移動体

 5人は、ブリッジへ向かう。

 パイナップルエレベーターは、機能していた。

 ブリッジでエレベーターのドアが開いたとき、ブリッジは無人だった。

 確かに、航宙時ではないが、ブリッジが無人であることは、異常だ。

 

「スイートは、船内センサーで乗員を見つけてくれ、ビスケは保安要員と共に医療センターへ、私は航宙日誌を調べる」 


 乗員は、直ぐに見つかった。

 冷凍睡眠室で、全員避難している記録があった。

 大型のトレーラー船といえども、糖度7の速度で移動出来るこの船には、新たに見つかった遠くの星への運搬でもない限り、コールドスリープルームは、本来無用の設備のはずだ。

 しかし、たいていの航宙船には、設けられている部屋だ。


 航宙日誌を再生する。


 航宙日誌、お菓子歴 砂糖大さじ半分。

 記録シフォン・ケーキ化学主任。


 モンブラン帝国の最新艦、野菜畑タイプ、ニンジン号がコンペイトウに接近。

 高度なステルス機能を持つ、この戦艦に対して、当惑星の防衛設備では、なけなしの衛星兵器を打ち上げたが、苦戦必死だ。


 人々を大型のメロンシップ号に移動。

 コンペイトウ脱出の準備とお菓子組合への連絡を済ませる。


 最新型のアンアマイ号を送るはず。

 船長は、あのチーズ・カールだ。


 あの頃から、時間が経った。

 老けた私を見る彼の視線は、辛いものになるだろう。


 小規模ながら存在するコンペイトウ防衛軍の兵士の緊張感が伝わる。

 当然だ。

 今まで見向きもされなかった、ワタガシ星雲のこんな辺境の場所に、モンブラン艦が侵入してくるとは、考えていなかったのだ。

 しかし、せっかく打ち上げた、衛星兵器も使われる事はなかった。


 突然、モンブラン艦がステルス機能を失い、あらぬ方向にミサイルを撒き散らし始めた。

 数分後には、紙ヒコーキを引き裂く様に、消えてなくなった。

 軍情報員によると、派手な爆発しない事が不思議だという事だ。


 モンブラン艦の脅威からは、逃れられたが、その宙域からコンペイトウに近づく移動体を発見。

 センサーによると長さ1.5メートル直径1メートルの円筒だ。


 これが、こんな小さいものが、モンブラン艦を沈めたのか?


 メロンシロップ号は、お菓子屋さん組合管轄ではない。

 科学部最上位は、私と言う事になるので、この船の責任者は、私だ。


 星の人々の命が、最優先だ。

 第5惑星の衛星に、ショートワープする。

 隠れるには、最適だ。

 あの頃を思い出す。

 甘酸っぱいあの頃の思い出。


 しかし、あの頃は、有効だったかくれんぼも 移動体には通じなかった。

 ワープ後、移動体が、出現。

 攻撃を受けている。

 現在シールド全開だが、もってあと2発。


 航宙日誌は、ここで終わっている。

 船体には、何のダメージもない。

 どういうことだ?

 カール船長は、謎の答えを持たなかった。


「船長。とりあえずコールドスリープルームへ向かいましょう」


 カールは、ミスタースイートとパイナップルエレベーターに乗った。



 




 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る