act.45「試験開始!」

『――さて、今試験ですが、今日から金曜日までの5日間で開催されます。今日と明日が1回戦、水曜日が2回戦、木曜日が3回戦、金曜日が準決勝と決勝といったいったスケジュールですね。期間中は授業は午前のみとなり部活動は禁止されていますので、エントリーした生徒以外は全力で応援しましょう!』


 俺は第1試合の会場へと向かいながら、例の校内放送に耳を傾けていた。

 放送の内容を聞くに、試験という体裁でありながら、どこかイベントのようにもなっているらしかった。

 試験参加者以外の生徒には、観戦が認められているらしい。

 ってことは、俺たちの戦ってるところも見られるってことだよな……。

 そう考えると、ちょっと緊張してきた。


『……ところで学院長、今試験での注目の生徒などおりますでしょうか?』

『そうねぇ……どの子にも期待してるけど、特に気になってるのは、土方千歳ひじかたちとせ近藤美紗こんどうみさのペアかしら。まだシスター契約の力に目覚めたのは最近だから実力は未知数だけど、善戦を期待するわ』

『なるほど! シスター契約の力をものにできれば優勝も優勝も不可能ではないですから、どのような戦いを見せてくれるのか私も楽しみです! そして未知数といえば……今、噂になっている4人目のSランク、芹澤悠里も今試験にエントリーしています!』


「あ、珠々奈! 私の名前も出たよ!」


 俺が声を掛けると、珠々奈は興味なさそうに言った。


「そりゃ、出るに決まってるじゃないですか。先輩、今回の出場者のなかでダントツに目立ってますよ」

「そうなの?」

「そうです。ポイントに困ってないSランクはこういう行事には出たがらないですし、そもそも先輩は久々に誕生したSランクとして注目されてましたから」

「そうなんだ……」


 ……全然そんな感覚はなかったな。

 まぁ、この学院に来てから色々あったから、周りに気を配る暇がなかっただけかもしれないけど……。

 でもまぁ……注目されてるって、悪い気はしないな。


『――学院長は、芹澤さんをどう見ますか?』

『んー、流石にSランクだからいいところまではいけるでしょうけど……優勝は難しいんじゃないかしら』


 おお。

 言うねぇ……千景さん……。


『なんと……! それは意外ですね……てっきり私は優勝候補の一角だと思っていたのですが』

『ええ。もちろん魔力はトップレベルに高いし、ポテンシャルだけで見れば確かに強い。でも……まだステラギアの扱いに慣れてないようだから、そこを克服しなければ強敵に勝つことは出来ないでしょうね』

『果たして芹澤さんは本来の力を発揮できるのか……? 今試験のひとつの見どころとなりそうです!』


「……本来の力、早く私にも見せてくださいよ、先輩」

 珠々奈が俺に向かって挑発するように言う。

 ちょっと珠々奈まで……。


「別に好きで扱えない訳じゃないんですけど」

「私なんて、3日で扱えるようになりましたけどね」

「だからさー、コツを教えてって何回も言ってるじゃん」

「私も何回も言ってますけど、ステラギアっていうのは、魔法少女一人ひとり専用のものが用意されてるんです。ですから、一人ひとり武器のイメージも違ってて……こればっかりは教えることは出来ないです」

「イメージねぇ……」


 綾瀬会長や利世ちゃんに聞いてみても、答えはほとんど同じだった。なんでも自分の武器のイメージは……自然と浮かんでくるものらしい。

 1回だけ掴みかけたような気もしたけど、それっきりだしな……。

 正直、出来ない理由が他に何かあるとしか……。


『――さぁ、注目度ナンバーワンの芹澤さん擁する芹澤、速水ペアが登場するのは、なんと第1試合です! 初戦から早くも登場する訳ですね! 良い戦いになることを期待しましょう! そして学院長イチオシの土方、近藤ペアは第2試合――おおっと、これは!? 第2試合の土方、近藤ペアの相手はなんと……同じAランク、シスター契約済みの成田、牧原ペアです! Aランク同士が2回戦に早くもぶつかります! これは激しい戦いになりそうです!』

 

 成田さんたちの試合は、俺たちのすぐ後か……。


「2回戦は私たちも観戦しておいたほうがいいかもしれませんね。どちらかと決勝で当たる可能性は高いでしょうし」

「うん、そうだね。でも、その様子だと……1回戦は余裕?」

「別にそういう訳じゃないですけど……今の私たちなら、本来の力を出せれば勝てると思います」

「1回戦って、どんな子だっけ?」

「Bランクのペアですね。シスター契約は、してるみたいですけど」


 げ……。

 いきなりシスター契約済みか。


 だが、そんな俺の考えが表情に出ていたのか、珠々奈は言った。


「……大丈夫ですよ。ランクの差っていうのは、先輩の思っている以上に大きいですから――」


 そして闘技場に到着するや否や試合に駆り出された俺たちだったが、果たして珠々奈の言う通り、すぐに決着はついた。


『――おーっと、速水さんの一撃が決まったぁっ! 2人とも立ち上がれない! 勝負は決した模様です!』


 やかましいぐらいの実況と、観客席の歓声の中で……珠々奈は俺に向かって余裕そうに言った。


「やりましたね、初戦突破です」


 もしかしてだけど、俺たち……結構強いのでは……?

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