第百五十六話 決着
必死にコントロールし掌に魔力を集める!! 掌に強大な魔力の塊が出来上がった!!
その瞬間、俺の鼓動は収まり、頭痛も収まった。
やけに静かだ……。
まるで音がなくなったかのように静かだ……。
目の前では皆が必死に戦っている。音もなくその姿を眺める。
なんだろう、こんなに大変な状況なのに、今の気分はやけに落ち着いている。
音もなく風も感じない。ただ、目の前にある魔力を感じるだけ。
フィーとアルギュロス、そして俺の魔力。
混ざり合い、もはや誰のものとも分からない不思議な魔力を感じる。
不思議な感覚だが、不安も恐れもない。ただ、温かい……。
魔力に温かさなど感じたことはない。それなのになぜか不思議と温かさを感じる気がする。
守られているような、優しい魔力。
不思議な色の魔力。白でも黒でもない。青かと思えば赤くもなる。黄色くなったかと思うと緑にも見える。
不思議だ……。
真っ直ぐにシルヴィウスを見詰める。
全ての元凶であるあの術を今止めてやる。
シルヴィウス、今、お前も解放してやるから。
掌をシルヴィウスに向けた。
「皆!!!! 離れて!!!!」
叫んだと同時に一気に音も風も戻って来た!
皆、俺の叫びを聞くと、攻撃の手を止めシルヴィウスから離れる。シルヴィウスは悶えながらもいまだ暴れ回る。
俺の掌に今まで見たことも感じたこともない魔力があったからか、シルヴィウスは俺に気付きこちらに走り出した!
もうすでに身体のあちこちが崩れかけ、まともに立っていることも出来ないだろうに、シルヴィウスは狂ったように突進してくる! そして唸り声を上げながら大きく腕を振り上げた。
「ウガァァァァアアアアア!!!!」
今までずっと攻撃を受けボロボロになったとは思えないほどの速度で俺に詰め寄ったシルヴィウスは振り上げた腕を一気に振り下ろす!!
「シルヴィウス!!!! お前を助けたい!!!!」
そう叫んだ俺は掌に集まった全ての魔力をさらに一層巨大化しシルヴィウスに向かって投げつけた!!
凄まじい魔力の塊は俺の手を離れたと同時に大きく広がり、ぐんぐんと巨大化していったかと思うとシルヴィウスを飲み込んだ!!
「ギャァァァァァアアアアアア!!!!」
シルヴィウスは激しく暴れ回り悲鳴を上げる!!
断末魔のような悲鳴を上げながら、シルヴィウスの膨れ上がった身体は俺たちの魔力を受け動きを止めた。
そして、徐々に崩れて行く!!
「ウガァァァァアアアアア!!!!」
シルヴィウスは魔力の塊から逃れようと暴れ回るが、しかし逃れることが出来ないどころか、動き回るたびに身体はどんどんと崩れ落ちて行く!!
崩れた身体は粉のように舞い、さらさらと消えて行く。
「あ、兄上……」
横に立ち尽くしたヴィリー。呆然とその光景を見詰め呟いた。
暴れ回るシルヴィウスの身体はボロボロと崩れ落ち、そして最後には小さくなった元のシルヴィウスの姿が……。
「兄上!!」
ヴィリーが駆け寄ろうとしたとき、シルヴィウス自身の身体もボロボロと崩れ始め、そして…………
「!!」
元の姿に戻っていたシルヴィウスはそのまま崩れ落ち、光り輝く粒となり、輝く魔力と共に消え去った…………
「兄上!!!!」
ヴィリーはシルヴィウスがいた場所に駆け寄り蹲った。地面に蹲り嘆く。
「あぁぁあ!!!!」
シルヴィウスはこの世から跡形もなく消え去り、瓦礫が散乱するその場所で、ヴィリーの嗚咽だけが響き渡った……。
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