戦闘は30分ほどで終わった。

ただ、俺とバル以外の幹部やケル、フェンはみんな殺られてしまった。

「どうにか勝ちましたね」

バルは俺に言葉を掛けてくる。


「そうだな」

俺は喪失感からなのかこの言葉以外を

発することができなかった。

俺は復讐のために生きてきて目標を達成したが仲間がこんなに居なくなるだけで

寂しさを感じる男だったのか。


そんな自分に嫌気がさしながら

城へ向かい王様の死体を探す。

そんな俺に何も言わずにバルが静かに後ろをついて来る。


城の中に入ると天井の至る所に穴が開いており兵士や偉い人が下敷きになっている。

その光景に何も感じずに俺は玉座に向かう。

バラバラバラガラガラガラ


天井からいくつもの瓦礫が落ちてくるが

こんなもの当たった所で死なないから

無視して歩く。


玉座に着くと王らしき人物が

王座に座っていた。

だがその男からは魔力を感じない。


どうやら死んでいるらしい。


トコトコ俺は歩み寄る。

ブチュッ

俺はその男の脳みそを食べる。

するとこの国の歴史が見えてきた。


結論から言うと俺の村が攻められた理由は

俺の両親がそのそも王国の技術者として

働いていたらしい。

その時に担当していたのが最強の人体兵器を作る実験で両親は耐えられなくなり

逃亡先のライト村が情報隠蔽のために

襲われた。


ただ俺には引っ越してきたという記憶がない。

おそらく俺が幼い時に引っ越してきたから

覚えていないだけだろう。


結果、復讐を達成したが俺の心は

なんとも爽やかではない。

多くの仲間が消えて最終的に残ったのは

喪失感だけ。

あの時、力を貰わずにそのまま死んだ方が

良かったのだろうか?


『終わったし行くか』


俺は南側にいるネクロ達と西側にいる

サマエルたちの魔力を探すが

一向に見つからない。


『どういうことだ?』


まさかネクロ達がやられてのか?

俺は急いで城の入り口に向かう。


そこにはケルの死体しか残っていなく

ネクロが召喚した幹部たちの死体が

跡形もなく消えていた。


もう一度魔力を調べると南側と西側に複数というか大量と記した方が良いほどの生命を

確認できた。


俺はもう一度、王の記憶を読み込むと

そもそも帝国が王国の領地を侵略している

ことが前々から問題になっていたらしい。

それに対抗するべく王国は技術を発展させて改造人間までも作った。


ここまでが事実でこれからは憶測だが

そこを俺が王国をアンデッドの軍勢で

滅ぼしたことで王国全土を掌握できる

チャンスが帝国に生まれた訳だ。


「あー。これはいよいよだな」

俺はいままでの喪失感が無くなり

大きな怒りへと変わっていった。


『こんなことになるのであれば帝国も攻めとけば良かったわ』


帝国のマークが入った盾を持っている兵士がぞろぞろと俺たちの前へ来た。


「貴様らは包囲されている。大人しく投降するように」

兵士の1人が俺たちに向かっていった。

「主様。どうされますか?」

バルが俺に聞いて来るが答えはもう決まっている。



「もちろん皆殺しだろ」

ドン

バルはスイフトを使い兵士たちに突っ込む。

「アルティメットメテオ」

俺は魔法を唱える。どうにでもなれ。






私たちはいま王国領内にいる。


アンデッドの軍勢が王国を攻めているから

今のうちに王国に侵攻して次いでに

アンデッドも殲滅するようにと

上長から命令を受けた。



私たちの部隊が向かうのは王国の南側で他の大隊長が北と東、西に攻め込むらしい。

正直こんなにも多くの兵士を動員する

理由は分からないが

なんでも王国にはとても強い兵士が

いるからそれのためにと

1大隊1000人の私を含めた

4大隊長が戦場に投入されることとなった。


「隊長~」

「どうしたのレイア?」

「久しぶりの遠征ですね」

「楽しそうだね」

「だって久しぶりの実戦ですよ。ワクワクが止まりません」

レイアは戦闘狂だからできれば一緒に戦いたくない。

『それに目が怖い』


それにしてもアンデッドが軍勢を作って攻めるだなんて、何があったのかしら。


そんなことを考えていると王国の城壁が見えてきた。

『高いな』


ただその周りには異様な数のアンデッドが駐留している。


「大量のアンデッドですね。私が倒してきて良いですか?」

レイアはうずうずしているようで

落ち着きがない。



「ちょっとまってね」

私はレイアの首元の服を掴む。

そこへ1人の兵士が走ってやってきた。



「伝令。準備完了」

「了解しました。こちらも準備完了です」

そう私が言うと兵士は来た道を帰って行った。


どうやら北、東、西を攻める大隊長たちも

準備できたようだ。


攻撃の合図はファイアが上空で

爆発したときを合図にしている。


「合図と共に魔法部隊は魔法を打ちこめ。それを合図として戦士たちは戦場に足を踏み入れるように!」


「「「「ハッ!」」」」


「それと負傷した兵士は医療班に回収してもらえるまで安全な場所で待機を頼む。仲間を見捨てないようにくれぐれも頼むぞ」



「「「「「「ハッ!!!」」」」」」

さっきよりも大きな返事が返ってきた。



私たちの北側で眩しく光り輝いた球が

空に打ち上げられた。

「開戦だ――――――――」


私の声と共に


「「「「ファイア」」」」


魔法部隊が大量の魔法をアンデッドがいる南門へと放った。


ドカンドカンドッカ―ンドカァアア――――ン

「「「「うおおおおおおお」」」」

戦士たちが門へと歩みを進めた。


ザックサクザクサクッ

ジャキンシャキン

何の問題もなくアンデッドたちを

片付けて王国内にはいる

とそこには大量のアンデッドの騎士がいた。


グチャグチャガキンカキン


「うああああ」

「助けてくれ―――」


先ほどのアンデッドたちとは違い兵士たちが苦戦している。


「ヒャッホー」


ただ一人だけ明らかに様子がおかしいうちの兵士がいた。

『まあレイアなんだけど』 



「弱い弱い弱い弱い弱い」

そう言い騎士たちに突っ込んでいく。

サクッザクッジュシャ―次々と騎士たちを切り刻む。


レイアにとっては余裕なんだろう。


「強いね君」

奥から少年の声がした。

ザッザッザッザッザッザッ


奥から美少年と盾と槍を持った男が

歩いてきた。


しかし周りのアンデッドの騎士たちは彼らに攻撃する素振りを見せない。


『どうなっているの。彼らは本当に人間?』

レイアは一通り騎士たちを殺して私の所に戻ってきた。

「あの2人、強そうだね」

「殺っちゃってきていい?」

レイアはやる気満々だ。

確かに王国民であるとしても助けるという

選択肢はないしいいか。


「いいよ」

するとレイアは全速力で美少年の方に

ナイフを振る。

カキン


「なに!!!」


レイアは驚きからか声をだした。

『少年は強いね。じゃあ私は男の方で』


剣を抜き構える。

「ハッ」

私は一瞬で距離を詰めて叩き切る。

ガキン

「なっ!?」

男の盾に見事に弾かれる。


なぜ?私が剣を振り下ろす直前まで構えていなかったのにいつの間に構えていたの?

ハッ

カキンカキンカキンガキンガキンカキン

すべての攻撃を弾かれる。

この間にも多くの部下が騎士に

斬られていく。


「くそおくそおおお」

ザシュッ

すると男の胸に光の槍が刺さった。


『何が起きたの?』


ドサッ

そして男は崩れ落ちる。

「裏切り者が...」

男はこの言葉を残し、瞼を閉じた。


ドォン

少年がレイアを吹き飛ばす。

「貴様!!裏切り者がぁぁぁああああ」

少年が男を光の槍で刺したであろう人物に向けて言う。

シュン

私の横を少年が通り過ぎる。


カキンカキンカキンドサッ

少年の動きが速すぎて私が後ろを向いた時には少年の首から上が無かった。


『え、もう倒したの?』

「あなたは?」


そいつは言う。


「天使ですよ」


私はその言葉になんて言って良いか

分からずに呆然と立ち尽くす。


するとその天使は少年と男がいた所の後ろの建物に手を向け


「シャイニング」



魔法を放ちその建物を消し飛ばした。

それにより、先ほどまでは確かにあった

はずの男と少年の死体が無くなっていた。



「隊長!ご指示を」


部下の指示で正気に戻り辺りを見渡すと

アンデッドや騎士それに天使も

居なくなっていた。



私は急いでケガ人の治療に人員を当てた。

医療班を後方から前線まで移動させて

門の近くで簡易テントを設営した。



しばらく部下たちの治療に従事していると


「なんなのこれ?」

「なんだあれは?」

「どうなっているんだ?」


城がある北側で炎が大量に降り注いでいた。


あれは人間が使える魔法なのか?

それとも帝国の行動が神を冒涜したことへの神の怒りなのか私にはわからないがあの炎は少しずつこちらに近づいて来る。

「全員シールドを張れ。魔法部隊も早く」

私は全部下に魔法の使用を命じた。



数十秒後、真っ赤な光の雨が降り注ぐ。

「うわあああああ」

「熱い熱い助けて助けて」

「もう魔力が持ちません」

魔力が切れた者や魔力の質が悪くシールドが脆かった者が次々と炎に飲み込まれていく。


ジュワジュワジュワジュワ

肉の焼ける音が聞こえてくる。



炎が降り注ぎ終わった頃には辺り一面が

炎に包まれていた。


私は生存者を王国の外に出す。

しかし生き残った部下は全部で300人と

非常に少ない。

それにこの300人の内、負傷者は100程ともう戦える余力が残っていない。



私はこのことを報告するため他の3大隊長に

使者を送った。

それから少し経つと使者たちが帰ってきた。


東側は制圧済みだがもう戦える兵士が

200人程度だそうだ。西側は100人程度で

今から北側にある城を制圧しに行くらしい。



それと北側の大隊長は死亡が確認されたとの報告があった。


戦いで大隊長が死ぬなんてことはほとんどない。

「わかりました。行きましょう」

「私もまだ戦えます!」


レイアがボロボロの格好で言う


「レイア、怪我してるじゃない!休みなさい!」

「はい(..)」

シュンとした顔でレイアが答えた。



医療班と怪我人を警備する人員だけ

置いて北側に向かった。

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