2クラスメイトの容姿②

 鼻については、いわゆる豚鼻はおろか、鼻の付け根から低い人はいなかった。団子鼻もいなければ、鼻が低いと悩む人間を見かけない。形の良い鼻がすっと顔の中央にそびえたっていた。そして、驚くことにブラックヘッドと呼ばれるらしい、鼻の黒ずみが皆無で、ツルツルの鼻が羨ましい限りである。


 唇。ここについては、プルプルで食べてしまいたくなるようなとは、このことを言うだろう。かさかさという文字が存在しない世界に紛れ込んだようで、私は思わず、自分の唇を舌でなめて、潤いを与えてしまった。まあ、そんなことをしたところで、簡単にプルプルになるとは思えないが。そして、色付きリップでも塗っているかのような、うっすらと色づく唇こそ、キスしたくなるのかもしれない。とはいえ、クラス女性全員の唇がそんなプルプルだと、別にキスしたい気持ちは薄まるのかもしれないが。もちろん、これはこのクラスの標準装備らしい。自分の唇のあれ具合が恥ずかしくなる。


「リップクリームはポケットに入れておこう」


 これからは、もう少し自分の唇をいたわることにしよう。



 唇ときたら、次はその中にある歯を見ていこう。プルプルの唇から覗くのは、白く輝く美しい歯だった。芸能人顔負けの白い歯がきれいに並んでいた。まるで漂白にでもかけたかのような人工的な白さに驚く。私の歯は彼女たちと比べてなんと黄ばんでいることだろう。現実を直視して少し落ち込んだ。


 顔の中で最大の見どころは、お肌。お肌のトーンがとてつもなく明るい気がした。日焼けで色が黒くなった、とか言っている人は一人もいない。皆、白くてもちもちの肌をさらしている。よく見ると、毛穴というものが彼女たちには存在していなかった。毛穴の黒ずみはおろか、ニキビもシミもしわもなく、漫画や小説で出てくる肌がそこにはあった。白くてきめの細かい、シミひとつないきれいな肌とはこのことかと実感した。


 高校生という育ち盛りで、ニキビもなく、日焼けも知らない肌とはいかに。私については、以下略。



 ここでようやく彼女たちの顔の紹介が終わった。いったん、現実に戻ることにする。


 休み時間が終わって、今は授業中である。担任の若い男性教師が数学の公式について教壇で説明している。あまり数学が得意ではないので、眠たくなってきた。机に突っ伏して寝てしまおうか。幸いなことに、私の席は一番後ろの席で、居眠りがばれる心配は少ない。先生が机間巡視しなければの話だが。


 私はウトウトと眠気に負けてしまった。そして、夢を見た。







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