[23] 帰還
結局その日はそのまま寝られず3人で朝まですごした。
空の端が白くなって昇ってきた朝日を生まれた初めて綺麗だと思った。
教会の坊さんを叩き起こして援軍要請、街の方に無事連絡がついて3日後、遅くとも4日後にはこちらに増援が着くとのこと。
それまで3人で粘る。接近はしない。罠と遠距離攻撃のコンボでお帰り願う作戦。
体制整えて昼寝て夜見張りの生活を送っていたのだが、幸運なことに赤眼は村を訪れることはなかった。
佐原の放った一撃が致命傷でなくとも、こちらが危険だと判断するには十分だったのかもしれない。
4日後昼過ぎになってようやく頼みの援軍が村に到着。率いていたのはゴングでそのいかつい面構えを見て篠崎らはひどく安堵した。
早速状況説明。その日はもう遅かったのでさらに翌日に森に狩ってでることに決定する。
3人はこれでお役御免だと考えていたが、狩猟に慣れてる人間がいると便利だからと、そのまま参加を要請される。承諾するが夜の警備は軍の方にまかせてぐっすり休んだ。
次の日。大勢で森へと立ち入る。物量作戦。赤眼はその日のうちに見つかった。あとはもう難しいところはない。遠くから囲って火力をぶち込む。それでおしまい。
仕方がないことだけれど大人数で歩き回ったせいで森は荒れていた。サクならもっとうまくやれたのだろうか? わからない。その背中は遠い。
ともあれ仕事は終わった。ゴングらとともに街へと帰還する。
門をくぐって下宿について食堂のいつもの席に座ったところでようやく緊張のほどけた気がした。
本当に終わったのだ。まあまあうまくやれた、及第点。花丸二重丸とは言えない。だがそんなもの目指して死ぬよりよっぽどいい。命あっての物種。
口慣れた暖かいメシを食う。周りの喧騒すら懐かしい。離れていたのは10日にも満たないのに。
「ごくろうさん」
3人のもとにやってきたのはゾキエフ、ワイン片手に赤ら顔。
篠崎が口を開こうとしたところを手で制された。こちらがくたびれきっているのがわかっているのか、笑みを浮かべてうんうんと1人うなずいている。
そういうことなら甘えさせてもらおう。詳しい報告なんかは全部明日で。とにかく疲れた。半ば放心状態。
ゾキエフもテーブルにつく。まだ何か用があるのだろうか、不思議に思った。食堂のざわめきの中、彼は3人にだけ聞こえる程度の大きさでささやいた。
「勇者が4人死んだよ」
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