ガルド王国

「主様〜」

声に導かれて起きると目の前には大きすぎる犬がいた。

「フェンおはよう。敵が来たのか?」

「はい。そうですよ〜」

フェンは今から戦いが始まるというのにいつもと変わらない声で返答してくる。

この声を聞いていると俺までリラックスしそうになるが、戦場での油断は命取りになるため俺は気を引き締める。


「そうか。じゃあ待っておくか」

「了解ですぅー」

フェンは体を丸めて伏せた。

俺は敵の気配を探ったがまだ距離が離れているため森に入り死体を集める。


フェンは眠そうにあくびをしながら俺を見ている。俺はそんな中でも黙々と死体を集めた。


「ディアブロ」

久しぶりに死霊術を使った。

モワッとした黒い霧に覆われたかと思うとスッと霧が晴れた。

そしてそこには人間と言われても差し支えないほど綺麗な肌と髪を持った女性の形をしたアンデッドが立っていた。


「上出来だな」

「そうですね」

眠そうな瞼を上げてフェンが答えてくれた。


「話せるか?」

俺は女性のアンデッドに声をかけてみた。

しかし、何を言っているのかわからないという様子でじっと俺のことを見ている。


俺は死体を指差すとアンデッドの姿をした女性は貪るように食べ始めた。

ヒヒーン

馬の声がした方を見るとそこには王国の兵士たちがいた。


先ほどの兵士たちとは違いしっかりとした鎧を纏っている。それに剣は少しだけ長く大きい。


「フェン。敵が来たけれど寝ていて良いよ」

「わかりまし」スピー

『寝るのはや!』

爆速でフェンは寝てしまった。


俺は寝ているフェンと食事中のアンデッドの邪魔をしないように敵に近い場所で戦うことにして兵士たちに近づいていく。


すると

「仮面の者、そこで止まれ」

兵士たちの中で1番煌びやかな鎧を着た者が言ってきた。

「なんで?」

「お前が私の部下を殺したのか?」

その者は威圧的に話してきた。

「そうか。なら私が貴様を粛清しようではないか」


そう言うと煌びやかな鎧を着た男が腰から剣を抜き俺に近づいてきた。

「はぁっ!」シャキン

剣を振ってきたがそれは避ける。

シャキンシャキンシャキンシャキンシャキン

避け続ける。

シャキンシャキンシャキンシャキンシャキン


「なんで当たらないのだ。この王国軍最強だと言われるこの私の剣がなぜ当たらないのだ」

「知らんよ。お前が弱いからだろ」


「なんだと貴様ー!」

男はすぐに挑発にのってきた。

『チョロいな』

男は冷静さを失ったからか大きく振りかぶり剣を振ってくる。

シャキンシャキンシャキン


それにより余計に避けやすくなる。

「くそ!くそ!なんで!なんで!」

男が剣を俺に振り下げてきたのでその剣に向かってパンチをする。


バキン...カランカランカラン

「「「え?」」」

「剣が折れた?」

男を含めた兵士たち全員の声が重なり目がキョトンとしている。

「き、貴様。何をした?」

「パンチしただけだよ」

「う、嘘だろ」

「あいつ何者だよ」

後ろにいる兵士たちからも動揺の色が伺える。


「さぁ、決着としようじゃないか!」

俺は堂々と立って相手を挑発する。

「良いだろう。新しい剣を持ってこい」

「はい」

そう言うと後ろにいた兵士が男に剣を渡した。


「覚えて置けよょょぉ。ここが貴様の墓場だぁぁ」

「お前うるさいな」

「はぁ、なんだと?」

「スイフト」

バン

「うあああああ。俺の手が俺の手が」

俺はスイフトを使い男の左手にパンチを打ち腕を粉砕した。


「きさ...」バンッ

俺は男の顔があった部分を吹き飛ばした。

ドサッ


「隊長おおおおおお。貴様!」

兵士たちは俺に剣を斬ってくるが当たらない。

『スイフトを使っているから当たるわけないのに』


「くそぉ..」バン

1人目

「化け物」バン

2人目

「う、うあ..」バン

3人目

バンバンバンバン

「お前で最後だな」

「助け..」バン

ここにいた全兵士を倒した。最後の奴は泣きながら助けを求めていたが正直知った事ではない。


「主様。お疲れ様です」フェンが元気に近づいてくる。

「おつかれ」女の子も近寄ってくる。

「おう。お前たちは休憩できたか?」

「うん!」

「たくさん寝たぞ!」

「そうかそうか。良かった」


さて毎回、女の子と呼ぶのも不便なので名前を決めるとするか。


「シーアでいいか?」

「うん?なにが?」

「お前の名前。シーアでいいか?」

「うん!ありがとう///」女の子は照れくさそうに言った。

「この兵士たちは俺が貰っていいか?」

「勿論です」


ジュルッバリバリバリバリバキバキバキバキ......

今日は大量のごちそうだな。


....ジュルッバリバリバリバリバキバキバキバキ

最後の人間を食べ終わった。

「ご馳走様でした」

『脂が乗っていて美味しかったな』


王国の兵士から得た情報によると、どうやら村を攻めたのは王国で間違いないようだ。

それに隊長と呼ばれていた奴はどうやら村に攻め込んだ者の1人だと言うことも分かった。


『さてみんなの所に戻るか』

「フェン、シーア戻るぞ」

「わかりましたー」

「うん!」

そういうと俺とシーアはフェンの上に乗った。

「もふもふだ!」

「そうだろ。このもふもふいいだろ」

シーアも俺と同じくフェンのもふもふした毛に夢中になった。


しかし楽しい時間とは実に残酷である。

「もう着いたの!」

シーアは残念そうな顔をしている。

「そうだぞ。...分かった。シーアはフェンに乗ってていいよ」

「ほんと!ありがとう」

シーアは今日見た笑顔の中で一番幸せな顔をしている。


「お疲れ様でした」

「おう」

「フェンの実力はいかがでしたか?」

「最強だな」

『戦っている時のフェンは最凶に怖かった』


「そうですか。光栄です」

ネクロはフェンを撫でている。それに対してフェンは気持ちよさそうな顔でネクロに甘えている。

『良い主従関係だな』

ネクロはフェンに限らず自我を持っている幹部たちと信頼関係が作られているのが目に見えてわかる。


「では帝国を攻めますか?」

「ちょっとまった」

『そうだった。俺の復讐相手は帝国ということになっていたんだ』


「どうされました主様?」

「いやぁ、実は俺の復讐相手は帝国ではなく王国だったみたいだ」

「そうなんですか!?」

ネクロの顔が驚愕の表情に吞まれた後に深刻そうな顔をしている。

「どうした?」

俺もネクロの表情につられて深刻そうな表情に変わる。


「王国って新兵器を開発したって噂になってました」

「新兵器?」

「はい。実は魔力を制御する装置と魔力によって改造された人間がいるとの情報が入っています」


『魔力を制御する装置は緑の光を放つ機械は分かるが魔力によって改造された人間とはなんだ?』

「改造された人間?」

「はい」

「強いのか?」

「おそらく」


『俺も王国の兵士を食べたからわかるがあの人間とは呼べない生物は改造人間だったのか。さらに数もそこそこ多い』


「このメンバーで倒せそうですか?」

「多分大丈夫だろう」

「なら」

「ただし、魔力を制御する機械を壊した後であれば勝てるだろう」

「では、何チームか分けて隠密で機械を破壊したのちに総攻撃ということでよろしいですか?」

「ああ、それで行こう。」

『しかし改造人間の実数が不明確だな』


ネクロの情報と俺が見た記憶の断片からして明らかに幹部の数よりも多い。

それに強さが未知数なためもう少し戦力を増強したい所だ。


「それとネクロ」

「なんでしょう?」

「もう少し騎士を増やせるか?」

「もちろんです」

いまから幹部を育てるのは難しいと判断した俺はネクロが召喚できる騎士をもう少し増やすことにした。


「チーム分けは俺とフェンがチームA、ケルとバルがチームB、アモン、シズ、セーレがチームC、カイム、イリス、サマエルがD、アスト、アマラス、レオスがネクロの護衛だ。」

「「「「了解(です)」」」」


「破壊する地域はAは王国の北側、Bは東側、Cは南側、D は西側で」

「「「「はい!!!!!」」」」

「それとシーアは自由行動!」

「ん!」


俺はフェンに乗っているシーアを降ろす。

「ねー。なにすればいいの?」

シーアが聞いてくる。


「沢山の人間を食べて強くなって!」

「わかった!!」

「あ、でも共和国はダメだよ」

「うん!」

シーアは元気な返事をすると走っていった。


フェン以外の他の幹部を紹介する。

アストは毒を使う龍で遠距離を得意としている。

セーレは美男子で主に剣を使った近接戦を得意としている。

アモンは炎を得意とする魔法使いでシズは美女の魔法全般を使える魔法使いだ。

イルスは素手での戦いが得意だが短気でキレるのが早い。

カイムは細い剣を持った男で近接戦を得意としている。

レオスは盾と槍を使うためネクロの護衛を頼んだ。

アマラスはアンデッドに1番効果がある聖魔法使い。

サマエルは闇魔法を得意とする魔法使い。

簡単に説明するとこんな感じだ。


『まぁ、どうにかなるだろう』

俺はフェンと共に王国に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る