アンデッド
『やっと着いた』
ヒルの墓に着いた頃には夜になっていた。
この近くでは兵士たちが野営を作っている。
「隊長」
「どうしたの?」
「最近ここら辺でモンスターを狩った痕跡が確認できないです」
「じゃあ奴は今ここにいないと言うことか?」
「はい。おそらくそう考えられます」
無駄足だっと言うことか。
「ただアンデッドの数が最近異常に多いんですが何か報告とかありませんか?」
「そんな報告は受けてないよ」
「そうですか。すいませんお時間いただきありがとうございます」
そう言い若い兵士は出て行った。
まぁ私の方が若いけど。
「隊長〜」
この声は
「私も来ました〜」
レイアだ。
ザザーとレイアは馬から飛び降り着地をした。
「え、帝国の方はどうしたの?」
「上長から許可を貰いました!」
許可をもらえたのであればいいか。
「それと上長からこの地域はアンデッドが非常に多いため原因を探る様にと伝達に参りました。」
やっぱりアンデッドが増えているのか。
「わかった」
誰かが大量に殺害してその死体を放置したことっアンデッドが生まれるためモンスターの仕業とは考えにくい。モンスターは人間やモンスターを食べることで強くなるため倒した相手を放置して立ち去るはずがない。
ならば正体は人間か。
「全員集合」
私が声を掛けるとこの場にいる全員が私の前に集まった。
「これから君たちにやってもらうことはアンデッド急増の原因解明だ。近くに人間がいたらすぐに捕縛しろ。それとアンデッドには十分に注意しろ。食べられるなよ」
「「「はい!」」」
兵士たちは私の話が終わると持ち場に戻って行った。
それから数日は毎日アンデッドと戦う以外の成果はなく終わった。
『本当に誰の仕業なのよ!!』
俺は盗賊のアジトの前にいる。
ネクロはアンデッド達を自分の組織に組み入れるために別行動で動いている。
「主、私が全部やってもよろしいですか?」
バルが盗賊たちの討伐を自ら志願してきた。
バルは進化により見た目こそは変わらないが戦略のレパートリーや魔法が使える様になったり、身体能力が以前と比べ物にならない程に成長している。
「任せて良いか?」
「もちろんです」
バルは1人で盗賊のアジトに乗り込んだ。
ケルは暇なのか欠伸をしている。
俺はケルの方を向いて
「ケルはアジトの裏に回って逃げた奴全員倒してこい」
「ガウ」
そう言うとケルはアジトの裏へと走って行った。
俺は正門に逃げてきた奴を倒すことにする。
ハアハアハアハア
なんなんだあの鎧を着たやつは。
仲間がどんどん斬られていく。ふざけるなよ。
「あの機械を使え」
「分かりました」
俺がそういうと部下の1人が機械のスイッチを入れた。
するとその機械から緑色の光が溢れた。
この機械は相手の魔力の使用に制限を設ける機械であり
どんなに魔力を持っていても使えない。
宝の持ち腐れを意図的に発生させられる機械だ。
「今の内だ。奴を攻撃しろ」
「ファイア」
「ファイア」
「ファイア」
「フリーズ」
炎の球と氷の球が鎧を着た者に当たり倒れた。
「よっしゃあ」
「やったあー」
「ざまぁみろ」
「ウェーーイ」
各々が歓喜に沸いた。
恐らく魔法が使えなくてこの量の攻撃を防ぐことができなかったのであろう。
「ざまぁねえな」
俺は騎士の近くによる。
「ニード」
パッツン
コロコロコロ
「え?」
あれ、身体が見える。
「誰の..身体だ?」
首から上がない身体が立っている。
赤いブレスレットに黒いローブを着た身体。
「俺の身体が」
プシャーと首があった場所から大量の血が吹き上がる。
『ああああああああ』
俺は死んだ。
俺がそこに着くと無数の盗賊の死体とバルが地面に倒されていた。
『おかしいな。なんでだ?』
ここに入った瞬間に魔力の行動が制限されたように感じた。
『なんだこれは。おかしいな』
俺が違和感を持ち、辺りを見渡すと1つだけ違和感がある機械が目に入った。
それは緑の結晶の形をした機械
「ニード」
俺はその機械を壊した。すると今まであった魔力の制限による不快感が無くなった。
ガチャッと奥の扉が開いた。
そこにはいかにも盗賊団のボスみたいな奴が奥の部屋から出てきた。
「貴様は1人でここにきたのか?」
ボスは他のやつに比べて図体が大きく威圧的に話しかけてくる。
「そんな訳ないだろ。見ればわかる」
そう言うと俺は倒れているバルを見る。
「この状況じゃお前1人のようなものではないか」
ボスは余裕とでも言いたげな様子だ。
「命知らずな奴め」
ボスの取り巻きみたいな奴が言ってきた。
「スイフト」
俺は魔力を足に溜めこの部屋にいるボス以外の者の心臓を抉り取った。
圧倒的なスピードの前に手も足も出なかったのだろう。
全員が一歩も動けずに倒れた。
そんな様子をボスが怯えたような顔で見ている。
「さっきまでの威勢はどうしたんだ?」
「お、お前は人間なのか?」
「なんで?」
「こんなに速い奴は今まで見たことがねえ」
そりゃあそうだ。俺は強くなるためにたくさんの生き物を食べた。
強くならなくてはいけないのだ。
グチャグチャ
『やっぱり人間の心臓って美味しいな』
俺は抉り取った心臓を食べた。
「お、お前。何をしている」
「なにって?」
「それは人間の心臓だぞ」
「そうだぞ。食べるに決まってるだろ」
「お、おおおおおお前人間じゃないのか?」
「そうだよ。ハハ…一応冒険者してるけど。アハハハハハ」
俺が笑い始めるとボスは怯えた表情で魔法を唱えた。
「ファイア」
炎の球が飛んでくる。アンデットは魔法に弱い。
が俺には関係ない。
手を前に突き出し、炎を握りつぶす。
「お、お前何をした」
それに動揺した様に言ってくる。
「知らなくて良いよ。どうせすぐ死ぬんだ」
「なんだとキサマアァァ」
ボスは怒りに支配された様子で剣を持って突っ込んできた。
「ニード」
俺はボスの両足にニードを刺した。
それにより踏ん張りが効かなくなり顔から地面に激突する。
「あああああ」
なんとも苦しそうな叫び声を上げている。
今まで無数と人の命を奪ってきた、苦しんできた人たちを殺した盗賊が叫び声を上げるなんて許されるはずがない。
「ファイア」
俺はボスの顔に炎を当てた。ボスは顔の皮膚が溶け口や目がくっつき声も上げれなくなっていた。
「どう?苦しい?」
「うう、うううう」
「何言ってるのか分からん。あの世で盗賊として生きたことを後悔するんだな。
バイバイ」
ザシュッ
首を落とした。それと同時に鮮やかな血飛沫が噴水のように吹き出た。
「素晴らしい。さすがは主様。」
「バル。大丈夫か?」
「見苦しいお姿をお見せして申し訳ございません。」
「しょうがない。そう言う日もあるよ」
「ありがとうございます」
「そうだ。こいつらの脳みそを食べてもっと脳を強くしとけ」
「わかりました」
バルは身体や能力的には進化しているが脳が強くない。
バキバキバキバキ
そう言うとバルは死体を貪り始めた。
俺は今日も心臓だけを食べている。
外に出ると周りの敵はケルが倒していた。
どうやらケルもお腹いっぱいらしくそこらじゅうに死体が転がっている。
「ケル、おつかれ」
「クゥン」
ケルは可愛く返事を返してきた。
しかし、このまま死体がアンデッドになるのはもったいないな。
できれば戦力の強化をしたい。
『新たな仲間を召喚しよう』
それは死体を1箇所に集めて魔法を唱える。
「ディアブロ」
召喚するとそこにはこちらを敵対した目で見るドラゴンがいた。
「グオオォォォ」
『あれ、失敗したかもな』
「主、あれ敵です」
「ガルルルルル」
ケルとバルが戦闘体制に入った。
「ガオー」
ドラゴンが炎を吐いてきた。
「リフレクト」
透明な膜を貼ったもので炎を防いだ。
「主、あれ相当強そうです。逃げますか?」
「いや、あいつは倒そう」
「なぜですか?あいつを暴れさせると帝国は余裕で滅びますよ」
それはそうだろう。
あんな炎を空中から攻撃されたらいくら帝国とは言え手の出しようがない。
「もし共和国に行ったらのことを考えると倒しとかないとな。」
「なぜ?」
「恩を仇では返せないからな」
俺は今は共和国に身を置いている冒険者だ。
いくら帝国を滅ぼすためだとは言え共和国を巻き込んでは
俺のプライドが許さない。
「分かりました。主がそう言うのであれば」
俺の気持ちを分かってくれたようだ。
「トゥ!」
「グルルル」
ケルとバルがドラゴンに近接戦を挑んだ。
シュシュシュ
バルがドラゴンを斬りつけケルが足に噛み付く。
「ニード。ファイア」
俺は遠距離からの攻撃をしている
「グォオオオオオオ」
痛みに狼狽えている様に見える。
「グルルルル」
これからは俺たちの一方的な攻撃が続いたが全然ドラゴンが倒れる気配がしない。
『なにかを狙っているのか?』
ドラゴンは尻尾で俺たちを追い払った。
「もう一回だ」
俺たちは近接戦に持ち込む。
するとさっきまで黒かったはずのドラゴンの皮膚が赤く光りだした。
『これはまずい』
魔力がドラゴンの皮膚の周りに集まっている。
「ケル、バル退が「バアアァンンンンン」」
ケルとバルが退がれと言ったと同時に大きな爆発音と熱風が来た。
「リフレクト」
ドォォオン
俺たちは吹き飛ばされ壁に激突した。
バラバラバラバラバラ
立ち上がると壁や天井だった物が崩れ落ちてきた。
「リフレクト」
落ちてくる物から身を守りながら仲間の元へ駆け寄る。
「大丈夫か?」
俺はケルとバルに声を掛けた。
「ガァウ」
ケルは元気な声で返してきた。
「大丈夫です」
バルも大丈夫そうだ。
「ニード」
俺はドラゴンの頭を攻撃する。
ガキン
しかし、何か壁がある様に弾かれる。
『なんだあれは』
「グオオオオオ」
驚いている暇もなくドラゴンは大量の青い炎を吐き出してきた。
「リフレクト」
リフレクトと炎が衝突する所にヒビが入る。
パキパキ
『ああ、まずい』
心の底からため息交じりの声から出た言葉だった。
パキパキパキパキ
リフレクトにヒビが入り続ける。
『このままではまずい』
「ガウ」
ケルはこの状況が非常にまずいことであるのかを分かっているようで
身体の一部を変形させ壁を作った。
「主、私もできます」
そう言うとバルの盾が大きなった。
『これで気休め程度にはなるだろう』
パキパキパキパキパリン
ゴォオオオオオオオ
その音と同時に目の前が真っ白になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます