第2話

 私達は中学二年生になった。最近は、とこちゃんが私の家に来ることが多い。

「家に帰って、きっこちゃんのとこで、一緒に宿題するの、嬉しいな。中学生になっても、仲良しでいてくれてありがとうな、きっこちゃん。」

「とこちゃん、改まってどないしたん?」

私は思わず吹き出した。

「なんや、クラスの女の子とか見てたら怖なるわ。」

「せやな。お母ちゃんとか、近所のおばちゃんら見てていつも思てたわ。仲良うしてるかと思てたら、陰で悪口言うたりして。ほんま、女っていやらしいわ。なんも、この年から、お母ちゃんらのまねすることないのにな。」

「きっこちゃん、ほんま、ズケズケ言うな。うちは、きっこちゃんのそういうとこ,好きやけど‥‥」

 しばらく考え込んでから、とこちゃんは遠慮がちにきりだした。

「なあ、きっこちゃん、クラブのことやけど、聞いてええか?」

「ああ、うちが文芸部におることか?」

「うん、みんな、色々、言うてはるから‥‥余計なお世話やと思うんやけど‥‥まあうちも、陰で言われているのは一緒やけど。」

「知ってるで。一年生から塾、行ってるから、ガリ勉やて言われてるんやろ。文芸部は縛りが緩いから、塾と両立させやすいねん。何かしら書いていたらええからな。中学校の駅前に塾できたやろ。帰りの電車に乗る前に、塾に行って帰ってこれるし、余分な交通費かからへんし。塾の授業終わっても、ちょっと待ってたら、とこちゃん、クラブ終わって帰ってくるの見えるしな。」

「おおきに。きっこちゃん、うちが同じクラブの子らと別れてから、話しかけてくれるやん。気いつかわせて堪忍やで。」

「うちのことより、とこちゃんのほうが大変やろ。人気抜群の生徒会長の村井先輩がいる剣道部にはいったばっかりに、うっかりすると、桐壷の更衣やで。」

「きっこちゃん、それ、誰?」

「源氏物語に出てくる女性で、帝の寵愛を一身に受けて、ほかの女性達に妬まれるねん。」

「怖っ!そうなんや。うっかり、村井先輩に声かけてもろたりしたら、みんなに睨まれるねん。せやけど、他のクラブ、お姉ちゃんがらみの人がたくさんおって‥‥」

「せやな。もう卒業しやはったけど、とこちゃんのお姉ちゃん、美人で人気あったもんな。」

「お姉ちゃんと比べられるか、ラブレター、渡すように頼まれるか、最初、うっかり入ったテニス部でえらい目におおたわ。」

「そうやったんや。」

「それでな、お姉ちゃんの担任の先生が顧問のクラブとか、お姉ちゃんの知り合いがいるとこ避けてたら、剣道部やってん。村井先輩のこととか、うち、知らんし。考えもせえへんかった。」

とこちゃんはフウッとため息をついた。

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