第五話 友達
中学校に向けて歩き始めていた。
中学校は家から歩いて40分ぐらい。山を越えた所にある。
電車で通学した方が早いんだけど、満員電車は好きじゃない。それに、タクミはサッカー部だから毎日歩いて体力をつけたいんだって。
サッカー部だったら朝練あるんじゃないの? って聞いたら、緩い部活だからないって言ってたな。
みんなで楽しくサッカーできたらそれで良いんだそう。
「そういえば、リリスは16日は暇?」
今日が7日の金曜日だから、えっと……。
「16日って何曜日?」
「来週の日曜日」
あれ、来週からテスト週間じゃなかったっけ。
「暇だけど、どうしたの?」
「母さんがさ、映画のタダ券を2枚貰ったんだって……母さんは仕事が忙しいからって、俺にくれたんだ」
「……ほら、リリスはこの前ミコ
「えっ!? 良いの!? やったー!!」
家なき子ミコ、拾われ先で巫女になります!
略してミコ巫女。確か今日公開だった気がする。原作は小説だったんだけど、実写映画化した。
主役のミコ役はルカちゃん! ドラマの主題歌を歌ったり、映画の主役をやったり何でもこなせる天才だ。因みに今回の映画の主題歌もルカちゃんが歌う。
「嬉しいんだけど……テスト前日になっちゃうけど良いの?」
「あー、そう言えばテスト前日だったな。じゃあ、その次の週はどうだ? テストも終わってるし」
中間テストは17日と18日までだった。国・数・社・理の4科目のテストを2日間かけて行う。
「うん! テスト明けの日曜日は空いてるよ! 楽しみだ〜!!」
原作の小説は全巻揃えるほど大好き。テスト終わったら読み返そうっと。
「でもミコ巫女でいいの? タクミはミコ巫女読んだことないよね?」
よくこの本が面白くて〜って話はするけど、タクミが本読んだってのはあんまり聞いたことがないな。
「読んだことはないけど、エリさんが出るから興味はあるよ」
エリ——女優さんの
「ほーん。タクミってエリさんみたいな人がタイプなんだ〜」
「いっ、いや、タイプとかではないから! 綺麗だなって思うだけで……」
ニヤけた顔でつついたら、顔を真っ赤にしていた。可愛いなぁ。
タクミとミコ巫女の話をしたり、他愛のない会話をしたりしていると、あっという間に学校についた。
「タクミ、じゃあね〜」
「おう、またな」
私は1年1組だけど、タクミは1年3組。タクミとはクラスが違うから、私のクラスの前でお別れだ。
教室に入ると、誰もいなかった。まだ8時前だしね。
自分の席に座る。窓際の一番後ろ。授業中に入ってくる風が心地良くて、この席はお気に入りだ。
誰もいない教室で、本を読むのが日課だった。
今日も本を読みたい所だけど、昨日あまり眠れなかったから眠たくなってきた……。
授業開始まで30分以上あるし、少しくらいいいよね——。
——————————
「——て、起きてってば!」
「ん……?」
ゆらゆらゆらゆら。
揺さぶられている。
目を開けると、紫髪のベリーショートの女の子——田中 ハヅキが、私を揺らしていた。
「リリス、やっと起きた! 何回もおはようって言ったのに〜!」
「おはよう、ハヅキ」
時計を見ると、8時25分をすぎていた。もうすぐチャイムが鳴るな。
「話したいこといっぱいあったのに、これじゃ話せないじゃん〜」
「ごめんね、寝不足でさ」
ハヅキはいつも8時10分ぐらいに登校してきて、いつも授業まで2人で喋っている。
話を聞いている、の方が近い気がするけど。
「そっかぁ〜。じゃあ寝てて! 休み時間話そ!」
「うん、ごめんね」
自分の席へ戻っていくハヅキ。もう一度目を閉じようか、それとも少しだけでも本を読もうかと思った所でチャイムが鳴った。
今日も一日が始まる。
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