第49話 暮らすという事の楽しさ

 地味に暮らす。

 朝起きて、犬の散歩をして、朝食の準備をして、香り高い珈琲を淹れる。その後、夫を駅まで送って朝のルーテーンは終了。

 毎朝のことだけど、駅の入り口に立ってロータリーをぐるりと回る私に手を振ってくれる。朝の忙しい時間、ほんの一瞬の事、立ち止まって心を添えてくれる気持ちがホントに優しい。

 コーヒーを持って行くのを忘れると『コーヒー忘れました』と連絡が来る。『じゃ、飲んどくね』とメールを返して、それを抱えて書斎へ。

 我が家は平和だ。コーヒーを忘れたくらいで喧嘩にはならない。

日常を普通に静かに慎ましく暮らす事がなんとも楽しい。

 人生はセピア色。人生はモノトーン。人生はパステルカラー。目の回るような極彩色は必要ない。そんな人生が、飽きる事なく続いていくのが私のしたい暮らしというもの。

 若い頃、定年したら、語学の勉強をしながら異国の地で一年くらい暮らしたいと思っていた。その思いは捨てきれてない。

 今のところ、出向先に再就職した夫は仕事が山積みでその夢はまったく叶っていないが、言葉を習得しながら日日の生活を楽しめる海外移住は、まさに暮らしを楽しめる小旅行で夢のような憧れだ。

 日常を外国で過ごせば語学も進むんじゃ無いかと、取らぬ狸のなんとやら難しいことを話したいわけじゃ無い。

 買い物できて、料理教室に通って美味しいレシピを覚えて、魔法使いは家具の作り方など学んで老後の作業に生かせれば良いんじゃないか、なんて言ったら、

「家具なら飛騨でよく無いか」

 と言われて、そうか、日本の技術の方が上か…と、ちょっと肩透かし、

 旅行はそんなに好きじゃない。見たいものとか行きたいとことか特に無いから、行くだけで何十万なんて言われるとなんだか勿体無くて遊びに行く気にならない。

 暮らす事ができたら、きっと最高だと思う。日常を生活する過程がなにより面白いと思う。

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