30.王子18歳・春。果てない挑戦。

「はぁっ、はぁっ………!! くそ、また負けた!!」


 ガチャンと苛立たしげに模擬剣を投げつけるオースティン様。


「無駄な動きが多いですよ、殿下。だからすぐスタミナ切れを起こす」

「っく。走ってくる!」

「お気をつけてー」


走って行ったオースティン様を見送ると、クレイグ様が私の方にこられた。


「どうしたんですか、殿下は。最近、やたらと勝負を挑まれるんですけど」

「実は……」


 理由を話すと、クレイグ様は「ふむ」と顎に手を乗せて擦っています。


「それ、期限はあるんですか?」

「特に王子とは取り決めしていませんが、陛下は三十代になった女を王子の伴侶とは認めないと思います。だから、どうか私が三十歳になるまではクレイグ様に勝ち続けてほしいんです」

「あと二年か。アリサ殿が三十歳……俺は三十三だな」

「勝ち続けられますか?」

「問題ない。ただ、俺にも条件があります」


 条件?

 それを飲まなければ、わざと王子に負けるということでしょうか。それは困ります。


「なんでしょう?」

「アリサ殿が三十歳になるまで俺が勝ち続けることができれば、俺と結婚していただきたい」


 な、なんてことでしょう………!

 クレイグ様の社会の窓が、全開です!!

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