31.王子18歳・夏。ケロっと。

「くそ……っ! 勝てない!!」

「はぁ、はぁ……そうやすやすと勝たせませんよ。こっちもアリサ殿との結婚がかかってるんだ」

「なに?」


 あ、クレイグ様、言っちゃいました。

 あまり、オースティン様には知られたくなかったのですが。

 王子に詰め寄られたクレイグさんは、ケロッとしゃべっています。

 まぁ隠していても仕方ないのですけど。

 すべてを聞いたオースティン様が、私の方へと歩いてきました。


「アリサが三十歳になるまでだって?」

「……はい」

「聞いてない!!!!」


 オースティン様の怒りが、私の胸を引き裂くようで痛いです……。


「どちらにしろ、私が三十を越えれば陛下は結婚をお許しになりませんから」

「それは、そうだけど……!」


 王子は一瞬顔を歪めたけれど、すぐに私を向いて。


「絶対、二年以内に勝つから。覚悟しておいて」

「オースティン様……」

「アリサは、僕の嫁だから!!」


 あぁ、もう……。

 決心が揺らいでしまうから、やめてください……!!

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