第18話 ふたりはようやく、めぐりあう。

 即位して20年。昼も夜も働き続けた大王は、執務室で急死してしまいました。


 大王の亡骸は執務室に忘れ去られ腐るに任されました。

 大王の選んだ優れた大臣や官僚達は、命令を実行するのには優れていましたが、命令無しには何も出来ない者ばかりでしたから葬儀ひとつ執り行えなかったのです。


 大貴族達はそれぞれが王子を擁立し、激しい跡目争いが起こりました。

 王宮内から始まった争いは、王国全土へ拡大。

 王子達が各地で王を名乗り生き残るために戦い、跡目争いは十二年続きました。

 ありとあらゆる貴族が死に絶え、最後には北の蛮族の力を借りた末の子供だけが生き残り、ようやく跡目争いは終わりました。

 その時には、かつて大王が征服した国々は全て復活し、元通りの大きさに戻った国土は荒れ果ておりました。

 復活した国々は連合を組み、末の子供は戦場に散り、フランドルは無主の地となり、各国が奪い合う戦乱の地と化してしまいました。

 かつての王国の民が、自分たちの国を取り戻したのは、それから150年後のことでした。


 そのあいだも宝石姫の墓はその姿をとどめていました。

 盗掘しようとすると、15人の男達の亡霊に襲われるという噂があったおかげです。


 今でも二つの石棺は並んで安置されています。

 そしていつからか、空だった石棺には、一人の男の亡骸が納められているのです。


 全身を切り刻まれた痕の残る亡骸は大王のものではありえません。


 二人は再び巡り会い、静かに眠っているのです。

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彼女は炎の中で『さようなら』を告げる。 マンムート @NOMINASHI

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