office.3 (January)
《
『暁さんの誕生日、いつですか?!
ッお菓子山盛り作るから誕生日いつですか!』
'明けましておめでとう'でもなく、'誕生日おめでとう'でもなく…
お菓子、俺がやったのかどうかも聞かずに決めつけてきて、いきなり誕生日聞いてくるし…
……やっぱり可愛い反応するよなぁ…
走って来た東雲の姿を思い出してはニヤけて。
お菓子の山に埋もれながらパソコン画面を見てるのかな…もう鞄にしまったかな、でも入りきらないだろうな…なんて想像してはニヤけて。
「ランチ行って来まーす!」
「おー!いってらっしゃーぃ」
午前中、時々ニヤけ、今日東雲は部長にランチ誘われるから俺とは食べれないだろうなー…なんて時々顔を曇らせたりしていたら、あっという間に同じ部署の同僚達が次々お昼へ出て行くような時間になっていた。
お昼休憩の時間は12時から1時間と決まってはいるが、営業で外に出たりオンライン会議だったりミーティングが海外ともあるから各々自由にとれるようになっている。
「暁さん、昼いける?」
昼休憩で少しだけガヤガヤしているオフィスに、いつものように東雲がやって来て、いつものように聞かれた。
「……?行くけど…部長に誘われなかった?」
「誘われたけど断った。
あとでコーヒー奢って貰うことにした」
「……おまえほんと付き合いとか…人付き合い悪…」
「え?なに?なに食べる?」
東雲は上司に気を遣ったりしない。初めはそんな東雲が痛い目をみないかヒヤヒヤしたけど、今じゃ部長や他の上司もサバサバした東雲を可愛いと思っているはず。やはり部長にランチ誘われてるし、可愛がられている。
「んー?何食べる?
俺の奢りで。どこいこかー」
早々にケータイだけを持って立ち上がり、東雲のガッチリとした肩に腕を回す。
「え、奢ってくれんの?
じゃあ尚更、暁さんの食べたいもの…」
「東雲誕生日だろー?
今日は俺の奢りで東雲が食べたいもの食べてー、明日は東雲の奢りで俺の食べたいもの食べよー」
「ああ、そっか……って何かいい事あった?」
…ニヤけるのを通り越して、満面の笑みになっていた俺。
「ふふっそりゃいい事だしー!
東雲の誕生日だしー!
明日は俺の誕生日だしー!」
「お祝いしないとー」
「なー!けど今日も明日も仕事ってー!」
「!ふっっ…まだ仕事始まったばっかだし…」
「な、やる事多いよな…
年明け早々仕事多すぎじゃない?
挨拶とかでミーディングの予定ぎっしりだし、社内社外に株主だとか会議多いしさー…」
肩を回しながら歩きつつ、顔も近づけて話す。
会社の愚痴を誰かに聞かれても気まずいし。
「それは暁さんだから余計忙しいっていう…
中間管理職、おつ(かれ様)です」
「…マジそれな…
中間管理職に仕事押し付け過ぎな?」
「そんな声小さくなんなくても…
会社の悪口言ってるから?ククッ…」
会社の愚痴を聞いても嫌がる様子は無く、コソコソ話をしている状況で笑いだした東雲。
こうして会社の愚痴を、東雲には言ってしまう事には理由がある。…東雲も俺に愚痴が言いやすいように…なんてちょっと良心的な考えもあるけど、東雲だから…こうして甘えてしまう。
いつも同調してくれる東雲。
「暁さんは'出来る男'だから…」
とても近くにある東雲の顔が、少し照れた様子で俺を褒める。視線を合わせられない思春期の男子みたい。とっても素直そうな反応。
…いつもは近かろうが目を睨んできて小言を言うくせに。
この反応を'可愛い'以外なんていうんだ?
「出来る男かー…
社畜にはなりたくないんだけどなぁ…
よし、決めた。今日も明日も残業しない」
「おー…?それは結構無理に近い」
「うん。けど、残業しない。
東雲もな。誕生日くらいNO残業で」
「……じゃあ昼は買って来て、
仕事しながら食べれるやつにする?」
「え!ヤダ。ちゃんと東雲と食べたい」
「ッ……」
「なんだよ。
昼そんな食べ方したら社畜じゃねーか」
「…ああ…その'ちゃんと食べたい'ね…
って結構そんな食べ方してるくせに」
「えー…そうか?
まぁ…東雲と食べられない時はそんな時もあるかもな」
「な、…なに、食べます?」
「ん、だから東雲が食べたいものー…」
……残業しないで、夜も東雲と過ごしたいな…
まぁ流石に誕生日の夜である今夜は東雲にも予定があるだろう。
それでも…残業させない代わりに少しだけ酒飲んで乾杯出来たらいいな。
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