第十四話 戦う方法
朝食を終え、再び中庭に俺たち三人は集まった。ちなみにキーアは空を気持ち良さげに飛んでいます。
「まずはリュシュ、剣はどんなものを使うんだ?」
アンニーナは朝練のときにも使っていた細身の長剣を持っている。俺のは……。
「俺は短剣だ」
「「短剣?」」
ディアンとアンニーナが驚いた顔でハモった。うん、気持ちは分かる。俺も二人の立場なら同じ顔をするよ。
「なんで短剣なの?」
「あー、ちょっとアンニーナの剣、貸してくれる?」
「え?」
百聞は一見に如かず。見てもらうほうが早いだろ。情けないけど……。
アンニーナは怪訝な顔付きのまま俺に剣を渡した。
アンニーナの剣を持ち、二人から離れるとそれを大きく振りかぶり、一応十年のときを経て覚えた型を披露する。
アンニーナの剣は女性でも扱いやすいよう細身になってはいるが、やはり長剣。重さはそこそこある。案の定、剣に振り回され、俺の剣技はあったもんじゃない。
剣の重みのまま引っ張られよろける。必死にそれを支えようと踏ん張るが、次の剣先がぶれまくる。駄目だな、やっぱり……。分かっちゃいたが、情けないなぁ……。
「「…………」」
二人は呆然とそれを眺めている。居たたまれない気分になるが、こんなこと隠したところでなんの得にもならないしな。
肩で息をしながら、アンニーナに剣を返した。
「は、はい、アンニーナ。剣、ありがとう」
「あ、え、えぇ、どう……いたしまして」
「ハハ、見て分かったろ? 俺、力も体力もないんだ」
「え、あー……」
ディアンはなんて声を掛けたら良いのか分からない、といった顔だ。
ま、そうなるよな。
「俺さ、なんでだか子供のころからずっとこんななんだ。力も体力もないし、身体能力も低いし、魔法も使えない……」
「「えっ!! 魔法も!?」」
「うん」
「え!! それでどうやって竜騎士に……」
「アンニーナ!!」
ディアンがアンニーナの言葉を止めた
「あ、ご、ごめん」
「ハハ、良いよ。これが俺だから。ずっとこうなんだ。どれだけ訓練しても強くはなれなかったし、魔法も使えなかった。でも……竜騎士になりたいんだ」
「リュシュ……」
明らかな同情の目を向ける二人。そうなるのは分かってはいたが、やはり居たたまれないな。
「でも弱っちい俺でもそれなりに戦える方法を考えたんだ。試験にはそれで挑もうかと思ってる」
「ど、どうやって?」
アンニーナが同情の目をしながら聞く。
「俺は短剣で戦う」
カカニアにいたころ、必死になって訓練し、ラナカと相談しつつ生み出した俺の戦い方。
俺はどうやっても長剣は扱えない。ならば扱いやすい短剣かもしくは細身の片手剣しかないだろう、ということで落ち着いた。
現在持ち歩いているのは短剣だ。
しかし短剣だと相手に一撃を与えるためには、かなり接近しないとダメージを与えられない。そのためには相手に近付くしかない。そして相手の隙を突くしかなかった。
剣においての戦い方、まあ打撃攻撃でも似たようなものだろうが、戦いの型がある。剣を振るう動作の型。上段から振り下ろした場合、そのまま動作を流すとしたら下段から上段に向かって振り上げる型になるのは必然だ。
その次の動作に移る瞬間、人は少しの溜めがいる。その隙を突くのだ。
瞬時の判断力、その隙を突くための瞬発力。それらは必要不可欠。だから少しでも軽い短剣が最適だろうという判断となった。
その隙を突くための訓練をラナカと続けたが、瞬時の判断力は慣れるに従って頭も回転するようになっていった。だが、瞬発力。これはやはり俺には難しかった。それでもなんとか必死に訓練し、それなりに瞬発力も身についたと思う。それでもラナカに勝てたのは十回に一度くらいだけだった。
それでも全く勝てなかったころに比べたらだいぶと進歩したんだけどね。
「そしてもう一つ……」
俺は懐から一つの小さな刃物を取り出した。
「「? これは?」」
ディアンもアンニーナも見たことがないといった顔。
そりゃそうだろう、これは俺がこの世界で特別に作ってもらったものだから。
日本人だったときの記憶を頼りにアレンジを加え作ってもらったもの、それは「クナイ」。
所謂「忍者」と呼ばれていたやつが使っていらしいが、俺みたいな力がない奴でも扱いやすい小さな細い刃物。ナイフと迷ったが、クナイのほうが手に馴染みが良かった。俺でも扱いやすいよう、薄く小さく作ってもらっている。
そして特殊な魔力も込めてもらった。失くしものを見付ける魔法の応用編! クナイと魔石に同じ魔力を込めてもらい、手元から失っても、魔石に念じると戻ってくるという優れもの!
だって特注クナイは貴重品だし高いんだよ。失くしたら困るしね。
そしてそれを腹回りや太腿回りに暗器として隠し持ち、百発百中の勢いで相手の急所を狙い撃つ。もし外れてもそれによって隙が生まれる。そこを短剣で突くのだ。
竜騎士のように空で戦いになった場合、短剣ではなんの役にも立たない。そこで考え出した苦肉の策だった。
力がないならないなりの戦い方をすれば良い。自分の弱い力のみでどうやって戦うか、これによって導き出した俺の戦い方。
暗器は数が限られる。戦いの最中に回収するなんて暇はないだろう。だから狙い撃つために必死に命中率を上げた。それらの集中力は備わっていたようだった。こんな俺でも暗器を使用すればラナカに隙を作ることが出来るようになったのだ。
まあだからといって強くなったわけでもなく、ようやくラナカの足元くらいには近付けたくらいなのだが。
それらのことを伝え、五日間、毎日アンニーナと模擬戦を行った。
勝敗は……内緒。アハハ。
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