第161話 アダルティーな店と香辛料


「……俺たちの方は有名な武器と防具屋、それに魔道具屋なんかを回ったな」


「……そうだな。昼食は市場の近くにある屋台街で食べ歩きをしてきたぞ」


「やっぱり王都の屋台はいろんなお店がある上に、珍しい料理や食材がいっぱいあってどれもおいしかったね」


 俺とドルファは若干気まずそうに話すが、ランジェさんは堂々と話す。


 別に嘘は言っていないぞ。ただそれに加えてもう一店だけ行った場所を伝えていないだけだ。それにしてもあの店はすごかったな……ちょっと食べ物に対する文明が元の世界よりも遅れていたからといって、そっちの文明が遅れているわけではなかったようだ。


 魔道具によるアダルティーなグッズや、スライムの粘液なんかを使ったドロドロとした液体、怪しそうな素材を使った媚薬などなど。うん、エロいことに関してはたとえ異世界であろうと関係ないということがよく分かった。


 ランジェさんはいろいろと購入していたようだが、俺とドルファは何も購入せずに店を出た。こういう時に収納魔法が使えると、バレずに購入できてとんでもなく便利だよな……


 いや、リリアのことをちゃんと考えると決意していたところだし、元々購入する気はなかったぞ! 同じ理由で娼館も、ものすご~く興味はあったが、行っていないからな!


「フィアたちもお昼は屋台で食べたよ! アレフレアの街よりもいっぱい屋台が出ていて、すっごく楽しかった!」


「ええ、向こうにはない麵料理や包み焼き料理なんかもあって、とてもおいしかったです。もしかしたらテツヤさんたちと同じ場所にいたのかもしれませんね」


「……そうだね。市場の屋台だから、きっと同じ場所で昼食を食べていたと思うよ」


 大丈夫、例の店に入る時は、ちゃんとみんなの気配がないことを確認してから店に入ったから、絶対にバレていないはずだ。エロ本を買う時やそういう店に入る時は周りをチェックすることは基本である。


 純粋なフィアちゃんやアンジュたちの視線が少し痛い。男とは汚れた生き物なのである。


「そういえばこの街の屋台の料理ではしっかりと香辛料が使われていたな」


「あっ、それは俺も思ったよ。屋台の料理の値段はやっぱりアレフレアの街よりも高かったけれど、香辛料をしっかりと使ってあれなら安い気がする。昨日フェリーさんから聞いていたように、香辛料が安く出回り始めているみたいだね」


 リリアの指摘通り、確かに屋台では香辛料を多く使った料理が提供されていた。香辛料の値下がりと一緒に、料理も一緒に進化していくのだろうな。


「そういえば最近王都でも安く香辛料が出回り始めてきたみたいですね。しばらくすれば、アレフレアの街でも香辛料が安く出回り始めると思いますわ」


「でもさすがにテツヤのアウトドアスパイスにはかなわない。肉や魚を焼いてあれをかけるだけですごくおいしくなる」


 あれは何種類ものスパイスをふんだんに使って、長時間スパイスの調合率を考えて作られたものだからな。さすがにまだこの世界で同質のものを作るのは難しいだろう。勤勉な日本の企業による努力の勝利である。


 とはいえ、香辛料の値段が下がり始めた今、アウトドアスパイスと似たような調合されたスパイスが作られることもあるかもしれない。


「そうだね。それを知れただけでもいい収穫になったよ。アレフレアの街に戻って、香辛料の値段が下がってきたら、アウトドアスパイスの販売を始めてみようかな」


「そうだな。元冒険者としての意見だが、あれはとても便利だから絶対に売れると思うぞ」


「ああ、私もそう思うぞ」


 元冒険者のドルファとリリアがそう言ってくれるのなら間違いはないだろう。野営をして現地で料理をする冒険者なら、アウトドアスパイスの有用性はすぐ分かるに違いない。


「いよいよ王都ともお別れか。いろいろとあったけれど、とても楽しかったな」


「うん、みんなで旅行はとっても楽しかった!」


「はい。初めて王都に来ましたが、とても楽しかったです」


「俺もだ。大勢で旅行するのは楽しいものなんだな」


「もちろん僕もだよ。普段ひとりで冒険者をしているのもいいけれど、大勢での旅行も悪くないものだね」


「私も久しぶりに王都へ来られて本当に楽しかったぞ。ぜひまた訪れたいものだ」


 どうやら従業員のみんなも王都への旅行を楽しんでくれたようだ。たまには店を休んで、いろんな街に旅行へ出かけるのも良いものである。


「楽しんでいただけて本当に良かったです。私もとても楽しめましたわ。ぜひまた皆さんで王都までいらしてください」


「私も久しぶりに楽しかった。またみんなでお出かけしたい」


 ベルナさんとフェリーさんにはとてもお世話になったな。2人も一緒に楽しんでくれたのなら何よりだ。


 またしばらくしたら社員旅行としていろんな街に出かけてみるとしよう。


 ……まあ王都は物価が高すぎるから、今度は別の街にしよう。今回は移動費や宿代を冒険者ギルドのルハイルさんが出してくれたからこそ来られたわけだし、今後は完全回復薬を手に入れるためにもお金を貯めないといけないからな。

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