第二話 ドキドキの初仕事
あれから、一晩がたった。
いまだにこの俺が選ばれたのが信じられず、興奮と嬉しさで眠れなかった。
でも、おかげで一つ確信したことがある。
それは、この世に運命は存在するということだ。
選ばれた件とおじいちゃんの件、どちらも俺は何もしていない。なのに、なんとかなった。そして、俺は今あいつの筆箱の中にいる。それも、一軍文房具として。
どう考えても、運命だ。いや、そうとしか考えられない。
そう思っていたら、急に筆箱が開いた。どうやら、学校に着いたようだ。
そして次の瞬間、あいつは俺を筆箱から出して、机の上に置いた。一緒にいた消しゴムとともに。
俺は嬉しさのあまり叫びそうになった。何ヶ月も夢にまで見た光景が広がっていたからだ。そして、その景色を一目惚れしたこいつと一緒に見れたからだ。
教室に広がる、たくさんの高校生の後ろ姿。
机に散らかる文房具達。
そして何よりも見たかった、緑色の黒板。は、残念ながら白色のホワイトボードになっていた。
そんなことに感動していたら、あいつは俺を握り、俺の頭を2、3回ノックしてきた。
やっと、俺の初仕事か。そう実感して、なぜか少しだけ誇らしい気持ちになった。
あいつは、俺をぎゅっと握り、熱心に何かを書いている。
それにしても、あいつとの距離が近い。多分、過去一の近さだと思う。
思わず、俺もどきどきしてしまう。だって、一目惚れした顔がずっと近くにあるからだ。
もはや、尊い。神。
ついつい顔に見惚れていたら、シャー芯を出すのを忘れていた。
いや、でも、一目惚れした顔がすぐ近くにあったら、誰でも忘れると思う。そう自分自身に言い訳をした。
まぁ、とにかく、どきどきして仕事に集中できないことだけは分かった。
そんなこんなで、1時間目が終わったようだ。
あいつは友達に俺のことを自慢してくれた。ちょっとというか、だいぶ嬉しかった。
それにしても、このどきどきがあと5回もあるのか。そう考えると、尊すぎて、もはや新手の拷問なんじゃないかと思えてきた。
まぁ、嬉しいことに変わりはない。
一目惚れした顔を長時間拝ませて頂き、ありがとうございます。感謝感激でございます。
今は、そんな気持ちでいっぱいだ。
俺って、最高に幸せだー!!!
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