第3話

「なあ、きっこちゃん、相談したいことがあるんや。聞いてくれるか?」

「ええで。うちでよかったら。とこちゃん、どないしたん?」

「なあ、きっこちゃんは高校のこと、もう、きめてるん?」

「まあな。うち、光陽女子高校、考えてるねん。」

「へえ、そうなんか?きっこちゃんやったら、藤香女子高校、受けるんやと思ってた。」

「あのな、考えたんやけど、藤香女子は、うちの中学校から行く人多いやろ。うち、授業料免除してもらえる特待生になりたいねん。うちのお父ちゃん、私立は金がかかるてうるさいからな。今、生徒会の副会長してる永井さん、あの子が藤香女子、受けるらしいねん。間違いなく、あの子が、藤香女子の特待生の推薦もらうわ。ああいう、先生受けのええ子と競うより、志望校、かえる方が手っ取り早いしな。光陽女子は作文重視やし、うちにおうてるかなあて。」

「すごいな、きっこちゃん、色々と考えてたんや。すごいなあ。それに比べたら、うちなんかあかんのやけど、笑わんと聞いてな。」

「もちろんや。とこちゃんのこと、笑ったりせえへんで。なんでも言うて。」

「うちな、なんとなあく、地元の公立高校にしよかって思ってたん。勉強、あんまり好きやないし。お姉ちゃんは聖光女学院の高校やろ。あそこは上に短大があって、お嬢様学校やからって、就職がええんやて。うちのお父ちゃん、お姉ちゃんに、ええお婿さん、もらうて、はりきってんねん。お前も、お姉ちゃんと同じ学校に行かせたろかあて、冗談言うけど、お姉ちゃんと同じとこはいやや。比べられるし。でも、地元の公立も、同じかなって思うようになってん。お姉ちゃんの知り合いとかいるやんか。きっこちゃん、うちな、お姉ちゃんのこと知らん人ばっかりのとこに行きとうなった。」

「ええやんか、それで。」

「ほんま?ほんまにそう思う?」

「うん。そうしたらええわ。」

「でも、きっこちゃん、うちが受かる学校あるかな?塾、行ったりするんはいややし。」

「とこちゃんは、洋服のこと、好きやな。ほら、スカートの丈かて上手になおしたし、お弁当袋とか手さげとか、自分で縫ってるもんな。それやったら、上に家政学部とかある高校がええかもな。ほら、お姉ちゃんが行かはった聖光女学院は上にあるの、英文とかやろ。それから保育やったかな。」

「うち、英語、嫌い。子供も嫌いや。小学校の集団登校で、言うこと聞かへん子がおって、こりた。」

「うちの武志はかわいがってくれたけど?」

「武ちゃんはおとなしいて、かわいいもん。」

思わず、二人で笑った。

「そうやなあ、華村女子高校は?あそこ、上に家政学部あるわ。とこちゃんやったら、被服学科かな。洋裁の勉強がしたいて言うたら、お姉ちゃんと違う学校でもかまへんのとちゃうか。」

「きっこちゃん、なかなかの策士やな。なんか、うち、楽しなってきた。なあ、華村女子てどんな制服かなあ?」

「とこちゃん、残念ながら、制服はどこも大差ないわ。紺色のブレザーにリボン、違うのはリボンが赤か青か、太いか細いか。」

ハアッと、とこちゃんはうなだれている。

「元気出し、とこちゃん。」

「わかった、きっこちゃん。二人でここからでよな。」

「そうや、新世界がうちらを待ってるんやで!」

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