第六十話 魔導具師手記
《魔導具師手記》
五百年ほど昔、竜たちがナザンヴィアの支配から逃れ、ドラヴァルアという一つの国として独立した。
ナザンヴィアの支配者たちは処刑され、残ったナザンヴィアの人間たちは国を縮小し、新たな王を立て国とした。元々竜たちに友好的だったものはドラヴァルアに残ることが許され、そのままドラヴァルアに住み着くことになる。それが今のドラヴァルアの人間たちの祖であった。
元々魔力を持たない人間たちがあるときからなぜか精霊の力を借りずとも魔法が使えることになっていたことに気付く。
魔法が使えた人間たちの祖を辿って行くと、どうやら竜人と交わったものたちだということが分かった。所謂婚姻関係であるということ。
竜人と交わったものたちは自身で魔力を放出することが出来た。それはなぜなのか。
さらにそれを調べるために竜人、もしくは竜を調べた。竜は自身で魔力を放出することが出来る。それはどういうことなのか。
竜人に協力してもらい色々と実験を行ったり、話を聞いたりしているうちに、どうやら竜たちは腹の奥になにやら魔力の源を持っているようだ、と結論付けた。
「「魔力の源!!」」
ディアンと顔を見合わせた。さらに続きを読んでいく。
《魔導具師手記》
その魔力の源を《コア》と名付けることにした。
竜たちは腹の奥底のコアに魔力が溜まっていて、それを
竜人となろうともそのコアは失われることなく身体にあるのだという。こうやって研究をするようになって竜たちも初めて気が付いたそうだ。
そうして竜人もコアを持ったまま、人間と
人間たちは竜とは違った《気》を持っていることも分かり《
竜人と番い子を成した人間が増え、その子供たちがさらに竜人やコアを持つ人間と番い、そうやってコアを持つ人間が徐々に増えていき、現在には生まれた子供は必ず魔力を持つ人間ばかりとなった。
なぜ自分が魔力を持っているのか、などは疑問に思うものもいなくなり、当たり前なものとして魔法は身近なものへとなっていった。
「な、なんだよそれ! じゃあ俺は!? なんで俺は魔力がないわけ!? この話が本当なら俺も魔力がないとおかしいじゃないか!! なんでだよ!!」
「リュシュ、落ち着け……」
ディアンに背中を軽くポンと叩かれ、仕方なく大人しく椅子に座った。
「なんで俺は魔力がないんだ? みんなコアを持っているんだろ? ラナカもあるのになんで俺だけ……」
同じ家族なのになんで俺だけ……。やはり打ちのめされただけだった……。
「リュシュ、だからといってまだリュシュの魔力がないとは決めつけなくて良いんじゃないか?」
「なんでさ、コアがない俺には魔力はないんじゃないか」
「コアがないわけではないかもしれないじゃないか」
「コアがないわけじゃない?」
「うん、やはりシーナさんの言う通り、ただ上手く魔力をコントロール出来てないだけかもしれない」
「?」
ディアンの言い分はこうだ。
この国の人間はコアがあるのが当たり前。さらには姉のラナカは魔力を持っているのだから、俺自身もコアや
そしてコアや人気は持っていて、魔力もあるのに何らかの理由で魔力をコントロールする術、人気に魔力を乗せる術が備わらなかった。だから魔法が使えないのだ、という。
「そっちのほうが説得力ないか?」
「た、確かに……」
言われて冷静に考えてみると確かにそれが妥当な気がするな。
「ありがと、ディアン。なんか落ち着けたよ」
「ハハ、良かった。まあリュシュの魔力が本当にあるかは結局分からないし、やっぱりなんとか自分の魔力を感じる訓練をするのが妥当か?」
「結局シーナさんが言ってたやつか……ハハ」
「だな」
「あれなぁ、一度試したんだけど、やっぱり感じなかったんだよな……」
「そうなのか?」
「うん、なんか微かに感じたような気はしたんだけど、すぐ分からなくなっちゃって。あ、これ、シーナさんには言わないでくれよ? 変にまた研究対象だとか言われたらめんどくさいし」
「あー、ハハハ、分かった」
お互い苦笑しながら、もう少しだけと、他の本にも目を通し、特に役に立ちそうな情報もないため、特別書庫をあとにした。
図書館を出たときにはすでにすっかり辺りは暗くなっていた。
「はぁぁあ、疲れたな」
「あぁ、でも今日は良い収穫があったよ、魔力について知ることが出来た。ありがとな、リュシュ、付き合ってくれて」
「あぁ、うん、俺も魔力については知れて良かったよ。また自分の魔力を感じる訓練続けてみるわ」
「おぉ、頑張れ」
「うん、ありがと」
そのままディアンと寮の食堂で一緒に夕食を食べ別れたのだった。
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