第169話 お餅とゼリー飲料


「ああ、もちろん入るぞ!」


「あのようかんやチョコレートバーみたいなお菓子かな? もちろん食べられるよ!」


 どうやら2人ともまだ少しはお腹に入るようだ。


 アウトドアショップの能力がレベル5に上がったことにより、アウトドアショップで販売されている登山やハイキングの際に手軽にエネルギー補給するための行動食も新しく増えた。せっかくなので、そちらの方も味を見てもらうことにしよう。


 ウインドウを操作して、目的のものを目の前のお皿とお椀の上に購入した。


「こっちのお皿の上に乗せたのがお餅で、お椀に入っているのがゼリーだよ。お餅の方は今切るからちょっと待っていてね」


 今回新しく購入できるようになったのはお餅とゼリー飲料だ。


 ゼリー飲料の方は昔からよくある行動食だな。パックの中に入っていてチューチューと吸って飲むあれである。歩きながらも飲みやすく、栄養補給だけでなく水分補給も同時にできる優れた行動食になる。


 餅の方は最近になって出てきた新しい行動食だ。餅と言っても杵でついた柔らかい餅というわけではなく、弾力のある団子のような食感をしたバーのようなものとなっている。餅はこっちのバータイプとは別に、水を加えて1分ほど待つと柔らかい餅になるタイプの餅まであるぞ。


「……こっちのゼリーはなんとも面白い食感だな。ほのかに甘くて酸味もあってなかなかいけるぞ。だが、どちらかというとこっちの餅という方がおいしいな」


「うん、お餅っていう方は程よい甘さをしていて、このモチモチとした食感がたまらないね。中にあるカリッとしたこの食感が合わさってとてもおいしいよ!」


「そうだね。甘さはようかんやチョコレートバーの方が甘いけれど、ほんのりとした甘さのお餅も悪くないな。ただ、ゼリーの方はちょっと微妙な味かな……」


 うん、どうやら2人も餅の方はおいしく感じるらしい。甘さは以前から購入できるようかんとゼリーの方が上だが、この優しい甘さとクルミの食感はなかなか良いおやつになりそうだ。だが、やっぱりゼリー飲料の方はこのままだとそれほどおいしくないか……


「ランジェさん、こっちのゼリーの方を氷魔法を使って少し冷やしてくれない? 俺の故郷だとこれは冷やして飲むものなんだ」


「へえ~そうなんだ。ちょっと待っていてね」


 ランジェさんは両手をゼリー飲料が入ったお椀の前へとかざした。


「……とりあえずこれくらいかな。足りなかったらもう少し冷やすよ」


「ありがとう。それじゃあもう一度試してみるか」


 ランジェさんが冷やしてくれたゼリー飲料をスプーンですくって口へと運ぶ。


「おお、これはおいしいぞ、テツヤ! ヒンヤリとしていて、果汁の甘みと酸味と一緒にツルンと喉を通っていくな!」


「うん、このゼリーは冷やしてから食べた方が断然おいしいね! 特に暑い日だったら最高においしいと思うよ!」


 リリアとランジェさんもだいぶ気に入ってくれたみたいだな。最近のゼリー飲料は行動食というだけでなく、味もだいぶ優秀である。


 ゼリー飲料はこうやって冷やして飲むのが一番おいしい。正直なところ、さっきのように常温で飲むとあまりおいしくないな。登山の時には凍らせたうえで持っていくと、途中までは保冷剤代わりとして使用でき、溶けてきたら飲むということもできる優れものだ。


「確かに暑い日は売れるかもしれないな。だけど氷魔法を使える人はかなり少ないし、販売するのは微妙っぽいか。うん、いいデータが取れたよ」


 そもそもランジェさんのような氷魔法の使い手は非常に少ないと聞いている。この世界では魔法の適性がある人自体少ないらしいからな。残念ながら俺にも魔法適正はないらしい。


 ……いや、アウトドアショップの能力に加えて魔法適正が欲しいなんて言ったらさすがに罰が当たるか。


「確かにこれを販売するのはちょっと微妙かもね。でも僕は気に入ったよ! あとで多めにちょうだい」


「ああ、もちろんだよ。こっちの餅はいいおやつにもなるし、ようかんやチョコレートバーと一緒に販売するか検討しよう」


 俺達が王都へ出掛けている間に例の保存パックの大量生産もだいぶ進んでくれたみたいだ。そろそろ非常食としてようかんやチョコレートバーを販売しようと思っていたところでもある。あわせてこの餅も検討することにしよう。


 甘いものが好きなベルナさんとフェリーさんもきっと喜んでくれるだろう。2人とも氷魔法は使えないが、フェリーさんは容量のある収納魔法を使えるので、ランジェさんの氷魔法で冷やしてもらった後に収納すれば、冷たいゼリー飲料がいつも飲めることになる。


 収納した時の状態のまま保存できる収納魔法は本当に便利で羨ましい。俺も氷魔法が使えれば冷えた状態でお酒を飲めるようになるんだけれどなあ……


 さて、さすがに今日はもうお腹がいっぱいだ。明日と明後日は休日だし、新しく購入できるようになった商品をいろいろと確認してみるとしよう。しかし、これほど商品が増えると、コンビニくらいの広さしかない今の店ではだいぶ手狭になってきた。その辺りも少しずつ考えていくか。

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