act.34「久々のバトル回です」
教室に戻ってきた珠々奈は、その奇妙な雰囲気に違和感を覚えた。
……なんだろう? さっきまでよりも、騒がしい……。
すると戻ってきた珠々奈に気付いたクラスメイトが、少し慌てた様子で声をかけてくる。
「あ、珠々奈! ちょっとどこ行ってたの!?」
「いや別に……ただのトイレだけど」
悠里先輩が迎えにくるという話だったから、それまでに御手洗いを済ませておこうと思っただけなのだが。
そういえば……悠里先輩、まだ来てないな……。
「……で、なんかあったの?」
珠々奈がクラスメイトに尋ねると、尋ねられた彼女は言った。
「なんかあったの、じゃないよ! 珠々奈を探しに来たSランクの先輩が、なんか別の先輩に連れてかれて……」
Sランクの先輩って……たぶん悠里先輩のことだ。
「連れてかれたって、誰に? どこに行ったの?」
「そ、それは――」
「――私が悪いんです」
言い淀むクラスメイトを庇うようにして、ある生徒が言った。
「あなたは……」
話に入ってきたのは……
同じクラスだが、積極的に話したことはない。
確か彼女は――。
牧原はか細い声で続けた。
「急に上級生に話しかけられたから、私、うまく話せなくて……そしたらそこに丁度、希沙羅お姉様が来て……」
「キサラ……」
聞いたことがある。成田希沙羅……風紀委員長に次ぐ実力を持つとされる、風紀委員のナンバー2の名だ。
そうなるとやはり……この牧原という子も風紀委員と考えて間違いないだろう。
「ったく、悠里先輩ときたら……」
珠々奈は面倒そうに呟いた。
次から次へと、面倒事に巻き込まれるんだから……。
「それで、その2人の先輩はどこに行ったの?」
するとクラスメイトたちは、互いに目を合わせ、そしてそのうちの1人が珠々奈に言った。
「……たぶん闘技場だと思う」
闘技場……。
それはこの学院の生徒が、魔法の訓練を行うための施設だ。
そんなところに2人で行くなんて……もうやることは1つに決まっている。
「決闘か……」
珠々奈の言葉に、クラスメイトたちは頷く。
「……私、闘技場に行ってくる!」
この前の決闘は綾瀬会長が手加減してたからなんとかなったみたいだけど……風紀委員相手だとそうはいかないはずだ。ましてや、まだろくにステラギアを扱えてない悠里先輩なら、尚更……。
急いで教室を出ようとする珠々奈を、少女――牧原花音が声をかける。
「わ、私も行きます! 元はと言えば、私のせいですから……」
「……好きにすれば?」
「はい……!」
そして珠々奈と花音は、闘技場へと向かった。
◇◇◇
珠々奈を呼びに一年生の教室に行ったと思ったら、クラスメイトと決闘することになりました。
何を言ってるのか分からねーと思うが……大丈夫
だ、俺も分からない。
「――あのー、ちなみに聞くけど……その決闘、クーリングオフ出来たりとかってします?」
「出来るわけねーだろ! アホが!!」
ですよねー。
まぁ、下級生を巻き込みたくないから場所を移そうって提案したのは俺だし……それで了承したと捉えられても仕方はないけど……。
というか、Aランクに決闘を申し込まれた時点で、Sランクの俺には拒否権無いんですけどね!!
「アタシの『シスター』にちょっかい出しやがって……全力で叩き潰してやるから覚悟しろよ?」
そもそもなんでこの子がこんなにキレてんのか、未だによく分かって無いんですけど……。
さっきの子に声をかけたのがマズかったのか?
だいたい『シスター』ってなんだよ? この前会長の口からも、そんなフレーズを聞いたけど。
成田さんは、腕に装着された自分のステラギアで何かの操作をする。その瞬間、学院内のスピーカーからアナウンスが流れた。
『成田希沙羅から芹澤悠里へ決闘が申し込まれました。この決闘は30秒後に承認されます』
……残念ながら、もう逃げ場はなさそうだ。
もう腹を括るしかない。
ちなみに……この決闘で負けると、恐らくだが俺はAランクに落ちる。
この前の怪異討伐依頼を達成した報酬で一応ポイントは入ってきているのだが……そのポイントは雀の涙ほどしかなく、現在の俺の総ポイントは1004ポイント。
会長たちの話によると、決闘では少なくとも10ポイント前後変動するらしいから……負ければ即アウトだ。
別にランクにそこまでこだわっている訳ではないのだが……編入してから早々にランクダウンは流石にダサいからな……。できれば負けたくはない。
「……せいぜいお手柔らかにお願いするよ」
「ああ、いいぜ……一瞬でノックアウトさせてやる」
やがて闘技場の土俵を覆うようにして
『成田希沙羅と芹澤悠里の決闘が承認されました。只今より闘技場にAMFを展開します。該当生徒以外は速やかに退避して下さい。繰り返します――』
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