第4話

 私達は、それぞれの父親を説得して、希望通りの高校に入学した。最初の一年間は、片道一時間の通学にへとへとになっていたが、高二の夏になると、お互いにぼやき合う余裕ができた。


「新世界がうちらを待ってくれてると思ったんやけど、甘かったなあ……」

とこちゃんがポツリと言った。

「ある程度は覚悟してたけど、女子高て、ほんまに怖いとこや。」

「きっこちゃん。なんで、女子て、グループつくって、徒党をくむのやろ……」

「きっと、それが普通の女子なんやろ。うちらのほうが変わりもんかもな。」

「せやな。まあ、村井先輩は別として、中学校の時、たいした男子、おらへんかったけど、それでも、男子が見てるって、いがいと効果あったんや。女子ばっかりやったら、いじめもきついわ。うち、もうバトン部やめる。いじめられてる子に声かけてあげたら、うちまでやられるようになった。きれいな服着て踊っても、お腹の中は真っ黒や。」

「とこちゃん、バトン部やめたら、東野高校の野球部の応援、行けんようになるで。何とかくんに会われへんで。」

とこちゃんは耳まで赤くなっている。

「きっこちゃん、バトン部やめるのをやめる……」

「ええか、とこちゃん、できるだけ、平気な顔しとくんやで。いじめる輩は相手が困るのをみて楽しむんやさかい。」

「きっこちゃんは大丈夫なん?」

「まさか。田舎もんとかおかめとか書いて、授業中でも、先生の目ぬすんで、どっからか丸めた紙くずとんでくるわ。」

「なんでやろ、きっこちゃん。」

「うちが特待生やから、妬んでるんやろ。まあ、田舎の中学校で、競争相手が少ない学校選んで、特待生の推薦もらえたし。町の子は私らが思ってるより、競争が激しいから。なんであんたが特待生やねんって、しょっちゅう言われるわ。まあ、ええねん。どうせ、大学は外に出るさかい。とこちゃんがいてくれたら、他の友達、別にいらんし。」

「相変わらず、きっこちゃんはゴーイングマイウェイで羨ましいわ。あんな、うちも、高校、卒業したら、外に出る。」

「ええっ?上の家政学部の被服学科は行かへんのか?」

「あんな、家庭科の先生が、親切に相談にのってくれはってな、先生が言わはるには、ほんまに、洋服、縫いたかったら、専門学校のほうがええやろって。川村モード学院、どうやって、言わはった。」

「なるほど。とこちゃんはデザイナーとかになりたいんやな。川村モード学院っていうたら、世界的なデザイナーの川村ユキエがつくった学校やろ。ええやん、かっこええやんか。あんな、うちが受けるつもりの大学な、川村モード学院の近くやわ。ハハハ、また、道中、とこちゃんと一緒やわ。なんかうれしなったわ。」

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