22.半竜人族の少女、目を覚ます。
ウォルが宮殿内部の“死眼龍”の部屋に来てから何日か経ったが、まだその目を覚ますことは無かった。
昏昏と眠り続けるその間に、ホールンはテーラーから受け取って来たウォルの正装ローブを箱庭の部屋に運び込み、壁際に
二度ほど“世界龍”と“原初”が訪ねて来たが、ついぞ直接会話することはできなかった。
「これから私は国を出る。次に会うのは授与式のときになるやもしれんな。」
「儂も軍事勲章の審査に入る。感謝を述べるのは少しお預けじゃな。」
そう言って二龍は数刻ディースの用意した椅子に座ってウォルを待った後、ディースに『邪魔したな。』と声をかけて部屋を出ていった。
ウォルが寝ているその間、ディースは自らの仕事などの一切をウォルの横の机に座ってこなした。読んだ本は堆く積み上がり、書いた書類も数百にのぼる。
それに気づいたのはその日の陽が落ちる直前だった。ふと作業を止めて窓を見て、視線をウォルに移した時。ウォルの纏う『死』の雰囲気が少し薄れたのだ。
すぐさま手元のダイヤルキーを打って“魂醒龍”を呼び出す。
「ソアイ!直ぐに私のところまで来てくれ!
ウォルの『死』が薄れた!」
「分かったわ!少し待って。」
駆けつけた“魂醒龍”が慎重にその状態を探ると、寝ているウォルの意識が急速に回復していることが分かった。もう既に通常の眠りに近い段階。
『ウォル、深眠より起く。』その一報を受けて任務に出ていたホールンに幻想楼に戻っていたステアも、ディースの箱庭の部屋まで駆けつけて来た。
当のウォルがゆっくりと目を開いたのはもう真夜中になろうかという時。
ぼやけていた目の前がはっきりと見えた時、ウォルの目に一番最初に映ったのはディースの深い黒の眼だった。
「ウォル、よく眠れたかい?」
その言葉に自分が黒いベッドで寝ていること、その部屋にみんながいることを理解する。
「ディース…。ホールンさんにステアも。私、どうしちゃったの?」
「あの後意識を失って、数日寝ていたんだよ。」
「数日!?そんなに長く…。あの赤い龍は…?」
「大丈夫だ。私と“世界龍”様がその場を収めた。
だが、この話の前に空いたお腹を満たさなければな。」
そう言って部屋を出て行ったディースは、手に盆を持って帰ってきた。
乗っているのは二つの器。お粥とスープだ。その匂いを嗅いで、ウォルは急にお腹が空いてきた。なんせ数日間何も食べていないのだ。ディースの作り出した術式であるベッドの力で栄養は補給せずとも万全の状態になっているが、やはり一度起きると現実に空いたお腹が鳴ってしまう。
「ありがと!」
ディースからお粥とスプーンを受け取って掻き込むように食べる。勢いよく食べ過ぎて咽せてしまうと、ディースが背中を摩ってゆっくりとスープを飲ませてくれた。
「大丈夫だ。ゆっくり食べなさい。」
その言葉に頷いて、一口づつ噛み締める様に食べる。それでも直ぐに一杯食べ終わってしまい、ウォルはディースにおかわりを要求した。
「もう一杯食べたい!」
「わかった、少し待っておけ。」
今度は米だけのお粥ではなく、小さく切ったお肉や野菜の入ったものを持って来てくれた。
「起きたばかりで食べ辛いかと思ったから具は入れなかったが、二杯目からは大丈夫そうだな。よく噛んで食べろよ。」
「うん。」
そう返事をして器を受け取る。温められているせいか、一杯目よりも強い香りが広がった。
ウォルが食べている間に、ディースとホールンさんはウォルが何に巻き込まれたのかを教えてくれた。
あの後“世界龍”が来て場を収めたこと。
ウォルのおかげで最初の衝撃波以外の負傷者がいなかったこと。
あの龍は【
そして『仙天楼の五龍』の面々がウォルにとても感謝していたこと。
ディースとホールンさんはその後現地で解析をし、『なぜウォルが足止めを行えたのか』を検証したらしい。その結果、ウォルが足止めを行えたのもいくつかの偶然が重なっていたことが分かった。
まず【
首都一帯にかけられた【
そしてウォルが龍をも抑える強力な術式を使えたこと。
図らずしてウォルは首都の未曾有の危機を防いだのだ。
もしウォルがいなければ、あの一帯は壊滅して死者は四桁に及び、救援に駆けつけた龍もその殆どが対処できずに詰むという結果が待っていた。
ただ状況を打破する力を持つ『仙天楼の五龍』や『
自分の行動が国を震撼させる出来事に深く関わっていたことにウォルはとても驚いた。それにあのような行動ができたことはいくつもの偶然が重なっていた事を知って反省する。どれか一つでもその偶然が欠けていたらウォルも他の龍の様に何もできずにいただろう。ただ虚勢を張って無様に死ぬだけだ。
これからは行動にも少し気をつけていこう、そう自答した。シェーズィンの時は唯の自然現象が相手だったので自分の術式でなんとかできる自信があった。だが今回は強大な龍力の前に自分の単なる希望と勇気だけで突っ込んでしまっただけなのだから。
食事の最後にスープを飲んで落ち着いていると、部屋を見回したウォルの視界に、隅に置かれた
「これ…もしかして!?」
「ああ、ウォルの正装ローブだ。」
薄い緑青色の布を重ねた厚い生地のローブ。足の方には動きやすいようにスリットが入っていて、手首の部分には飾りのベルトが入っている。中に着るシャツも同じ色合いの物で、襟が右側まで大きく周っている。留め具はシンプルな物にという希望通り、二つの金属を組み合わせた簡易的でスタイリッシュな物。
「後で試しに着てみるといい。それからこれだな。」
そう言って側にあったテーブルの上の小さな盆をホールンさんがウォルの近くに持ってきた。
その上にはスカーフやラペルピンがあって、キラキラと輝いている。
「それは?」
それを覗き込んで聞くウォル。
「今回の件だが、ウォルはこの国と国民の多くを救った。
そこで『仙天楼の五龍』から勲章を授与されることになったんだ。これはそのお祝い。
スカーフとピンは“世界龍”様から。」
「ルイン様から!?」
「それから…。我々の祝いは先の贈り物に重ねておいた。」
そう言って微笑むディースとホールンさん。
そう言われてウォルが自分の
それを意識するだけで格段に力が強化されているのが分かる。込められた神力もその量は数倍に膨れ上がっているのが見てとれた。
「こんなに色々…。ディース、ホールンさん、ありがとう!
ルイン様にもお礼を言わなきゃ。」
「いや、まだ終わりじゃないぞ?」
ディースがニヤリと笑っていう。
「まだあるの!?」
「むしろここからだな。」
そう言ってディースが小さな箱と何かを取り出し、ステアが水色の布を持って近寄る。
「まず、ベルトストラップは“原初”様からだ。」
ウォルに渡されたのは水滴の形をした金属。半分に折り畳んだ様な形状で、そこに細かい透かしの彫刻が施してある。
「これはどうやって使うの?」
今まで見たことも無い形に戸惑う。
「本来はベルトに付けて儀礼用の剣を提げるためのものだな。だが何も提げていなくても付けることができる。中には時計やなんかを提げる者もいるな。」
なるほど、ベルトをこの隙間に挟んで使うもののようだ。
「私からはこれ。もしよかったら使ってちょうだいな。」
ステアから水色の布を受け取りベッドの上で広げてみると、それはステアが纏っていた物と全く同じマントだった。その留め具や襟まで全く同じ。
それもそのはず。
「私の使っていた物なのだけど、ウォルの背丈に合わせて裾を切り詰めたの。」
「これステアの物なのにもらってもいいの!?」
「ええ、ぜひウォルに
「本当に!?ありがとうステア!」
まさかステアの使っていたマントが貰えるとは思っていなかった。持っているその手に直にその力が伝わってくる。長年ステアが使っていたことで、彼女の神力を始めとする力を吸収しているのだ。
「最後はこれだ。」
ディースから箱を受け取って恐る恐る開けてみると、柔らかな布に包まれたその中に片眼鏡が入っている。
「これ…ルイン様の!?」
ウォルにはそれがすぐに“世界龍”のつけている物と同じだということが分かった。
「ああ、これはウォルの『
“世界龍”様自らが創り出された、この世に三つと無い至宝だな。」
よくよく見てみるとレンズの周囲の金属や鎖にまで精巧な模様が彫られている。
ウォルが慎重につまみを持ってそれを目の近くに持っていくと、ある一定のところまで来てウォルの目の位置に間隔をとって固定された。
そう、その片眼鏡は浮いているのだ。付けている目の動きと眼窩の位置を認識して自動で適切な位置に微調整される。首を振ればその片眼鏡も一緒に動くのだ。
「話によるとさまざまな機能が付与されているらしい。
ウォルの好きなように使えと仰っていたぞ。」
「“世界龍”様が何かを下賜されるのは史上初めてですかねぇ。それもご自身がいつも身につけておられる片眼鏡とは。」
ホールンさんの言葉を聞けば、この片眼鏡がどれだけ凄まじい物なのかということが分かってしまう。
この“幻想龍”の
その存在そのものにも大きな意味があり、『仙天楼の五龍』から下賜された物という扱いになる。その贈り主の力や神性を持つことによって、他者からはっきりと元の持ち主が識別されるので、所持物を下賜されるほどの関係にあることが自ずと分かる。即ち、贈り主が所持者の直接の後ろ盾になっていることを意味する。
更に、これらを身につけることは『仙天楼の五龍』に認められた存在ということを示すだけでなく、その所持者に対する
竜人族や他の種族のようにその力を知覚できない場合でも、この国において五龍それぞれの専有色や専有形は常識のひとつ。その水色は“幻想龍”だけに許された色。片眼鏡の形状は“世界龍”と同一であり、ベルトストラップの逆さ雫は“原初”を表す『
そして言わずもがな、込められている力が桁違い。神域存在の発する神力を直接受け続けるために、神性を帯びるのだ。上位の神域存在が持つものであれば、
ウォルは片眼鏡のつまみを持って目からゆっくりと外す。徐々に力を込めれば、あるところでカクンと外れる。思った以上に軽い力で外すことができるようだ。
ウォルはそれを箱に戻し、蓋まで閉めてしまった。
もし落としたらと思うと日常で持ち運ぶ気になれない。
だがそんなウォルを見透かすようにディースが笑って言った。
「そこまで心配しなくてもいい。
その片眼鏡はもし落としたりしても傷はつかないだろうからな。
“世界龍”様の作となれば、破壊不可能かもしれん。」
「そんな強度あるの?」
「『仙天楼の五龍』を舐めちゃいかん。これでも中位の神域存在だからな。」
そう言ってディースは横に立っている
「これでもって何よ。」
突然のぞんざいな扱いに怒るステア。その勢いで軽くディースを小突いた。
「痛ぇ!」
わざとそう言って逃げるディース。ウォルとホールンさんはそれを見て笑顔になった。
「ルイン様と“原初”様にこのお礼を言えるのはいつになるかな…。」
「そうですねぇ、おそらく授与式の時になるでしょう。
まだ正式に発表されてはいませんが、ちょうどその時期が近づいて来ています。
ここ半年の勲章・称号受賞者が集められて執り行われるんですよ。その時になれば五龍は確実に集結しますから会うことができるでしょう。
また細かい公布が出たら教えることにしますね。」
「そうなんだ!ありがとう!」
ホールンさんの予想によると、この数日で公布が出て詳細な日程が決まるのだという。
ウォルはホールンさんのその一報を待つことになった。
その夜遅く、いや、朝早くと言ったほうがいいか。ウォルは眠れなかったので部屋で一人にしてもらい、贈り物の数々をいじったりとゆっくり過ごした。
『普通の
そうホールンさんも言っていたので、しばらくはこんな生活が続きそうだ。
ベッドの隣の小さな机、その上に乗っていた小さな箱に手を伸ばす。あの片眼鏡の箱だ。
再びそれを目のところに持っていく。同じようにそれがウォルの目と間隔をとって固定されたが、付けたところで何か変わるわけでは無い。
ディースが様々な機能があると言っていたので、何かしらの
ウォルは試しに自分の竜力を流してみる。やはりそれが一番だったようだ。
そのレンズが少し色づき、何やら文字が現れる。
〈所有者を変更 “世界龍”ルイン・ジュオクセン →
その文字が消えると、次にレンズには青い目盛りが現れた。一番外側に一周と、中央部に一周。中央部の方はウォルの視線に合わせて動いている。
右下の部分にだけ点のような目盛りが丸くなっている場所があるのに気づいた。そこに視線を移してしばらくしていると、その丸が広がって文字を映す。
〈制御変更 ・
・
・
・
・
・制御形態を追加 ○〉
なんとその丸い部分は操作盤だったようだ。目を動かしてみると、それに合わせて矢印が動く。
〈
するとレンズの目盛りが動き出し、ウォルが見ているその視界にある物に注釈が付きはじめたではないか。沢山のものに注がついているが、不思議とその視界は広いまま。それが邪魔にならない絶妙な文字のつき方だ。
そして
ウォルはその機能の凄さに思わず『おおー!』と声を出してしまう。
画面は先ほどの
試しにウォルは自分の腕についた
〈△ ・銀の
所持者:ウォル・ドラギア
製作者:ホールン・ドラグ
内容:保護、防御、通信、各種権限の行使〉
思った通り、それの解析結果が出る。更に内容の部分にも矢印が付く。その内容をもっと深く解析ができるようだ。
予想するに、“世界龍”の力で知り得る全ての情報を持って解析ができるのだろう。『それって全知全能!?』そう思って少し怖くなってしまった。
その怖さもあってこれ以上矢印を追っていくのはやめたが、ここまでこの
一つ前の画面に戻るには…っと、左上にある上向きの矢印を選択すれば良いようだ。
ウォルは制御変更の画面にも丸の選択部分があるのに気づいた。
そこを見て瞬きをしてみると、基本的な使用上の設定画面が現れた。かなり自由に使い勝手を調節できるようだ。
その中にウォルは〈選択様式〉という項目を見つけた。『視線・目弾』という方法の他に、『意識選択』というものがあるようだ。どのようなものか気になったので、ウォルは一度
〈意識選択 思考と連動して、矢印の移動と選択を行う。
中層意識をリンクさせ、読み取ることで可能としている。
その意識経路は強固な防御によって万全に守られる。〉
意識を自分の外にあるものとつなげるということは常時干渉に遭う危険を帯びているが、“世界龍”の守りなのだからその強さは計り知れない。
意識選択にしてみると、先ほどまでの手間が嘘のようになくなった。まずわざわざその一言づつに視線を向ける必要もないし、わざと瞬きをすることも無い。
ウォルがしっかりと選択したいと思った時に
ちなみに
上半身は起こせても、まだ立ち上がって歩くほどの体力や気力が無かったウォルは、目に見える物を端から解析してみたり、気になった言葉を更に深く調べたりと片眼鏡を操って時間を過ごした。
この部屋の本来の持ち主はというと、ウォルが起きたということでやっとその部屋から離れ、実務をこなすようになっていた。ちょうどその日は街の巡回ということで一日ディースが居なかったのだ。
目覚めてから数日が経つと、ウォルも自力で歩いたりすることができるようになってきた。少しづつリセットされた身体の感覚が戻って、寝込んでいた反動で身体が運動を欲している。
“死眼龍”の執務室群 ー その正式名称は片眼鏡の解析で知った。 ー を歩き回り、探検をして楽しむ。一番大きな扉の外に出てみると、大鎌を持った像がその先を行こうとするウォルを制止した。
「お待ち下さい。これより先は龍の同伴が無ければ進めません。
申し訳ありませんが、執務室内部でお過ごしください。我が主の
「分かりました。…
そのウォルの疑問符に像が弁明する。
「我ら配下はそのように認識しておりましたが…。もし心証が悪いようでしたら改めます。」
「ううん、それで良いわ。
邪魔をしてごめんなさい。ありがとう。」
「いえ、そのようなことは。ごゆっくりお過ごしください。」
ウォルが部屋の中に戻るとその像が扉を閉めてくれた。
そしてその次の日、ウォルがディースと共に朝食を食べていると、とうとうウォルの元へ公布された授与式の詳細がやってきた。
ホールンさんが持って来たのは詳細が書かれた大きな掲示紙と一つの封筒。
「これはウォル宛です。
本来魔術による転送や郵通局が届けるんですが、私に直接渡されましてね。」
ホールンさんが渡してくる封筒を見ると、エンデアの紋章の下に金字でウォルの名前が書かれている。
どこから封を開けるのかと考えたその時、封筒はウォルが触れた瞬間にかけられていた術式が解けてひとりでに封が破られた。ウォルの手に落ちた紙には日時、場所、そして授与する勲章や称号が記されている。
封筒に入っていた紙は二枚。一枚は見ていた授与内容だが、もう一枚には当日の詳細な動きなどが示されていた。
当日の服装は正装ローブ、
「宮殿前までは付き添うが、式中は我々も謁見場に
再確認だが、“銀角龍”も“死眼龍”もこの国では序列第一位と第二位の最高位龍。
このようにウォルは普通に話をしているが、一般人からすればあり得ないこと。その持つ力は常軌を逸し、その存在は国の守り神。直接話すことはともかく一言でも私的な会話をすれば一生自慢できるほどなのだ。
「うん、多分大丈夫。なんなら宮殿前まで着いて来てくれるだけで嬉しい。」
ウォルもそのことを思い出し、宮殿前まで付き添ってくれることに驚いた。
そして手元の二枚目の紙に読みを進める。
「この『青赤水・三龍鱗章』と『二環天楼章』っていうのは?」
「『青赤水・三龍鱗章』!?」
「『二環天楼章』ですと!?」
「そんなことがあるのか…。」
そう呟くディース。
「ねぇ、どういうこと?どういうこと!?」
更に押して聞いてみると、驚きもそのままにディースとホールンさんがその訳を答えてくれた。
「まず、『二環天楼章』は名誉勲章の最高位である『天楼章』のひとつ。
これは功績を残して国の発展存続に貢献した者に授与される。その環が多くなるほど格式が高く、最高は三環。ウォルは名誉勲章の中でも高位のものを授与されることになる。
だが…まあここまでは想定内。」
「いや、私は『天楼章』が同時に授与されることに驚きですがねぇ。
『青赤水・三龍鱗章』というのはこの国エンデアの最高位勲章『龍鱗章』。
『仙天楼の五龍』が直接その功績を高く評価し、『自らが被授与者を直接支援する』ということを表すものです。その前に付く数字と色はその勲章を与える龍によって変わります。ウォルの場合は“世界龍”様、“原初”様、そしてステアから授与されるということですね。
言わずもがな、その数が多いほど格が高くなります。『龍鱗章』を持つ者はただでさえ少ないのですが、そのほとんどが『一龍鱗章』。三龍から授与された例は過去二回しかありません。ウォルはこの国で最も高位の勲章保持者ということになりますね。
更にいえばその『龍鱗章』を持つ者は宮殿に自由に出入りし、龍と同等の発言力を持ちます。今回のウォルの行動がこの国としても重く受け止められ、高く評価されたということですね。」
ディースは『天楼章』と『一龍鱗章』、高くても『二龍鱗章』が授与されるだろうとの予想だったので、“原初”の色まで含まれた『三龍鱗章』に大幅な格上げがされたことに驚いた。
対してホールンさんは『三龍鱗章』程度が妥当だと思っていたのでその他にも授与される勲章があったことに驚いたのだ。
どちらの勲章もそれひとつで最大限の敬意を集める高位のもの。それが二つもウォルの胸で輝くことになるのだ。この
「そんな勲章なの!?これ!?」
急に大事になってしまった気がしてウォルは思わず叫んでしまった。
「そんな勲章です。これ。」
ホールンさんの大真面目な返答がその部屋に響いた。
この部屋にいる三人の予想通り、授与式ではウォルを中心に大きな渦が巻き起こることになる。
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