を焼いてあれをかけるだけでも本当においしくなるからね。それほど高い値段にならないなら、絶対にみんな喜んでくれると思うよ」


「そうだね。ようやくアウトドアスパイスも販売ができるようになったか」


 王都から帰ってきてしばらく経ち、王都の市場で話を聞いていたように、香辛料の値段がだいぶ下がってきた。確か魔法を使った香辛料の栽培方法がうまくいって、それに伴い香辛料の値段が落ち着いてきたのだ。


 これにより、王都だけでなく、アレフレアの街の香辛料の価格が下がり始めてきた。今の状態なら、アウトドアスパイスの販売を行ってもよさそうだ。結構初期の段階からアウトドアショップで購入できたアウトドアスパイスがようやく日の目を浴びることとなる。


 これも冒険者にとって、持っているとかなり便利だものな。肉や野菜や魚を焼いてこれをかけるだけでも、塩を振るよりよっぽどおいしくなる。それに香草なんかも入っているから、例の臭いが強い干し肉なんかかけても味が良くなるだろう。

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