第160話 恋愛話


「テツヤは知らないと思うけれど、あの2人には浮ついた話なんてまったく出てこないんだよ。特にフェリーさんは男の人どころか女性の人ともそれほど話さないからね」


「そういえば、俺もまだフェリーさんと話すときは少し距離を取られているな」


 確かにフェリーさんと出会った時はだいぶ人見知りだった覚えがある。とはいえ、あれはどう考えても……


「あれは単純においしいご飯につられているだけだと思うけれどね」


 一番最初はアウトドアスパイスや焼肉のタレを使ったバーベキューをして、アウトドアスパイスで味付けをしたワイバーンの燻製肉を渡したらとても喜ばれたんだっけな。


 それからは2人がアレフレアの街へ来るたびにいろんな料理を食べてもらったり、お菓子をお土産に渡したらだいぶ普通に接してくれるようになった。うん、あれはどう考えても餌付けをしているだけのような気がする。


「きっかけがおいしいご飯でも、そもそもそこまで仲良くなった男性がいないんじゃないかな。おいしいご飯で2人の胃袋を掴めばそのままいけると思うけれど」


「さすがに俺はベルナさんとフェリーさんの気持ちまでは分からないけれど、2人ならリリアとも仲が良いだろうし、テツヤさんと結婚しても許してはくれそうだな」


「そうだね。3人とも仲がとてもいいから、それについては問題なさそうだね」


「………………」


 ランジェさんとドルファも当たり前のように3人と一緒に結婚すればいいじゃんみたいに言うけれど、さすがにそれは話が飛躍しすぎだ。


 確かにこっちの異世界では重婚は法律的には認められているから、しようと思えば法律的には何人とでも結婚をすることができるらしい。それこそこの国の国王様なんて何人もの妻を娶っているらしいからな。


 重婚という制度があるからこそ、ランジェさんとドルファみたいに複数人と結婚ができるの当たり前みたいに話をすることができるけれど、元の世界で生まれ育ってきた俺だとさすがに重婚という制度には違和感しかない。


 重婚という考えはないけれど、男同士でこうやって恋愛話で盛り上がるのもちょっと楽しかったりする。元の世界では本当に恋愛ごとには無縁だったからな。


「ベルナさんとフェリーさんのことはとりあえず置いておいて、いろいろと相談に乗ってくれて助かった。本当に感謝しているよ」


「俺も普段からテツヤさんには世話になっているからな。少しでも役に立てたのならよかったよ」


「水臭いことは言いっこなしだよ。テツヤとリリアにはみんながお世話になっているんだからね。少なくとも僕たちはテツヤの味方だからさ」


「……2人とも本当にありがとう」


 本当に俺はいい従業員に恵まれた。俺の方こそ従業員のみんなにはとてもお世話になっている。みんなが困っていたら、俺も力になるとしよう。


「それじゃあ次は僕が行きたいお店にも付き合ってもらおうかな」


「あ、ああ……」


「そ、そうだね……」


 ランジェさんは相変わらずだった。


 どちらにせよ、まだ完全回復薬を購入できるほどのお金はない。もう少しでアウトドアショップのレベルが上がることだし、それによってアウトドアショップの能力で新しい商品が購入できるようになる。


 完全回復薬とリリアのことについても少しずつ考えていかないといけないな。






「それでね、大きな剣を持った冒険者のお兄ちゃんがドラゴンを倒して、貴族のお姫様と結ばれたんだよ!」


「へえ~それは面白そうな演劇だったね」


 フィアちゃんが目をキラキラとさせながら、今日見てきた演劇の内容を楽しそうに語っている。フサフサとした尻尾をブンブンと振っているから、本当に楽しかったんだろうな。


 時刻は夕方。ドルファとランジェさんと一緒に、王都にあるいろんな店を回って楽しんできてから宿に帰ると、すでに女性陣は帰ってきていた。


 高級な宿のおいしいご飯を食べながら、今日は何して過ごしていたのかを話しているところだ。


「さすが王都の演劇でしたね。アレフレアの街の演劇だと、小さな舞台を作るのがやっとですけれど、王都には大きな演劇場があって、大勢のお客さんが上から見下ろす形で演劇を見られるようになっていましたよ。それに演劇の演出で魔法を使っていましたし、本当に凄い迫力でした」


 アンジュも演劇を楽しんだらしい。俺もアレフレアの街で演劇を見に行ったことはあるが、元の世界での演劇を見てしまっていると、そこまですごい演劇だとは思えなかったが、どうやら王都の演劇はそれとはレベルが違かったらしい。


 それに演劇に魔法を使うとはなかなかすごい演出だ。


「そうか。アンジュが王都を楽しめて本当に良かった。変な連中に絡まれたりはしていないか?」


「そんなことはなかったから安心して、兄さん。でもベルナさんとフェリーさんへの視線が本当に凄かったわ。王都でとても人気のあるAランク冒険者ということは知っていても、まさかこれほどとはね……」


「そうだね、それは俺も昨日十分に味わったよ……」


 昨日は俺と一緒に市場へ行ったのはフェリーさんだけだったが、それでも大勢の人の視線を集めて離さなかった。それに2人が並んで歩くと、さらに目立ってしまうからな。


「それからお昼ご飯を食べて、その後は王都で有名な服屋を回ったりしたな……あまりにも高い商品ばっかりだったから結局は買わなかったんだ」


「王都の有名なお店の服は素材とかにもこだわっているからね」


 さすがランジェさん。女性を喜ばせるため情報にはとても詳しいようだ。


「それで、テツヤたちはどこに行ってきたんんだ?」

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