第028話 使い魔

 水竜の居場所を聞いたクリエスはその日のうちに首都ネブラを発っていた。


 アーレスト王国でも問題となっている水竜が住む湖。カルロ湖は南西に抜ける街道沿いにあり、その街道は当然のことアーレスト王国にも繋がっている。


「さてと、水竜だってよ?」


 クリエスが悪霊たちに聞く。もちろん、クリエスでは手も足もでないからであり、悪霊の二人の意見を知りたく思って。


『トカゲ風情が水浴びとはの』

『ガッカリですわ。もしも、そこそこの竜種ならば私のアンデッド軍勢に加えて差し上げましたのに……』


 やはり二人は水竜を強敵と見做していない。

 水竜は歴としたドラゴンであり、リトルと付く小物ではないというのに。さながら二人は雑用に出かけているような態度である。


「一つ聞くが、水竜を瀕死寸前にまで追い込んで、俺がとどめを刺すなんて可能か?」


 クリエスはレベルアップしたいと考えている。もしも水竜を自分の手で倒したのなら、恐らくレベルは爆上がりするだろう。また彼女たちが瀕死の状態にしてくれたとすれば、不可能ではないように思える。


『無茶を言うな、婿殿。トカゲなのじゃぞ? 一撃で死んでしまうわい』

『そうですねぇ。でもまあ、手がないわけではありませんけれど……』


 イーサは無理だというのだが、ミアにはクリエスの作戦を成功に導く方法があるようだ。


「おお流石だな、ミア!」


『ぐぬぬ、この駄肉め。クソ弱い貴様ならばトカゲと同格なのじゃな……』

『違いますわ! 無論のこと敵ではありませんが、私には毒を使用するという方法があるのです』


 どうやら水竜を毒で弱らせるという作戦のよう。かといって、その方法は了承できないものである。


「毒は駄目だ。水場なんだぞ? どうせお前の毒は何年も浄化されない猛毒だろう? 湖が使えなくなってしまえば、それこそ王国と公国から責められるはずだ」


 毒の使用なんて絶対に許可できなかった。討伐したとして罪人とされる可能性があっては、その方法を選ぶことなどできない。


『まあ、周囲に生命どころか、草木すら自生しなくなりますね……』


 やっぱりかとクリエス。こうなるとレベルアップは不可能に感じる。彼女たちの助力無くして、討伐はなし得ないのだから。


「しゃーねぇ。さっさとぶっ殺してくれ。でも原型は残せよ? 討伐報告するのに遺体を持って帰るんだからな」


 クリエスの話に悪霊の二人はどうしてか目を合わせている。これには流石に嫌な予感しかしない。


「おい、まさかお前ら鱗一つ残さず倒すつもりだったのか?」


『婿殿は倒せるかどうかしか問うておらなんだじゃろ?』

「いやまあ、そうなんだが……」


 証拠がなければ証明は難しい。巨大な湖であり確認にはかなりの時間が必要となるはずだ。疑われる未来が容易に察せられていた。


『旦那様、時間がかかってもよろしいのでしたら、私が率いる軍勢の末席を召喚しますけれど?』


「いや待て、またドラゴンゾンビとかいうなよ? 元が古龍なら水竜は跡形もなく葬り去られてしまうだろ?」


 竜種の討伐依頼だというのに、話し合いの論点は討伐結果のみ。勝利は確定事項として、導かれる結果の状態だけが議題としてあるだけだ。


『最弱のグリゴリであれば互角かと……』


 グリゴリという名はクリエスも聞いたことがある。

 悪魔と呼ばれる謎の種族。常に一定の数しか存在しない彼らはその名を世界中が認識している。彼らは天使が下界に降り立ち、堕落したものだという伝説があった。


「お前は悪魔まで使役してやがるのか?」


『お恥ずかしながら。非常に弱かったのですが、妙に懐かれてしまいまして……』

「弱いはずがねぇだろうが? そいつは元々天使だったと教会で習ったぞ?」


『と言われましても……』

 やはり悪霊の二人は災禍である。悪魔を捕まえて弱いと言い放つなど、まるで底が見えない凶悪さであった。


「まあいい。そいつでいこう。討伐しなけりゃ始まらん。水竜の身体が残るのなら構わない」


 最弱のグリゴリ以外を喚び出せば存在ごと消失させてしまう。ここはグリゴリという悪魔に任せるしかないと思う。


 夜まで歩き続けたクリエスは、ようやくと水竜の住むカルロ湖へと到着していた。

 湖面を月明かりが照らしている。静まり返ったカルロ湖は神秘的というよりも不気味だと感じてしまう。


「さてと、どこにいるんだ?」

『婿殿、あそこじゃ!』


 イーサが指さす方向。激しく湖面が盛り上がっている。恐らく水竜は餌が近付いてきたと考えているのだろう。難なくクリエスたちは水竜を発見していた。


 即座に魔眼を実行する。王国と公国が問題視していながらも、対処できない魔物がどのようなステータスであるのかと。



【アクアドラゴン】

【種別】竜種

【属性】水

【レベル】138

【体力】291

【魔力】110

【戦闘】145

【知恵】99

【俊敏】101

【幸運】18

【説明】淡水を好む。アクアブレスは山をも吹き飛ばす水圧がある。



 意外にも詳しいデータが見て取れる。正直にレベルくらいしか判明しないと考えていたのに。


「マジか。弱点のマーカーまで見える……」


 リトルドラゴンと比べて弱点は少なかったものの、幾つかのマーカーがあり、首の根元にある一点は赤色で表示されていた。


「あれが逆鱗ってやつか?」


 大きな波を起こしながら、グングンと迫ってくるアクアドラゴン。近付くにつれて、その巨大さが露わになっていく。


「おい、大丈夫だろうな!?」

『お任せください!』


 今もまだ平然としている悪霊たち。クリエスはかなり動揺していたというのに、彼女たちを見ていると怯える自分が馬鹿らしく感じてしまう。


 やはり格が違うのかもしれない。魔眼による鑑定もその予想を肯定していたのだ。


「ミアとイーサは未だにレベルすら分からないんだよな……」


 彼女たちが取り乱さないわけは判然としている。それは絶対強者であることだ。

 間違っても既に死んでいるという理由ではない。何しろ依り代としたクリエスが消失したとすれば、魂を共有する彼女たちは強制的に天へと還る運命なのだ。

 彼女たちにはクリエスを生かす自信がある。尚且つ、討伐できると確信しているはずだ。


「ま、頼もしいといえば頼もしいな」


 現状は味方である。だからこそ力を借りるだけだ。両国の脅威となっているアクアドラゴンを討伐してもらうだけであった。


「ミア、頼むぞ?」

『お任せください! 出でよグリゴリ!』


 瞬時にミアが詠唱を始めた。すると即座に彼女の眼前には巨大な魔法陣が現れ、巨人族でも召喚したかのような影が浮かび上がっている。


 程なく現れたのはグリゴリという真っ黒な悪魔だ。人族の五倍ほどもある体躯は威圧感が半端ない。


「お久しゅうございます。ミア様……」


『グリゴリ、貴方は水竜とかいうトカゲと戦えまして? 無理だというのなら、他を召喚します』

「待ってくださいミア様! ミア様が望まれるならば、仮にサタン様であっても戦い抜く所存です!」


 本当に心酔しきっている感じだ。ミアは既に霊体であったというのに、グリゴリは生前と代わらず、彼女に使役されたままのよう。


『じゃあ、戦いなさい。できれば瀕死状態にし、クリエス様にとどめを刺してもらいます』

「ミア様、この男は誰でしょうか!?」


 どうやらややこしい事態に発展しそうな雰囲気だ。ミアに全てを捧げたかのような悪魔が素直に聞き入れるとは思えない。


『グリゴリ、死にたいの? この方は私の旦那様です。無礼な物言いをするのであれば、肉体だけでなく魂まで腐らせますよ?』


「ミア、やめろ。俺は別に何を言われようが構わない。グリゴリがアクアドラゴンを倒せるのなら、俺はそれで問題ないから……」


『しかし、旦那様!? 身の程を知らしめることも使役者の義務ですよ!?』

 ミアの返答にグリゴリは予想通りに呆然としている。旦那様と呼ばれたクリエスが赤の他人であるとは思えなかったことだろう。


「グリゴリ、俺はミアに取り憑かれているだけだ。触れることも出来ないんだぞ? だから、この超ドデカカボチャ級はまだ誰のものでもない」


 クリエスは推し量っていた。グリゴリの嗜好について。彼もまた自分と同類なのだと。


「クリエス殿、まことでしょうか!? 私はミア様のアレが……」

「それ以上言うな、グリゴリ。俺たちは同志だ。デカければデカいほど良い。登山家が高い山に挑むのと同じだ。お前もそうなんだろ?」


 刹那にクリエスとグリゴリの間に衝撃が走った。徐に二人は視線を合わせ、言葉を交わすことなく頷き合っている。


「クリエス殿も我が同志でしたか! ならば承知しました。貴方様のために、このグリゴリ一肌脱ぎましょうぞ!」


 どうしてかクリエスとグリゴリは通じ合っていた。超大双丘を愛する者同士。分かり合うのに時間などかからない。


「やっぱ巨乳好きに悪い奴はいねぇな……」

「ハハハ、ごもっともです!」


 話しているうちに、アクアドラゴンは直ぐ目の前まで来ていた。ドラゴンというよりも蛇に近い形状。大木のような身体を湖面から突き出している。


「クリエス殿、あの蛇が我らの敵なのですね?」

「ああそうだ。出来れば死ぬ寸前で止めてくれ。俺がとどめを刺したい」


「承知いたしました。大いなる連山を崇める義兄弟の契りとして、かの魔物を捧げましょう!」


 男前に語ったグリゴリは呪文を詠唱し始める。耳をつんざく咆吼をあげるアクアドラゴンに臆することなく。

 クリエスは割と緊張していたけれど、ミアもイーサも平然としたままだ。それよりも彼女たちの興味はグリゴリがどこまでやれるのかということだけであった。


「ライトニングボルトォォッ!!」


 ここでグリゴリの魔法が炸裂。雷属性は全てが上級魔法に区分されるというのに、彼は事もなげに発動している。流石は悪魔だと言わざるを得ない。


 一瞬のあと、おびただしい数の稲妻が迸り、アクアドラゴンを中心として雷が延々と落ち続けていく。どうやらライトニングボルトは単体魔法ではなく、範囲攻撃であるらしい。


「マジか……?」

 最弱と呼ばれたグリゴリの魔法はクリエスの度肝を抜いている。正直に一撃なんじゃないかと思えるほどの威力。アクアドラゴンの弱点である雷属性魔法は致命傷を与えたと考えて差し支えないと思えるものだ。


 しかしながら、再び大きく咆吼するアクアドラゴン。この辺りは流石に竜種であった。強大な雷属性魔法を何発もその身に受けたというのに、まだ体力値を残しているらしい。


「おい、グリゴリ!?」

「クリエス殿、ご安心くだされ。必ずや仕留めますゆえ……」


 明確に悪魔なのだが、思わず惚れそうになってしまう。あまりに男らしい彼の姿はクレリックという神に仕える立場を忘れそうになるほど格好良く見えた。


「頼むぞ、グリゴリ!」


 既に第二射の詠唱をグリゴリは始めている。次なる魔法は何なのか。クリエスは手に汗を握りながらグリゴリの戦いを見つめていた。


「ハイスピアサンダァァッ!!」


 再び雷属性魔法。今度は明らかに単体攻撃である。強大な雷槍が閃光を伴いながら、天より地上へと突き刺さった。避ける隙すら与えず、それはアクアドラゴンの頭部を貫いている。


「やった!?」


 もう既にクリエスは自分がとどめを刺すことなんて忘れている。同志の勝利を純粋に期待していた。

 一方で、二度の雷属性魔法を浴びたアクアドラゴンは大きく頭をもたげたかとおもえば、湖畔にその巨体を横たえていく。


「クリエス殿、早くとどめを!」


 言われて気付く。どうやらアクアドラゴンはまだ絶命していないらしい。強大な雷撃を脳天に喰らって失神しているだけのようだ。


 地鳴りと共に倒れ込んだアクアドラゴンに向かって、クリエスは迷わず駆け出していた。同志のお膳立てを無駄にしてはならない。巨乳好きの兄として、クリエスはグリゴリの期待に応えねばならなかった。


「クソがぁぁっ!」


 気絶しているのだからと力一杯に剣を振り下ろす。けれども、金属でも叩いたかのような音がして、ミスリル製の長剣はいとも容易く弾かれてしまう。


「ちくしょう!!」


 更なる一撃を加える。今度は竜種の弱点という逆鱗を狙う。動かない今であれば簡単に攻撃できるだろうと。


 首の根元にある逆さに生えた鱗。赤くマーキングされたそこは竜種の身体で一番柔い部位に他ならない。


「いけぇぇえええっ!!」


 柔いと言っても他と比べてである。元々がレベル100超えの魔物なのだ。クリエスの剣は鱗すら砕けない。アクアドラゴンは完全に伸びていたというのに。


『婿殿、魔力放出するのじゃ!』

『旦那様、サポートいたします!』


 不意に悪霊二人が声をかけた。しかし、クリエスは剣に魔力を流す方法を知らない。剣術を習っていた冒険者だって、そんな話は少しですら口にしていなかった。


 刹那のこと。腹部に尋常ではない魔力を感じたかと思えば、それは溢れ出すようにして腕から手の平へと流れ込む。


「おい! 腕が破裂すんぞ!?」


『手の平から放出するのじゃ! 魔法と同じじゃて!』


 イーサの言葉に納得する。神聖魔法も腹の底から魔力を練り、腕から手の平へと集めるのだ。上級魔法であれば同じように手の平で魔力を圧縮する。


 再びクリエスはアクアドラゴンを睨み付けた。こうしている間にも魔力が注ぎ込まれていく。指先から血が流れ出すほどであり、いまにも爆発しそうな感じだった。


「いいぜ、やってやんよ。しかし、お前ら……」


 超大魔法をも唱えられそうな魔力が手の平にある。もしも、これが爆発したとき自分がどうなってしまうのか。指どころか腕が飛び散ったとしても驚きはしないだろう。


「加減ってもんを覚えろよなぁっ!!」


 再びクリエスは駆け出していた。今度は目一杯の魔力を放出しながら。


 逆鱗を狙った全身全霊の一撃。切っ先よりも目を見張るのは視認できるほどの魔力波であった。ドス黒い光線にも似たそれは、申し訳程度の煌めきを纏いながら、逆鱗へと放出されていく。


「貫けぇぇえええぇぇっ!」


 手応えはない。さりとて長剣は抵抗なく根元まで突き刺さっていた。

 魔力を宿したミスリルの剣は目的を達し、逆鱗を貫いている。


「いつまで魔力を垂れ流してんだよ!?」


 今もまだ濃密な魔力が供給され、剣へと伝達されていた。クリエスはただ突き刺さった愛剣を握るだけである。


 一瞬のあと変化が起きた。かといってクリエスにではない。長剣が突き刺さったアクアドラゴンの向こう側に、どうしてか魔力波が見えたのだ。


「貫通した!?」


 供給され続ける膨大な魔力は遂にアクアドラゴンを貫いて、向こう側へと放出されてしまったようだ。


「おい、もうやめろ! 充分だろ!?」


 クリエスの要請にようやくと魔力供給が停止される。何とか腕も指も無事であったけれど、無事ではないものも存在していた。


「嘘……だよな……?」


 確かにアクアドラゴンの首元に剣を突き立てた。けれど、それ以上のことはしていない。だが、アクアドラゴンの太い首は綺麗に切断されていたのだ。


『ふむ、やはりトカゲじゃの?』

『お見事です、旦那様!』


 呆気に取られたクリエスだが、ここで我に返る。さりとて悪霊の声かけによってではない。嵐かと感じるような突風がクリエスへと向かってきたからだ。


 思わず身体を屈めるクリエス。しかしながら、浴びた強風はその全てが体内へと流れ込むような感覚である。リトルドラゴンの討伐時にも覚えたあの体験を彷彿とさせていた。


『レベル129になりました――――』


 ゴクリと唾を呑み込む。どうにも信じられないでいた。レベルが一度に100も上がってしまうなんてと。


「クリエス殿、おめでとうございます!」


 そういえばまだ召喚されたグリゴリがいたのだ。既に彼はクリエスの同志。その声に悪意など込められていなかった。


「サンキューな。お前がいたから倒せたんだ」

「いえいえ、滅相もない! ところで、お隣にいらっしゃる銀髪の女性は……?」


 ミアは金髪であるから、銀髪といえばイーサに違いない。悪魔という霊的な存在に近いグリゴリには使役者ではないイーサが見えているのだろう。


「ああ、こいつはイーサだ。俺に取り憑いているもう一体の悪霊だな」

「おお、イーサ様! 私めはグリゴリ。以後お見知り置きを……」


 頭を下げるグリゴリだが、視線は胸に釘付けである。何とも欲望に正直なところは悪魔らしいといえる。イーサのギガメロン級をグリゴリは凝視していた。


『良きにはからえなのじゃ! 駄肉の使いにしては礼儀を弁えておるではないか?』


『無き者に頭を下げるのではありません! 腐肉にしてやりますよ!?』


 二人の遣り取りに困惑したのか、グリゴリはクリエスへと視線を向けた。


「この二人は仲があまり良くなくてな。千年前にミアを殺したのがイーサなんだ……」

「何と!? ミア様を殺めるような存在でしたか!?」


『不意打ちを受けただけです! 鵜呑みにするのではありません!』


 ミアは当時を思い出したのか、キィィっという奇声を上げていた。

 千年前など想像もできないクリエスなのだが、結果的にミアが失われたことは世界にとって好都合だったと改めて思う。何しろ彼女は最弱の使い魔をして竜種を圧倒してしまうのだから。


「ミア様、どうか私の使役を解いてくださいませんか?」


 どうしてかグリゴリはそんなことを口にする。死後も仕え続けたミアに使役を解いてくれという話を。


「私は改めてクリエス様に使役されとうございます。彼は心の友。力及ばぬ私ですが、影ながらお守りしたいのです」


 クリエスはグリゴリの心情を推し測っていた。

 礼儀正しくとも彼は悪魔だ。自身に利益のない行動はしないはずだと。単にイーサの巨乳が気になってしまい、中立の立場を手に入れたかっただけであろう。


『それは良い心がけです。旦那様に尽くしなさい』

「ちょっと待て! 俺は承諾してねぇぞ!」


 堪らずクリエスが声を張る。悪霊二体に取り憑かれただけでなく、悪魔を使役するなどクレリックとしてあり得ない。


 クリエスが拒否したからか、透かさずグリゴリは耳打ちをする。彼はクリエスを納得させる特技でも持っているのかもしれない。


「クリエス様、私の部下にパリカという女悪魔がおります。テラキャベツ級の持ち主で彼氏募集中だとか……」


 不機嫌そうに聞いていたクリエスの目がカッと見開く。聞く耳を持たない表情は瞬間的に消え失せていた。


「グリゴリ、一つ聞くが可愛いのか? 俺は痩せ巨乳がタイプなんだぞ?」

「容姿は悪魔界きっての美貌。スタイルもボンキューボンでございますよ?」


 ヒソヒソと男二人の密談が続く。しかし、それは長く続かなかった。

 ミアの前へと歩むクリエスは大きな声で宣言している。


「今よりグリゴリを我が使い魔とする!――――」

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