第百五十五話 三つの力

「なんでここに!?」


 フィーは風のごとく音もなく飛んだかと思うと、俺の頭上で人間化した。



「!?」



 真珠色の髪を靡かせ、空からフィーが降って来る!?



「リュシュ!!」



 慌てて狙いを定め抱き留める。



「フィー!! 危ないじゃないか!! いや、それよりもなんで来た!? 来ちゃ駄目だって言ったじゃないか!!」


「フェイたちから状況を聞いて、黙って待っていられるわけがないじゃないか」


「…………」



 フィーもカカニアまで来ていたということか。ヤグワル団長たちに救援を頼んだとき、フィーにも聞かれたんだな。



「よくマクイニスさんが許したね」


「いや、許してはなかったがな。なにやら叫んでいたが無視をしてここまで来た」


「ブッ。アハハ」



 思わず笑ってしまった。マクイニスさん、めちゃくちゃ怒ってるだろうなぁ。顔を想像しておかしくなってしまった。


 こんなときなのに笑顔になってしまう。

 フィーに会えて嬉しくなってしまった。


 あぁ、やはり俺はフィーが好きだ。



 でも今はそれどころじゃないんだよ。皆が必死に攻撃を繋いでくれている。これをなんとかしないと!


「フィー! 今はゆっくりしていられない!! アルギュロス!! もう一度……」


「私の力も使え」


「え!?」


 アルギュロスに振り返り、再び力を頼もうとしたとき、フィーがそう言葉にした。


「私の力!? フィーの力!? どういうことだ!?」


「今や、おそらく私の力だけでももう奴を止めることは出来ないだろう。だが、リュシュに私の力を合わせれば……」


「白と黒…………それに精霊の力を……?そんなこと可能なのか…………」


「分からない。だが、もうそれしかない。私はリュシュを信じるよ」


「…………」


『面白い。私もそれに乗ってやろうじゃないか』


 アルギュロスは面白がるように笑みを浮かべた。


「いやちょっと、面白いとか言われても……」


『お前がどうなるかは知ったことではないがな』


「いやいやいや、ちょっとそれどうなのよ」


『悩んでいる暇はないのではないか?他の者たちはもう魔力切れを起こしそうだぞ?』


「!!」


 そう言われ周りを見回すと、皆すでに疲弊していた。ずっと魔法を撃ち込んでいるのだ。そんな状態を続ければ魔力切れも早いはず。

 まずい!! アルギュロスの言う通りだ! 悩んでいる場合じゃない!!



「リュシュ!! やれ!!」


 ヒューイが叫んだ!!


 ヴィリーとロドルガさんも頷いた。


「私たちは何があってもリュシュを信じる!!」


 フィーもアルギュロスも真っ直ぐに俺を見詰める。



 フェイ、アンニーナ、ネヴィル、ヤグワル団長、竜騎士の皆!!



「フィー!! アルギュロス!! 二人の力を俺に!!」



 叫んだと同時に二人が俺の肩を掴む。右の肩にはアルギュロスが。左の肩にはフィーが。それぞれ俺の中に魔力を送る!!



「ぐはっ!!」


 強力なフィーの魔力、そしてアルギュロスの精霊王の力が俺のなかを駆け巡る!! 激しく暴れ回る力!!


「リュシュ!!」


「大丈夫!! 続けて!!」


 フィーが心配そうに俺を覗き込む。

 これくらい耐えてやる!! フィーの力もアルギュロスの力も悪じゃない!! 二人の力は聖なる力だ!! それが悪いもののはずがないんだ!! きっと俺の身体にも馴染むはずだ!!


 必死に信じた。脂汗が流れる。身体のなかで暴れ回る力と、俺の魔力がそれを抑えようと必死に動き回る。


 頭が割れそうに痛い。

 鼓動が耳に煩い。

 息苦しい。


 俺は……俺は……絶対にものにしてやる!! フィーとアルギュロスを信じろ!!



「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」



 激しく暴れ回る力が俺の身体全体から溢れ出す!!


 白い魔力、黒い魔力、そして精霊の魔力が様々な色となって俺の身体に纏う。


 手が震える。

 脚も震える。


 しかしそれは恐怖ではない。


 溢れ出した力を抑えようと必死に身体が耐えているんだ!!


 このまま…………このまま掌に魔力を…………

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