第八十四話 過去の育成係メンバー
「名前はレグア。昔ここの育成係にいた、ということくらいしか俺もよく知らんからログウェルか団長に聞いたほうが分かるかもな」
「そうなんですね、じゃあとりあえずログウェルさんに…………、あの……」
ディアンは生気が戻ったかのように生き生きとし出したが、ふと我に返ったかのようにロキさんを見た。
「なんだ?」
「その竜の身体を保存しておいては駄目ですか?」
「保存?」
「はい……そのレグアさんに話を聞けるまで……そこでなにか分かればもう一度調べられないかと……」
「…………」
死んでしまった身体をそのままに置いておくなんて可哀想な気もする。きっとロキさんも似たようなことを考えているんじゃないかな。
ロキさんは眉間に皺を寄せ考え込んでしまった。
「原因を突き止めるために……野生の卵も孵化させてやるために! …………駄目ですか?」
ディアンも真面目な顔だった。ディアンの気持ちも分かる。野生の卵を孵化させてやりたい、その一心だ。
ロキさんは眉間に皺を寄せたまま溜め息を吐いた。
「三日だけだ、三日経てば埋葬する」
「!! ありがとうございます!!」
ディアンは嬉しそうだった。ロキさんは複雑そうだったが、ディアンの真剣な想いも分かったのだろう。譲歩した結果の三日、ということなんだろうな。
竜の小さな身体は箱に入れられ、その周りを魔導具で保冷された。これならば三日くらいは腐敗せずに済むらしい。
「ごめんな、お前が死んだ原因だけ探らせてくれ」
ディアンは箱のなかの竜をそっと撫でた。
そして決意を固めた顔で部屋を後にした。
ディアンはまずログウェルさんに話を聞きに行ったようだ。
ちなみに俺はそのまま仕事の続きをしていたため、一緒には行けなかった。夕方になり、仕事が終わると寮に帰るまえにディアンから話を聞いた。
ログウェルさんに話を聞くと確かに昔、レグアという竜人が育成係にいたらしい。しかしログウェルさんもロキさんと同様にレグアさん自身と面識があるでもなく、噂でしか知らないそうだ。
それならばヤグワル団長に聞きに行ってみるか、と寮に帰るまえにヤグワル団長を探した。
竜騎士たちを見付けてヤグワル団長の行方を聞くと、控えの間で食事をしているのではないか、と聞き、控えの間へと向かう。
しかし控えの間を一通り見回しても姿はない。
「いないな、どこ行ったんだ?」
控えの間にいる竜騎士に聞いてみると、なにやら急用らしく慌ててどこかへと向かったそうだ。
「えぇ、どこにいるんだよ、団長」
「うーん、とりあえずいそうな場所をしらみつぶしで探してみるしかないな」
こんなときフェイたちがいたらな、とディアンと苦笑する。みんながいれば手分けして探せば早そうなのに!
あちこち城のなかを散々歩き回り探していると、普段俺たちは立ち入り禁止になっている王の間へと続く通路で意外な組み合わせでヤグワル団長を発見した。
「お、リュシュを連れて来てくれたのか、ディアン」
目ざとくこちらに気付いたのはシーナさんだった。
シーナさんとヤグワル団長は真剣な顔をして話しているかと思うと、こちらの存在に気付きにこやかな表情に変わった。
シーナさんはスススッと俺に近付き、相変わらず身体を撫で回す。い、いやいやいや! ちょっと!! やめてー!!
「ハハ、リュシュを連れて来たわけではないです。ヤグワル団長にちょっとお聞きしたいことが」
「ん? 俺か? なんだ?」
ヤグワル団長は予想していなかったようで、驚いた顔になった。
シーナさんは俺の背後にビタッ……アハハ……勘弁してくれ。
「あの、ヤグワル団長はレグアさんて方をご存知ですか? 昔育成係にいたそうなのですが」
「ん? レグア? ……あぁ、いたな、そんなやつ」
「ご存知なんですね!! どこにいるかご存知ないですか!?」
「レグアの居場所か?」
何を聞きたいのか分からないといった顔のヤグワル団長に、ディアンは事の経緯を話した。
ヤグワル団長も野生の卵が孵化しなかったことを聞くと少しだけ表情を変えた。
そしてふむ、と顎に手を当て、思い出すかのように考え込んだ。
「ちょっと待て…………えっとだな……、確か……あいつは……えーっと……」
かなり思い出すのに苦労しているな……相当昔なのか?
「あぁ! 思い出したぞ、レグアは王都の飲み屋で働く人間の女を好きになってな、その女のあとを追って辞めていきやがった」
「「えぇ……」」
な、なんというか……理由が微妙だった……。もっとなにか重い話が出てくるのかと思ったら……めちゃ軽い話だった。
「確か王都で飲み屋をやってたはずだぞ。今もまだやっているならだが」
「「!!」」
ディアンと顔を見合わせた。ディアンはヤグワル団長に向き直り聞いた。
「その場所を教えてください!」
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