忘れたい、忘れない。

過去の思い出が僕を縛り付ける。


僕は僕を大切にしてくれた父親と

僕を玩具だとしか思っていない母親の元で育った。


父は忙しい人だったけれど

週末は必ずどこか遊びに連れて行ってくれた。

原っぱで寝ころび風を感じて二人でお弁当を食べたり

水族館に行って大きな水槽の中で生きる魚たちに話しかけた。


父の帰りが遅い日は

ひたすら母の暴言と暴力に耐え続けた。


父は何度も離婚を考えていた。

けれどまだ小さな兄弟のためを思いそれが出来なかった。


そんな日々を過ごす中で

少しずつ、でもはっきりと自分が壊れていくのを感じた。

愛情を注いでくれる父とそうではない母に挟まれ

いつしか母の暴力さえ愛情に感じていた。


自分が愛されていないと

思いたくなかったのかもしれない。


そんな記憶たちは今でも僕を縛り付ける。


忘れてしまいたいはずの記憶は

数少ない僕への愛情を注いだ母の記憶。


僕の首を絞め、泣きながら言った、愛してる。


忘れたい、忘れたくない

そんな記憶が今日も僕とともに生き続ける。



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