君と僕

ピコン…!

静かな部屋に無機質な音と僕の跳ねた心臓の音が響く。


「お別れをするために連絡しました」


僕はうるさい心臓の音を落ち着かせるために

大きく深呼吸をした。


なぜあの時引き止めなかったのか...

今更後悔をしても遅いことなどあの時わかっていたはずなのに

溢れる涙で画面を見ることがやっとな僕は


「待ってほしい」


そんな言葉しか返すことが出来なかった。


僕は理由が知りたかった。

君を追い込んだものの正体が知りたかった。


...いやきっと違う、その原因が僕ではないと安心したかったんだ。

僕が見捨てた相手に僕は救われようとしていた。


そんな自分が嫌になる


「君の誕生日を祝ったら死のうと思ってたんだ」


...僕なんて生まれてこなければ君は幸せに過ごせたの?

なんて言えるわけもなく、そして

君がそんなことを言う人ではないことくらい分かっていた。


「そっか...」


さっきまで僕の目の前にいた人が

今この瞬間この世界から消えようとしている事実は僕に重くのしかかった。


どんな言葉をかけてもきっと君は救われないのだろう。


「こんな人間なら、いない方がいいんだよ」


僕も常日頃から思っていることを君の口から聞くとは思わなかったけど

あぁ、そうか君も僕と同じなんだなと僕は安心した。


そんなことを考えている内に連絡が途絶えた...

すぅーっと血の気が引いていくのを感じた。


人が命の光を消すのはほんの一瞬であることを知っていたから。





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