第20話 歳をごまかす

 女性に歳を聞くのは失礼だと言うけれど、女性にも女性の歳は想像もつかないものなのだ。「いくつに見えますか?」と問われた時のプレッシャーはどんなに難しい謎を解くより重たい。

 取材に出かけると、冴子は話の途中でそれらしい話題から歳を導き出して失礼のないように心がけることにしている。上手く話を持って行けばたいていすんなり年を教えてくれる。ごまかして教えてくれない人にはそれ以上その話をしないようにする。長い取材生活でその呼吸は解っていた。

 人から歳を当てるように言われると、どんな相手でも、自分より5つ下くらいの歳を言うようにしている。せめて自分より下だと思ったという事で勘弁して欲しい。女性の歳は見当もつかないのだから…

 つい先日、どう見ても60は過ぎているように思われるおばさんが、自分はいつも40には見られる。と自信アリげに言っていた。自分より若く見られると言うこの初老のおばさんに早苗は余程世間を知らないか、身の程知らずなんだと正直たまげた。

 今の40はまずそんな格好をしない。どう見ても60のおばさんが40の頃流行った服装だ。白っぽいパンストにオレンジ色のキュロットスカート。冴子は恥ずかしくて目を覆った。

 人の歳とは不可思議なものだ。何故若く見られたいのかわからないが、周りに気を使ってもらって実年齢より20もサバ読まれた時には一度は相手を疑ってかかるべきだ。そのくらいの冷静さがないと人前で恥をかくことになる。

 歳の割に派手な服装をしている。と言うより、それは10代20代がやってこその服装。と言う格好で歩きたがるおばさんもいる。何枚も重ねたキャミソールのレースの下からたるんだ肉が見えるのは痛々しい。

 本人が好きでやっているんだから良いんだ。きっと似合ってると思っているんだから…

 早苗は自分に納得させて見ないようにする。歳をとったら自分はそれらしい格好をしたい。値段ももう少し奮発して大人の服装がしたい。高級感のある服をサラリと着こなせる女性に成りたい。そう思う早苗だった。 


 ※昔良く感じた勘違い若作り…最近そういう人を見なくなった。これはとても良い傾向だと思う。人が人としてありのまま美しい。その方が絶対正常な世の中だと改めて思うから…

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