act.21「あなたのことは認めてないですから」

「珠々奈……!?」

「あ、あなたがなんでここに……!?」


 生徒会室の扉を開けて中に入ってきたのは、まさかの珠々奈だった。

 まさか、珠々奈も生徒会のメンバーなのか……?


 珠々奈は物凄い形相で俺を睨みつけた後、すぐに綾瀬会長に視線を移して言った。


「どうしてこの人が、生徒会室に居るんですかっ……!?」


 ……そんな言い方されると、ちょっと傷つくなぁ……。

 

 綾瀬会長は茶化すように笑いながら答える。

「どうしてって……生徒会に入ってもらうからに決まってんじゃん」

「何でですか!?」

「そりゃもちろん、この子がSランクだからだよ。最近特に風紀委員がウザいからさ、戦力は補強しておきたいじゃん? 何か文句ある?」

「くっ……」

 珠々奈は言葉を詰まらせた。


 それだけ、Sランクという存在は大きい、ということだろうか?


「……他のみんなは、良いんですか? こんな部外者を生徒会に入れて」

 珠々奈はそう言って、この部屋にいる他のメンバーを順番に見ていく。


「えーと、私は……悠里ちゃんは良い子だし……別に構わないけど」

 と、利世ちゃん。


「芽衣は賑やかな方が好きだからさんせーい!」

「……美衣はどっちでもいい」

 と、2人でじゃれついていた双子(?)の子たちも言う。


 ……どうやら、俺の加入に反対する人間はいないらしい。

 ただ1人を除いてだが。


「多数決を……取るまでもなさそうね」

 会長の言葉に、珠々奈はぷるぷると震えていたが、

「……分かりました。好きにすればいいです」

 それだけを言うと、生徒会室の中に入ってくる。


 そして珠々奈は、俺の目の前に立ち止まると、こう一言だけ言った。

「……私はあなたのことは、認めてないですから」


 ……俺、嫌われ過ぎじゃね?


◇◇◇


「さ、みんな揃ったことだし、新メンバーの紹介がてら軽く自己紹介でもしましょうか」


 綾瀬会長の提案で、自己紹介タイムが始まる。

 会長の口ぶりから、珠々奈を入れて生徒会のメンバーは全員のようだった。

 メンバーは全部で5人か……。

 まだちゃんと、全員のことを把握出来ていなかったからありがたい。

 

 綾瀬会長から順番に名乗っていく。

「じゃあ、私からね。綾瀬薫。クラスは3-Bで、みんな知ってると思うけど、この学院の生徒会長です。ランクはSで、二つ名は『絶対零度の女王アブソリュート・クイーン』」


「……薫姉。気に入ってんの? その二つ名」


 利世ちゃんが、信じられないものを見るように綾瀬会長を見た。


「えー、いいじゃん、悪い?」

「……ダサくね?」

「ダサくないっ!!」


 すごい。力強い。


「はい次、利世ちゃんね」


 会長からのご指名が入り、利世ちゃんの番になる。


「えーと、安曇利世です。クラスは2-AでランクはAです。よろしく」

「……二つ名は?」

「いやいや、そんなのないから! はい次!」


「はーい! 次は芽衣がいきまーす!」

 双子のうちの1人が、元気いっぱいに手をあげる。


葛城芽衣かつらぎめいでーす! 美衣の双子の姉です! クラスは1-Cで、Aランクです!」


 そして妹の方が続く。


「……葛城美衣かつらぎみい。芽衣の妹。クラスは1-D……Aランク」

「そして二つ名は、2人合わせて、せーの!」


「ボンバーシスターズ!」「漆黒の双天使ダークネス・エンジェルズ


「決まったね!」


 ……合っとらんやんけ。


「で、お次は……」

 綾瀬会長は、出来るだけ席を離して奥の方に座っている珠々奈に視線を遣る。

 珠々奈はその視線に気付き、心底面倒そうに口を開いた。


「速水珠々奈。1-A。Aランク。二つ名はないです」


 そのドライな態度に、一瞬空気がピキッと凍る。

 しかし綾瀬会長は、空気を取り戻そうとして、続けた。


「ま、まあ……仲良くなってくのはこれからでも良いし? ……気を取り直して、最後に悠里ちゃん!」


「あ、えっと……」

 あかん、最悪のタイミングだ。

 だが、俺が自己紹介をしなかったらそれこそ意味ないし……俺は観念して言った。


「芹澤悠里です。クラスは2-Aです。ランクは……たぶんSランク……? 二つ名は……まだ考え中です。よろしくお願いします……」


「はい、ありがとー! ……二つ名、決まったら教えてね?」

「あ、はい……」


 なんだろう。

 俺はこの生徒会で、果たして上手くやっていけるんだろうか……?


 というかそもそも、なんか生徒会に入るテイで話が進んでますけど……俺、入るなんて一言も言ってないよね……?

 

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