第17話 十七

「どうかしたのですか? 何かありましたの?」

そう問いかけると、

「ああ、ごめんごめんちょっとボーッとしてただけだよ」

「もうしっかりしてくださいませね、これから夕食を頂くわけですから、しっかりと食べないと駄目ですよ?

それとも私が口移しで飲ませましょうか?」


そう聞くも返事がなく、不思議に思って見てみるとなぜか固まっていましたので、一体どうしたのかと思って尋ねてみると、

なんでもありませんと言われてしまうだけでしたので気にしないことにすると私達は浴室から出て着替えて、

食堂へ行きますと席に着きまして食事を始めましたの。


そうして時間が過ぎていく中、ついに夜になりました。

私は緊張の面持ちのまま寝室へ向かいますと、すでに彼が到着しており、私を見つけると微笑みかけてきたので、

私は笑顔を返しますと、彼に誘われるまま寝室に向かい、そのまま、二人っきりの一夜を過ごします。


そんな幸せな日々が続いていたある日のこと、またも、あの夢を見ることになってしまって、

その度に、現実での出来事と混同してしまうせいなのか、日にちが経つにつれて記憶が薄れていってしまうのを感じていたのだけど、

その日の夜、とうとうその出来事があったこと自体を忘れてしまい、再びあの夢の続きが始まってしまい、困惑していたところで、

彼に起こされてしまい、そこで目が覚めた。


「大丈夫かい聖羅?」

という声で目を開けた私は、

「あれここは?」

という疑問を口にしながら、周りを見てみると見知らぬ部屋の中だった。


(確か私はさっきまで……えっと何をしていたんだっけ?)

そう考え込んでいる私の様子を見て彼が話しかけて来た。


「聖羅、本当にどうしてしまったんだ。まさか昨日のことも忘れてしまったのかい?」

その問い掛けに対し、咄嵯に出た答えは

「あーそうだ! 私達結婚したんだった、いやぁ~、なんか最近いろいろあって大変だったけど、

今は落ち着いていて凄く充実してる感じがするよ」

と、満面の笑みで返すと、彼は安堵の表情を見せた後、そっかと言ってきた。


こうして始まった新婚生活、最初の頃は、まだ、慣れていないこともあり、戸惑うことばかりだったが、

少しずつだが、お互いに馴染んできたところで、私は一つの不満を抱えていた。

それは、毎晩同じベッドで寝ているという事だった。


最初こそは我慢していたが、段々とそれも辛くなっていってしまい、遂に私は思い切って聞いてみた。

それに対して、彼の口から飛び出したのは意外な言葉、つまり、そういうことだった。

どうも私は、彼に愛されているらしい。


「聖羅キスしような」

「いいよ」


キス。

甘くてとろけるよう。

こんなにも気持ちいいなんて知らなかった。

これがキス。

何度もキスをして、愛を深め合うんだ……。


今日も二人はキスをする。

唇を重ねるだけの軽いキス。

それだけなのに、こんなに気持ちよくなれる。

二人の愛情を確かめる行為。

それがキス。キス。


甘くて、とろけるよう。

頭が真っ白になる。

こんなに気持ちよくて蕩けるように甘いキスは初めて。


「もっと、キスしたい」

もっと、キスしてほしい。

もっと、キスしていたい。


でも、これ以上のことは望まない。

キスだけ、キスだけできればいい。

「好きだよ、君を愛してる」


私も好きぃ!

だからキスしてほしいの!

キス、キス、キス……。

はぁ、キス最高!


「ねぇ、あなた、お願いがあるんだけどいいかしら」

「なんだい、改まっちゃって、言ってみな、叶えられるかどうかは分からないけど努力するぜ!」

「もっとキスしたいの!」

「なんだそんなことかよ、ならお安い御用だ、ほらこいよ」


そう言って彼は両手を広げる。


「ありがとう、大好きっ!」

そういって抱きつく彼女、そして抱きつかれる彼、そして始まる熱い抱擁と情熱的な口づけ。


互いの舌が絡み合い唾液が混ざり合い一つに溶け合っていくような感覚に、陥るほどの濃密かつ甘美なる時間。

やがて二人の唇が離れると銀色の糸を引きながら、名残惜しそうに離れていく唇を目で追う彼女。

そんな彼女を見て微笑む彼。


そんな彼を見て頬を赤らめつつも微笑みを返す彼女、そんな二人が見つめ合いながらもう一度互いに抱きしめあい、

今度は長い時間をかけてじっくりと愛し合っていくのだった……。

それからというもの、毎日のように求めあうようになっていきました。


「今日はどうされたのですか? そんなに甘えてきて、もしかして甘えたくなったんですか?

ふふっ可愛い人ですね、いいですよ、思う存分甘えてください、あなたの気が済むまで、いつまでもお付き合いしますよ」


そう言うと彼は、私を膝の上に乗せて後ろから抱きしめるようにして座らせると、まるで子供をあやすかのように頭を優しく撫でてくれるのです。


「どうですか、落ち着きましたか? そうですか、それは良かったです、それにしても、

あなたはとても綺麗な髪をしていますね、それに肌触りもいいですし、ずっと触っていたくなります、あっすみません、嫌でしたか?」


その言葉に私は首を横に振りますと、彼は安心した様子でした。

そして、暫くの間、髪や頬を撫でたり、頭を撫でたりして、私で遊んでいましたが、不意に手を止めると、

何やら思案顔になり、顎に手を当てて何かを考えているようでしたが、すぐに顔を上げて私の目を見つめながら、こう言いました。

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